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とし、姿勢・運動の両者を含めている。 | とし、姿勢・運動の両者を含めている。 | ||
一方、日本のジストニア診療ガイドラインでは<ref name=日本神経学会(監修)「ジストニア診療ガイドライン」作成委員会(編集).2018a>'''日本神経学会(監修)「ジストニア診療ガイドライン」作成委員会(編集)''' | 一方、日本のジストニア診療ガイドラインでは<ref name=日本神経学会(監修)「ジストニア診療ガイドライン」作成委員会(編集).2018a>'''日本神経学会(監修)「ジストニア診療ガイドライン」作成委員会(編集)(2018).'''<br>ジストニアの定義とはどのようなものですか. ジストニア診療ガイドライン2018,南光堂, 東京, pp2-3.</ref> | ||
「運動障害のひとつで、骨格筋の持続のやや長い収縮、もしくは間欠的な筋収縮に特徴づけられる症候で、異常な(しばしば反復性の要素を伴う)運動:ジストニア運動 (dystonic movement)とジストニア姿位 (dystonic posture)、あるいは、両者よりなる。しかし、ジストニア姿位はジストニアに必須ではなく(顔面、喉頭など)、ジストニアの本態は異常運動にある。 (以下略)」 | 「運動障害のひとつで、骨格筋の持続のやや長い収縮、もしくは間欠的な筋収縮に特徴づけられる症候で、異常な(しばしば反復性の要素を伴う)運動:ジストニア運動 (dystonic movement)とジストニア姿位 (dystonic posture)、あるいは、両者よりなる。しかし、ジストニア姿位はジストニアに必須ではなく(顔面、喉頭など)、ジストニアの本態は異常運動にある。 (以下略)」 | ||
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== 診断 == | == 診断 == | ||
上記のように概念が確定しないためコンセンサスとしての診断基準はないが、以下に挙げるジストニアの諸特徴<ref name=目崎高広2011>'''目崎高広 (2011)<br>'''ジストニアの病態と治療. 臨床神経 51:465-470.</ref>のうち[[感覚トリック]]をもっとも重視して診断のアルゴリズムを作成した報告がある<ref name=Defazio2019><pubmed>30269178</pubmed></ref> | 上記のように概念が確定しないためコンセンサスとしての診断基準はないが、以下に挙げるジストニアの諸特徴<ref name=目崎高広2011>'''目崎高広 (2011).<br>'''ジストニアの病態と治療. 臨床神経 51:465-470.<br><pubmed>21823504</pubmed></ref>のうち[[感覚トリック]]をもっとも重視して診断のアルゴリズムを作成した報告がある<ref name=Defazio2019><pubmed>30269178</pubmed></ref>。[[アテトーシス]]、[[舞踏症]]、[[振戦]]、[[ミオクローヌス]]などと鑑別するが、しばしば複数の運動異常を合併する。なお診断に際しては、眼前の運動異常症がジストニアであるか否かに留まらず、背景となる病態または疾患の有無を検討する。とりわけジストニア以外の病的所見(神経症候に限らない)を認める場合には、[[症候性ジストニア|症候性(後天性)ジストニア]]の鑑別診断が必須である。 | ||
* 定型性 (fixed pattern): 異常姿勢または不随意運動パターンが、程度の差はあっても患者毎に一定であり変転しないという特徴 | * 定型性 (fixed pattern): 異常姿勢または不随意運動パターンが、程度の差はあっても患者毎に一定であり変転しないという特徴 | ||
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* [[早朝効果]] (morning benefit): 起床時に症状が軽いという現象 | * [[早朝効果]] (morning benefit): 起床時に症状が軽いという現象 | ||
* [[フリップフロップ現象]] (flip-flop phenomenon):何らかのきっかけで(あるいは一見誘因なく)症候が急に増悪あるいは軽快する現象 | * [[フリップフロップ現象]] (flip-flop phenomenon):何らかのきっかけで(あるいは一見誘因なく)症候が急に増悪あるいは軽快する現象 | ||
感覚トリックはジストニアと診断するための有力な現象であるが、必須ではなく、特異性も100%ではない。筆者はジストニアを、「骨格筋収縮の定型的なオーバーフロー現象(“patterned motor overflow”)」の表現形であると考えた<ref name=Mezaki2017><pubmed>28735649</pubmed></ref>。 | 感覚トリックはジストニアと診断するための有力な現象であるが、必須ではなく、特異性も100%ではない。筆者はジストニアを、「骨格筋収縮の定型的なオーバーフロー現象(“patterned motor overflow”)」の表現形であると考えた<ref name=Mezaki2017><pubmed>28735649</pubmed></ref>。 | ||
