「磁気共鳴画像法」の版間の差分

(ページの作成:「磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging, MRI) 京都大学医学部医学研究科脳機能総合研究センター 藤本晃司 京都大学医学部医…」)
 
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 励起後の巨視的磁化の横磁化成分の消失(T_2緩和)はスピンースピン緩和とも呼ばれ、原子核スピン集団のコヒーレンス(位相同期)の消失(即ち位相分散)による。個々の原子核スピンが「感じる」静磁場はわずかながらランダムに変動しており、結果として時間の経過とともにスピン集団のコヒーレンスが失われてゆく(ある原子核スピンは位相が早くなり、別の原子核スピンは位相が遅くなる)。この際の横磁化の時間変化は、巨視的磁化ベクトルMの、ある時間 t における静磁場方向に直交する成分をM_xy (t)とおくとM_xy (t)=M_xy (0)e^(-t/T_2 )で減衰する。T_2はこの減衰の早さを決める時定数である。
 励起後の巨視的磁化の横磁化成分の消失(T_2緩和)はスピンースピン緩和とも呼ばれ、原子核スピン集団のコヒーレンス(位相同期)の消失(即ち位相分散)による。個々の原子核スピンが「感じる」静磁場はわずかながらランダムに変動しており、結果として時間の経過とともにスピン集団のコヒーレンスが失われてゆく(ある原子核スピンは位相が早くなり、別の原子核スピンは位相が遅くなる)。この際の横磁化の時間変化は、巨視的磁化ベクトルMの、ある時間 t における静磁場方向に直交する成分をM_xy (t)とおくとM_xy (t)=M_xy (0)e^(-t/T_2 )で減衰する。T_2はこの減衰の早さを決める時定数である。


==== T_2^*緩和 ====
==== ''T<sub>2</sub><sup>*</sup>''緩和 ====
 前述のT_2緩和に加え、現実のMRI環境では、励起されたスピン集団の外部磁場は場所により少しずつ異なる(ただしここでは緩和過程中の時間変動はないものと仮定する)。結果として外部から観測される横磁化成分の減衰の早さは、静磁場の空間的分布の不均一性の強さ∆B_0 および磁気回転比(gyromagnetic ratio γ)を用いて
 前述の''T<sub>2</sub>''緩和に加え、現実のMRI環境では、励起されたスピン集団の外部磁場は場所により少しずつ異なる(ただしここでは緩和過程中の時間変動はないものと仮定する)。結果として外部から観測される横磁化成分の減衰の早さは、静磁場の空間的分布の不均一性の強さ''∆B<sub>0</sub>'' および磁気回転比(gyromagnetic ratio γ)を用いて


1/(T_2^* )=1/T_2 +γ∆B_0=1/T_2 +1/T_(B_0 inhomogeneity)
<math>
とあらわされ、T_2^*と呼ばれる。
\frac{1}{T_2^*}=\frac{1}{T_2}+\gamma\Delta B_0=\frac{1}{T_2}+\frac{1}{T_{B0inhomogeneity}}
</math>
 
とあらわされ、''T<sub>2</sub><sup>*</sup>''と呼ばれる。


== 空間情報のエンコーディングとデコーディング ==
== 空間情報のエンコーディングとデコーディング ==