「ケーブル理論」の版間の差分

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''山形大学医学部生理学講座''<br>
''山形大学医学部生理学講座''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2018年4月2日 原稿完成日:<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2018年4月2日 原稿完成日:2018年6月11日 一部修正:2021年9月3日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学大学院医学系研究科)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学大学院医学系研究科)<br>
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英語名:cable theory 独:Kabeltheorie
英語名:cable theory 独:kabeltheorie


同義語:ケーブル特性
同義語:ケーブル特性
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さらに、神経突起の半径をa、神経突起断面における膜の単位面積あたりの膜抵抗をRm、突起の断面積あたりの内部抵抗を Ri  とすると、
さらに、神経突起の半径をa、神経突起断面における膜の単位面積あたりの膜抵抗をRm、突起の断面積あたりの内部抵抗を Ri  とすると、


: <math> r_i=\sqrt{\frac{R_i}{{\pi}a^2}}</math>    <math> r_m=\sqrt{\frac{R_m}{2{\pi}}}</math>
: <math> r_i={\frac{R_i}{{\pi}a^2}}</math>    <math> r_m={\frac{R_m}{2{\pi}a}}</math>


なので、長さ定数λ は以下のように表すことができる。
なので、長さ定数λ は以下のように表すことができる。
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文献<ref name=Kendel1991/> より改変。]]
文献<ref name=Kendel1991/> より改変。]]


 神経細胞は、他の神経細胞からの[[シナプス]]を介した信号を複数の樹状突起および細胞体の膜で受容し、その結果、神経細胞はこれらの細胞膜に発生した局所電位の変化を積算して活動電位として表出する。ケーブル特性はシナプスにおけるこの統合過程の物理的基盤となっている。シナプス後細胞でおこるシナプス反応の空間的加重や時間的加重、すなわち反応の局所的統合は、膜の(閾値下の)ケーブル特性によって行われる<ref name=ozawa2009/>。
 神経細胞は、他の神経細胞からの[[シナプス]]を介した信号を複数の樹状突起および細胞体の膜で受容し、その結果、神経細胞はこれらの細胞膜に発生した局所電位の変化を積算して活動電位として表出する。ケーブル特性はシナプスにおけるこの統合過程の物理的基盤となっている。シナプス後細胞でおこるシナプス反応の空間的加重や時間的加重、すなわち反応の局所的統合は、膜の(閾値下の)ケーブル特性によって行われる<ref name=Kendel1991/>。


 空間的加重や時間的加重の程度は、それぞれ長さ定数と時定数によって規定される('''図4''')。ただし、樹状突起では、時定数が大きい場合に電位変化が長く持続することになり、その結果、時間的加重がより大きくなるのに対し、軸索においては、上述の通り逆に時定数が短い方が膜の隣接部位がより早く閾値に達することになるので、伝導速度は速くなる。
 空間的加重や時間的加重の程度は、それぞれ長さ定数と時定数によって規定される('''図4''')。ただし、樹状突起では、時定数が大きい場合に電位変化が長く持続することになり、その結果、時間的加重がより大きくなるのに対し、軸索においては、上述の通り逆に時定数が短い方が膜の隣接部位がより早く閾値に達することになるので、伝導速度は速くなる。