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! 名称 !! 旧称 !! 遺伝形式 !! 特徴 | ! 名称 !! 旧称 !! 遺伝形式 !! 特徴 | ||
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| DYT-TOR1A || DYT1 || AD || ''[[Oppenheim’s dystonia]]''. Dystonia musculorum deformansのプロトタイプ。典型例では小児期に上肢または下肢から発症し全身に広がる。 | | [[DYT-TOR1A]] || [[DYT1]] || AD || ''[[Oppenheim’s dystonia]]''. Dystonia musculorum deformansのプロトタイプ。典型例では小児期に上肢または下肢から発症し全身に広がる。 | ||
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| [[DYT/PARK-TAF1]] || [[DYT3]] || XR || ''[[X-linked dystonia-parkinsonism]]''. [[wj:フィリピン|フィリピン]]の[[wj:パナイ島|Panay島]]に集積。ジストニアで発症し[[パーキンソン症候群]]を続発。 | | [[DYT/PARK-TAF1]] || [[DYT3]] || XR || ''[[X-linked dystonia-parkinsonism]]''. [[wj:フィリピン|フィリピン]]の[[wj:パナイ島|Panay島]]に集積。ジストニアで発症し[[パーキンソン症候群]]を続発。 | ||
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AD; autosomal dominant, AR; autosomal recessive, XR; X-linked recessive | AD; autosomal dominant, AR; autosomal recessive, XR; X-linked recessive | ||
背景疾患を他に持たない遺伝性ジストニアは、かつて「DYT+番号」で表記されたが、現在では遺伝性運動異常症に共通した形式を採用し、「主要症候+原因遺伝子」で表記される<ref name=Marras2016><pubmed>27079681</pubmed></ref>。DYTはジストニアが、DYT/ | 背景疾患を他に持たない遺伝性ジストニアは、かつて「DYT+番号」で表記されたが、現在では遺伝性運動異常症に共通した形式を採用し、「主要症候+原因遺伝子」で表記される<ref name=Marras2016><pubmed>27079681</pubmed></ref>。DYTはジストニアが、DYT/PARKはジストニアと[[パーキンソン症候群]]とが、それぞれ主症状であることを意味する。ここでは旧名が「DYT+番号」であった遺伝性ジストニアのうち、日本人に比較的関わりの大きい病型および文献に比較的多く現れる病型を挙げた(日本人に報告はあるが省略した病型もある)。また「特徴」の欄内にある斜体病名は別称であるが、逆は必ずしも正しくない。例えばDYT-SGCEとmyoclonus-dystoniaとでは後者の方が広い意味を持ち、後者の代表的な病型がDYT-SGCEである([[ε-サルコグリカン]]を原因遺伝子としないmyoclonus-dystoniaも存在する)。 | ||
== 病態生理 == | == 病態生理 == | ||
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== 疫学 == | == 疫学 == | ||
特発性ジストニアの有病率は人口10万人に対して十数人とされるが<ref name=日本神経学会(監修)「ジストニア診療ガイドライン」作成委員会(編集).2018b>'''日本神経学会(監修)「ジストニア診療ガイドライン」作成委員会(編集)''' | 特発性ジストニアの有病率は人口10万人に対して十数人とされるが<ref name=日本神経学会(監修)「ジストニア診療ガイドライン」作成委員会(編集).2018b>'''日本神経学会(監修)「ジストニア診療ガイドライン」作成委員会(編集)(2018).'''<br>ジストニアの定義とはどのようなものですか. ジストニア診療ガイドライン2018,南光堂, 東京, pp11-12.</ref>、過少算定と考えられている。特発性ジストニアの大部分は局所性であり、海外では痙性斜頸(攣縮性斜頸)がもっとも多い。日本では眼瞼痙攣(眼瞼攣縮)の方が多いとされる。発症年齢は病型によって異なる。一般に若年発症ほど罹患範囲が広がりやすく、一方、局所性ジストニアの代表的な病型はほとんどが成人発症である。男女比は疾患によって異なり、例えば眼瞼痙攣は女性に、書痙は男性に比較的多い。痙性斜頸は多くの統計が女性に多いとしているが、日本では男性にやや多い可能性がある。 | ||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references /> | <references /> |