「Aδ線維とC線維」の版間の差分

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==機能==
==機能==
===感覚受容===
===感覚受容===
 感覚受容器は種々の[[wikipedia:ja:エネルギー|エネルギー]]([[wikipedia:ja:熱エネルギー|熱エネルギー]]、[[wikipedia:ja:機械エネルギー|機械エネルギー]]、[[wikipedia:ja:化学エネルギー|化学エネルギー]])を電気的な神経の信号([[脱分極]])、さらには[[活動電位]])に変換して、情報を[[中枢神経]]に送る。
 A-δ線維の受容器もC-線維の受容器も感覚終末は特別な小体構造を造らない[[自由神経終末]]である。
 A-δ線維の受容器もC-線維の受容器も感覚終末は特別な小体構造を造らない[[自由神経終末]]である。


 感覚受容器は種々の[[wikipedia:ja:エネルギー|エネルギー]]([[wikipedia:ja:熱エネルギー|熱エネルギー]]、[[wikipedia:ja:機械エネルギー|機械エネルギー]]、[[wikipedia:ja:化学エネルギー|化学エネルギー]])を電気的な神経の信号([[脱分極]])、さらには[[活動電位]])に変換して、情報を[[中枢神経]]に送る。
 A-δ線維終末には[[痛み]]および[[冷感覚]]情報を伝える感覚受容器(それぞれ[[侵害受容器]]、[[冷受容器]])がある。ただし、ラットでは冷受容器は主として後述のC線維である。
 
=== A-δ線維 ===
 終末には[[痛み]]および[[冷感覚]]情報を伝える感覚受容器(それぞれ[[侵害受容器]]、[[冷受容器]])がある。ただし、ラットでは冷受容器は主として後述のC線維である。


=== C-線維 ===
 C-線維は痛み感覚を伝えていると一般には考えられているが、痛み感覚ばかりではなく、[[痒み感覚]]、快感を起こすような(sensual)[[触感覚]]、[[温感覚]](ラットでは冷感覚も)も伝えている。つまり、その終末はそれぞれそれらの受容器(それぞれ侵害受容器、[[C線維低閾値機械受容器]]、[[温受容器]])となっている。侵害受容器には熱にも機械刺激にも反応するポリモーダル(侵害)受容器、機械刺激にのみ反応する機械侵害受容器、機械刺激に反応せず熱刺激にのみ反応する熱侵害受容器、正常な組織では活動しておらず炎症時などで活動する非活動性侵害受容器等がある、後者の2つはC線維のみに存在する。痒み感覚の受容器には、[[ポリモーダルタイプ]](痒み物質のもならず機械刺激、熱刺激にも反応する)のものと、痒み物質にのみ特異的に反応する[[化学受容器]]タイプとがある。
 C-線維は痛み感覚を伝えていると一般には考えられているが、痛み感覚ばかりではなく、[[痒み感覚]]、快感を起こすような(sensual)[[触感覚]]、[[温感覚]](ラットでは冷感覚も)も伝えている。つまり、その終末はそれぞれそれらの受容器(それぞれ侵害受容器、[[C線維低閾値機械受容器]]、[[温受容器]])となっている。侵害受容器には熱にも機械刺激にも反応するポリモーダル(侵害)受容器、機械刺激にのみ反応する機械侵害受容器、機械刺激に反応せず熱刺激にのみ反応する熱侵害受容器、正常な組織では活動しておらず炎症時などで活動する非活動性侵害受容器等がある、後者の2つはC線維のみに存在する。痒み感覚の受容器には、[[ポリモーダルタイプ]](痒み物質のもならず機械刺激、熱刺激にも反応する)のものと、痒み物質にのみ特異的に反応する[[化学受容器]]タイプとがある。
{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1"
|+'''表2.神経線維の受容器の分類とその様式'''<ref name="ref1" />
|-
| style="text-align:center" | 受容器の種類
| style="text-align:center" | 線維の種類
| style="text-align:center" | 線維の名前
| style="text-align:center" | 様式
|-
| 皮膚と皮下の[[機械受容器]]
|
|
| [[触覚]]
|-
|  [[マイスナー小体]]
| style="text-align:center" | Aα、β
| style="text-align:center" | RA1
|  なでる、粗動
|-
|  [[メルケル細胞]]
| style="text-align:center" | Aα、β
| style="text-align:center" | SA1
|  圧力、触感
|-
|  [[パチニ小体]]
| style="text-align:center" | Aα、β
| style="text-align:center" | RA2
|  振動
|-
|  [[ルフィニ終末]]
| style="text-align:center" | Aα、β
| style="text-align:center" | SA2
|  皮膚の伸縮
|-
|  [[Hair-tylotrich]], [[hair-guard]]
| style="text-align:center" | Aα、β
| style="text-align:center" | G1、G2
|  なでる、粗動
|-
|  [[Hair-down]]
| style="text-align:center" | Aδ
| style="text-align:center" | D
|  軽くなでる
|-
|  Field
| style="text-align:center" | Aα、β
| style="text-align:center" | F
|  皮膚の伸縮
|-
|   C機械受容器
| style="text-align:center" | C
|
|  なでる、erotic touch
|-
| style="background-color:#a9a9a9" |
| style="background-color:#a9a9a9" |
| style="background-color:#a9a9a9" |
| style="background-color:#a9a9a9" |
|-
| [[温度受容器]]
|  
|   
| 温度 
|-
|  [[冷覚受容器]]
| style="text-align:center" | Aδ
| style="text-align:center" | III
|  皮膚冷感(&lt;25℃[77℉])
|-
|   温覚受容器
| style="text-align:center" | C
| style="text-align:center" | IV
|  皮膚温感(&gt;35℃[95℉])
|-
|   [[高熱侵害受容器]]
| style="text-align:center" | Aδ
| style="text-align:center" | III
|  高温(&gt;45℃[113℉])
|-
|  [[寒冷侵害受容器]]
| style="text-align:center" | C
| style="text-align:center" | IV
|  低温(&lt;5℃[41℉])
|-
| style="background-color:#a9a9a9" |
| style="background-color:#a9a9a9" |
| style="background-color:#a9a9a9" |
| style="background-color:#a9a9a9" |
|-
| [[侵害受容器]]
|
|
| 痛み
|-
|   機械的
| style="text-align:center" | Aδ
| style="text-align:center" | III
|  鋭く穿刺するような痛み
|-
|   温度機械的(熱)
| style="text-align:center" | Aδ
| style="text-align:center" | III
|  焼けるような痛み
|-
|  温度機械的(寒冷) 
| style="text-align:center" | C
| style="text-align:center" | IV
|  凍てつく痛み
|-
|  多様式的
| style="text-align:center" | C
| style="text-align:center" | IV
|  鈍い焼けるような痛み
|-
| style="background-color:#a9a9a9" |
| style="background-color:#a9a9a9" |
| style="background-color:#a9a9a9" |
| style="background-color:#a9a9a9" |
|-
| 筋・骨格の機械受容器
|
|
| 四肢の[[固有受容性感覚]]
|-
|   [[筋紡錘]](第一)
| style="text-align:center" | Aα
| style="text-align:center" | Ia
|  筋肉の長さとスピード
|-
|   筋紡錘(第二)
| style="text-align:center" | Aβ
| style="text-align:center" | II
|  筋肉の伸展
|-
|   [[ゴルジ腱器官]]
| style="text-align:center" | Aα
| style="text-align:center" | Ib
|  筋肉の収縮
|-
|   [[間接嚢受容器]]
| style="text-align:center" | Aβ
| style="text-align:center" | II
|  筋肉の角度
|-
|   [[伸縮感応性自由終末]]
| style="text-align:center" | Aδ
| style="text-align:center" | III
|  過剰な伸展あるいは力
|}


