「錐体細胞」の版間の差分

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 6層構造の新皮質では、1層を除いて、各層ごとに特徴的な形態を持つ錐体細胞が存在する<ref name="ref5">'''Jones EG'''<br>Laminar distribution of output cells. In: Cerebral cortex, Vol 1, Cellular components of the cerebral cortex<br>(Peters A, Jones EG, eds), pp 521–553. New York: Plenum, 1984</ref>。軸索は[[ミエリン]]化しており、白質方向へ延びていきながら局所的な分枝を出し、これにより近隣の細胞群と局所回路を形成する。このような局所的な結合や皮質下への軸索投射は、層構造に関連があることが知られている(表)。  
 6層構造の新皮質では、1層を除いて、各層ごとに特徴的な形態を持つ錐体細胞が存在する<ref name="ref5">'''Jones EG'''<br>Laminar distribution of output cells. In: Cerebral cortex, Vol 1, Cellular components of the cerebral cortex<br>(Peters A, Jones EG, eds), pp 521–553. New York: Plenum, 1984</ref>。軸索は[[ミエリン]]化しており、白質方向へ延びていきながら局所的な分枝を出し、これにより近隣の細胞群と局所回路を形成する。このような局所的な結合や皮質下への軸索投射は、層構造に関連があることが知られている(表)。  
 1層は非錐体細胞で占められている。
 2層の錐体細胞は比較的小さく、尖端樹状突起は細胞体の近くで分岐しtuftを形成する。その軸索は主として皮質内結合や[[半球]]間結合に関わることが知られている。
 3層は中型の錐体細胞を含み、皮質間・半球間投射に主に関与する。
 感覚野の4層には、有棘星状細胞や尖端樹状突起の発達の乏しい細胞([[Star pyramidal cell]]とも呼ばれる)が多く存在し、主として皮質内投射に寄与する。
 5層の錐体細胞は、大きな細胞体と太い尖端樹状突起を持ち、様々な皮質内・皮質下領域へ投射している。一次運動野5層には、特に巨大な[[Betz細胞]](細胞体直径が100μmにも達する)が存在し、その軸策は錐体路(皮質脊髄投射)を形成する<ref name="ref6"><pubmed>3655019</pubmed></ref>。
 6層の錐体細胞は、比較的小さな細胞体と細い尖端樹状突起を持ち、主として[[視床]]へ投射する。
 また、5層深部と6層には[[modified pyramidal cell]]と呼ばれる非典型的な形態の錐体細胞が比較的多く観察され、その尖端樹状突起が伸びる方向は細胞によって様々である。しかし、[[棘突起]]の存在や興奮性のシナプス結合など、多くの特徴を錐体細胞と共有している<ref name="ref7"><pubmed>19052106</pubmed></ref>。


'''表'''  
'''表'''  
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 1層には錐体投射細胞は存在しないので省略したが、錐体細胞の尖端樹状突起が密に分岐しており、シナプス結合そのものは豊富である。<br> 層間結合・投射先共に、皮質領野によって違いがみられる。<br> * 結合の同定には様々な手法があり、相互に矛盾しない結果が必ずしも得られているわけではないので、詳細については引用文献などを参照されたい<ref name=ref28><pubmed>19632814</pubmed></ref> <ref name=ref29><pubmed>19186171</pubmed></ref> <ref name=ref30><pubmed>21245906</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>16624959</pubmed></ref> <ref name=ref32><pubmed>22171028</pubmed></ref>。錐体細胞のタイプによって、入出力関係に差があることも報告されている<ref name=ref30><pubmed>21245906</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>16624959</pubmed></ref>。層内の相互結合は全層で見られるので、表では省略した。<br> ** ここで言う皮質投射は同側領野間および半球間投射。<br> *** 4層は感覚野で発達しており、4層ニューロンの多くは同一または近傍の領野にしか投射しない。  
 1層には錐体投射細胞は存在しないので省略したが、錐体細胞の尖端樹状突起が密に分岐しており、シナプス結合そのものは豊富である。<br> 層間結合・投射先共に、皮質領野によって違いがみられる。<br> * 結合の同定には様々な手法があり、相互に矛盾しない結果が必ずしも得られているわけではないので、詳細については引用文献などを参照されたい<ref name=ref28><pubmed>19632814</pubmed></ref> <ref name=ref29><pubmed>19186171</pubmed></ref> <ref name=ref30><pubmed>21245906</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>16624959</pubmed></ref> <ref name=ref32><pubmed>22171028</pubmed></ref>。錐体細胞のタイプによって、入出力関係に差があることも報告されている<ref name=ref30><pubmed>21245906</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>16624959</pubmed></ref>。層内の相互結合は全層で見られるので、表では省略した。<br> ** ここで言う皮質投射は同側領野間および半球間投射。<br> *** 4層は感覚野で発達しており、4層ニューロンの多くは同一または近傍の領野にしか投射しない。
 
 
 1層は非錐体細胞で占められている。
 
 2層の錐体細胞は比較的小さく、尖端樹状突起は細胞体の近くで分岐しtuftを形成する。その軸索は主として皮質内結合や[[半球]]間結合に関わることが知られている。
 
 3層は中型の錐体細胞を含み、皮質間・半球間投射に主に関与する。
 
 感覚野の4層には、有棘星状細胞や尖端樹状突起の発達の乏しい細胞([[Star pyramidal cell]]とも呼ばれる)が多く存在し、主として皮質内投射に寄与する。
 
 5層の錐体細胞は、大きな細胞体と太い尖端樹状突起を持ち、様々な皮質内・皮質下領域へ投射している。一次運動野5層には、特に巨大な[[Betz細胞]](細胞体直径が100μmにも達する)が存在し、その軸策は錐体路(皮質脊髄投射)を形成する<ref name="ref6"><pubmed>3655019</pubmed></ref>。
 
 6層の錐体細胞は、比較的小さな細胞体と細い尖端樹状突起を持ち、主として[[視床]]へ投射する。
 
 また、5層深部と6層には[[modified pyramidal cell]]と呼ばれる非典型的な形態の錐体細胞が比較的多く観察され、その尖端樹状突起が伸びる方向は細胞によって様々である。しかし、[[棘突起]]の存在や興奮性のシナプス結合など、多くの特徴を錐体細胞と共有している<ref name="ref7"><pubmed>19052106</pubmed></ref>。


== 皮質錐体細胞間の結合 ==
== 皮質錐体細胞間の結合 ==