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== 正常圧水頭症とは == | == 正常圧水頭症とは == | ||
[[ファイル:Yamada NPH Fig.jpg|サムネイル|'''図1. 健常者並びに正常圧水頭症での頭蓋内脳脊髄液の分布'''<br>'''上段''':正面像、'''下段''':側面像<br>左から順に<br>'''70代健常者'''<br>'''特発性正常圧水頭症(iNPH)患者''':脳室は頭頂方向へ拡大し、両側脳室の上壁の角度(脳梁角)が急峻となる。くも膜下腔のCSFは頭蓋底側、脳底槽とシルビウス裂を中心に集積し、頭頂部のCSFは減少する。<br>'''二次性正常圧水頭症(sNPH)患者''':広範囲のくも膜下腔が癒着して閉塞している。その結果、側脳室も第三脳室も全方向性に均等に拡大する。<br> | [[ファイル:Yamada NPH Fig.jpg|サムネイル|450px|'''図1. 健常者並びに正常圧水頭症での頭蓋内脳脊髄液の分布'''<br>'''上段''':正面像、'''下段''':側面像<br>左から順に<br>'''70代健常者'''<br>'''特発性正常圧水頭症(iNPH)患者''':脳室は頭頂方向へ拡大し、両側脳室の上壁の角度(脳梁角)が急峻となる。くも膜下腔のCSFは頭蓋底側、脳底槽とシルビウス裂を中心に集積し、頭頂部のCSFは減少する。<br>'''二次性正常圧水頭症(sNPH)患者''':広範囲のくも膜下腔が癒着して閉塞している。その結果、側脳室も第三脳室も全方向性に均等に拡大する。<br> | ||
'''先天性要因あるいは発達異常に伴う正常圧水頭症(congenital/developmental etiologies)''':側脳室、第三脳室、第四脳室の全脳室が著明に拡大しているが、くも膜下腔のCSFの分布は健常者と似ている。<br> | '''先天性要因あるいは発達異常に伴う正常圧水頭症(congenital/developmental etiologies)''':側脳室、第三脳室、第四脳室の全脳室が著明に拡大しているが、くも膜下腔のCSFの分布は健常者と似ている。<br> | ||
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[[頭部外傷]]、[[くも膜下出血]]、[[脳内出血]]、[[髄膜炎]]、[[脳腫瘍]]などの先行脳疾患に続発する[[二次性正常圧水頭症]](secondary Normal Pressure Hydrocephalus, sNPH)と、原因となる疾患が明らかではない[[特発性正常圧水頭症]](idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus, iNPH)の2つに分類されてきた。 | [[頭部外傷]]、[[くも膜下出血]]、[[脳内出血]]、[[髄膜炎]]、[[脳腫瘍]]などの先行脳疾患に続発する[[二次性正常圧水頭症]](secondary Normal Pressure Hydrocephalus, sNPH)と、原因となる疾患が明らかではない[[特発性正常圧水頭症]](idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus, iNPH)の2つに分類されてきた。 | ||
当初は、画像検査で脳室の著明な拡大によって見つかる先天性要因あるいは発達異常に伴う正常圧水頭症(congenital/developmental etiologies)も、先行性脳疾患がなく、歩行障害、認知障害、排尿障害を主症状としており特発性正常圧水頭症に含まれていた可能性があるが、この病態は症状の進行や治療方針、治療効果がいわゆる特発性正常圧水頭症とは異なるため、二次性正常圧水頭症、特発性正常圧水頭症とは明確に区別するために、別の分類に定義されている(''' | 当初は、画像検査で脳室の著明な拡大によって見つかる先天性要因あるいは発達異常に伴う正常圧水頭症(congenital/developmental etiologies)も、先行性脳疾患がなく、歩行障害、認知障害、排尿障害を主症状としており特発性正常圧水頭症に含まれていた可能性があるが、この病態は症状の進行や治療方針、治療効果がいわゆる特発性正常圧水頭症とは異なるため、二次性正常圧水頭症、特発性正常圧水頭症とは明確に区別するために、別の分類に定義されている('''図1''')。 | ||
=== 歴史的推移 === | === 歴史的推移 === | ||
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これらの症状変化は、各国で様々な主観的な評価スケールが用いて評価されている。 | これらの症状変化は、各国で様々な主観的な評価スケールが用いて評価されている。 | ||
我が国もガイドライン作成委員会で作成したiNPH Grading Scaleが使われている<ref name=Guideline2020 /> | 我が国もガイドライン作成委員会で作成したiNPH Grading Scaleが使われている<ref name=Guideline2020 />('''表''')。 | ||
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