===感覚受容機構===
===感覚受容機構===
 各種のエネルギーを神経の信号に変換する分子を[[トランスジューサー分子]]といい、最近これがいろいろわかってきた。熱を電気的な変化に変換するものとして[[TRPV1]]、[[TRPV2|V2]]、[[TRPV3|V3]]、[[TRPV4|V4]]が、冷却を電気的変化に変換するものとして[[TRPM8]]が見出された。機械エネルギーのトランスジューサーとしてはまだ確固としたものは見出されていないが、[[Piezo1]],[[Piezo2|2]]という分子が注目を浴びている。
 各種のエネルギーを神経の信号に変換する分子を[[トランスジューサー分子]]といい、最近これがいろいろわかってきた。
 
====温度受容====
 熱を電気的な変化に変換するものとして[[TRPV1]]、[[TRPV2|V2]]、[[TRPV3|V3]]、[[TRPV4|V4]]が、冷却を電気的変化に変換するものとして[[TRPM8]]が見出された。機械エネルギーのトランスジューサーとしてはまだ確固としたものは見出されていないが、[[Piezo1]],[[Piezo2|2]]という分子が注目を浴びている。


 化学的な物質に対するものには[[イオンチャネル型の受容体]]と代謝型の受容体(これ自身だけでは電位変化は起こせない、[[細胞内情報伝達系]]を駆動して、他の[[イオンチャネル]]を修飾して電位変化を起こす)とがあり、[[ブラジキニン]][[B2受容体]]、[[プロスタグランジン]]受容体、[[ATP]]に対する[[P2X受容体]]や[[P2Y受容体]]等、多くのものが知られている。これらの分子がいろいろの組み合わせで受容器終末に発現し、その受容器の反応特性を作っている。
====化学受容====
 化学的な物質に対するものには[[イオンチャネル型受容体]]と[[代謝型受容体]](これ自身だけでは電位変化は起こせない、[[細胞内情報伝達系]]を駆動して、他の[[イオンチャネル]]を修飾して電位変化を起こす)とがあり、[[ブラジキニン]][[B2受容体]]、[[プロスタグランジン]]受容体、[[ATP]]に対する[[P2X受容体]]や[[P2Y受容体]]等、多くのものが知られている。これらの分子がいろいろの組み合わせで受容器終末に発現し、その受容器の反応特性を作っている。


===侵害受容器===
====侵害受容====
 A-δ線維のものとC線維のものとがあるが、それらが引き起こす感覚には違いがある。A-δ線維による痛みは、鋭く、識別性、局在性がよく、同じ部位の刺激では最初に(速く)感じられるので「[[速い痛み]]」または「[[一次痛]]」といわれる。逃避反射を引き起こす求心神経であると考えられている。
 A-δ線維のものとC線維のものとがあるが、それらが引き起こす感覚には違いがある。A-δ線維による痛みは、鋭く、識別性、局在性がよく、同じ部位の刺激では最初に(速く)感じられるので「[[速い痛み]]」または「[[一次痛]]」といわれる。逃避反射を引き起こす求心神経であると考えられている。