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<font size="+1"> | <font size="+1">石井一裕</font><br> | ||
''ジョンズ・ホプキンス大学 医学部''<br> | |||
<font size="+1">[https://researchmap.jp/kazunorinakajima/?lang=japanese 仲嶋一範]</font><br> | |||
''慶應義塾大学 医学部''<br> | ''慶應義塾大学 医学部''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2018年2月5日 原稿完成日:2018年8月22日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br> | ||
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英語名:preplate、同義語:primordial plexiform layer | 英語名:preplate、同義語:primordial plexiform layer | ||
{{box|text= | {{box|text= プレプレートは、大脳皮質の発生において皮質板の出現よりも早期に髄膜と脳室帯との間に形成される薄い層構造である。発生の初期に一過的にのみ認められ、発達とともに脳表層側の辺縁帯と深層側のサブプレートに分割される。リーリンを分泌することにより大脳皮質の発生過程を制御しているカハールレチウス細胞、将来サブプレートを構成する神経細胞、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンやフィブロネクチンなどの細胞外基質などからなる('''図1''')。}} | ||
[[Image:Noukagakujiten_fig_180728-2.jpg|thumb|right|350px|'''図1. 発生初期の大脳皮質''' <br /> | |||
①カハールレチウス細胞、②将来サブプレートとなる神経細胞、③細胞外基質、④神経上皮細胞<br>]] | |||
== プレプレートとは == | == プレプレートとは == | ||
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また、ヒトにおいて、脳室帯で神経細胞の産生が始まるよりも前に、神経細胞マーカーである[[TU20]]を発現するpredecessor neuronが軟膜直下に存在し、後に転写因子[[Tbr1]]を発現することが報告された。この細胞の役割に関してはまだ不明であるが、水平に伸びる長い樹状突起により軸索の投射や後続の移動細胞をガイドしていることが示唆されている<ref><pubmed> 16783367 </pubmed></ref>。 | また、ヒトにおいて、脳室帯で神経細胞の産生が始まるよりも前に、神経細胞マーカーである[[TU20]]を発現するpredecessor neuronが軟膜直下に存在し、後に転写因子[[Tbr1]]を発現することが報告された。この細胞の役割に関してはまだ不明であるが、水平に伸びる長い樹状突起により軸索の投射や後続の移動細胞をガイドしていることが示唆されている<ref><pubmed> 16783367 </pubmed></ref>。 | ||
===細胞外基質=== | ===細胞外基質 (extracellular matrix)=== | ||
プレプレート内には細胞成分の他に多くの[[細胞外基質]]や細胞[[外分泌]]タンパク質が含まれる。細胞外基質としては[[コンドロイチン硫酸プロテオグリカン]](chondroitin sulfate proteoglycans:[[CSPGs]])や[[フィブロネクチン]]、細胞外分泌タンパク質としては[[リーリン]]がその代表的なものである。 | プレプレート内には細胞成分の他に多くの[[細胞外基質]]や細胞[[外分泌]]タンパク質が含まれる。細胞外基質としては[[コンドロイチン硫酸プロテオグリカン]](chondroitin sulfate proteoglycans:[[CSPGs]])や[[フィブロネクチン]]、細胞外分泌タンパク質としては[[リーリン]]がその代表的なものである。 | ||
CSPGsはプレプレートニューロンから分泌されると考えられており、その分布はプレプレートニューロンの分布に依存する。リーリン分子を欠損したリーラーマウス(reeler)ではプレプレートの分割が起きずプレプレートニューロンが異所的に脳表面近くに分布することが知られているが(後述)、リーラーにおいてCSPGsの分布がその異所性のプレプレートニューロンの分布に一致することが、CSPGs の分布がプレプレートニューロンに依存するとされる根拠の一つである。プレプレートにおけるCSPGsの役割は、軸索形成を阻害するという他の部位で見られる機能とは異なり、視床皮質線維と[[皮質遠心性線維]]とをサブプレート直下で分離することに関与しているとの報告もある<ref><pubmed> 8207468 </pubmed></ref><ref><pubmed> 7636035 </pubmed></ref><ref name=ref5 />が、まだ未解明な部分が多い。 | |||
===その他の構造物=== | ===その他の構造物=== | ||
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==プレプレートの分割とリーリン== | ==プレプレートの分割とリーリン== | ||
[[Image:Noukagaku_preplate_figure.jpg|thumb|right|750px|''' | [[Image:Noukagaku_preplate_figure.jpg|thumb|right|750px|'''図2. プレプレートの分割''' <br /> | ||
'''A.''' 将来皮質第VI層の細胞になる神経細胞が多極性移動細胞の形態をとってプレプレート内に進入する。<br /> | '''A.''' 将来皮質第VI層の細胞になる神経細胞が多極性移動細胞の形態をとってプレプレート内に進入する。<br /> | ||
'''B.''' 将来皮質第VI層の細胞になる神経細胞が多極性移動細胞の形態をとった後に放射状に形態・向きを変える。それに伴いプレプレートの分割が起き、CPが出現する。<br /> | '''B.''' 将来皮質第VI層の細胞になる神経細胞が多極性移動細胞の形態をとった後に放射状に形態・向きを変える。それに伴いプレプレートの分割が起き、CPが出現する。<br /> | ||
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<ref><pubmed> 25426475 </pubmed></ref>を改変 | <ref><pubmed> 25426475 </pubmed></ref>を改変 | ||
]] | ]] | ||
マウスでは胎生13日頃より、将来皮質板第VI層となる神経細胞がプレプレート内に進入する。その結果、胎生13日頃よりプレプレートの分割が起こる(''' | マウスでは胎生13日頃より、将来皮質板第VI層となる神経細胞がプレプレート内に進入する。その結果、胎生13日頃よりプレプレートの分割が起こる('''図2''')。 | ||
リーリンを欠損したリーラーマウスでは、プレプレートの分割が起きず軟膜直下にカハールレチウス細胞、サブプレートニューロン、一部のⅥ層ニューロン等が入り混じった層であるスーパープレートを形成する。更に後続の移動細胞はinside-out様式の層構造を形成できず層構造が概ね逆転したoutside-in構造となる<ref><pubmed> 21253854 </pubmed></ref>。 | リーリンを欠損したリーラーマウスでは、プレプレートの分割が起きず軟膜直下にカハールレチウス細胞、サブプレートニューロン、一部のⅥ層ニューロン等が入り混じった層であるスーパープレートを形成する。更に後続の移動細胞はinside-out様式の層構造を形成できず層構造が概ね逆転したoutside-in構造となる<ref><pubmed> 21253854 </pubmed></ref>。 |