「軸索分岐」の版間の差分

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== 神経活動依存性 ==
== 神経活動依存性 ==
 軸索分岐は発火活動やシナプス活動と言った神経活動によっても変化する。LGN軸索は大脳皮質視覚野で終末分岐によって緻密な分枝を形成するが、その発火活動を抑制することによって分枝数は減少する。in vitroの実験においても、LGNや大脳皮質ニューロンの軸索分岐は神経活動を低下させることで抑制され、発火活動を増大させることによって促進される<ref name=Matsumoto2016><pubmed>26061995</pubmed></ref> 。しかし、逆に作用するケースもある。網膜からLGNや上丘(superior colliculus)への投射においては、神経活動を抑制することによって分枝の数や範囲が増大する<ref name=McLaughlin2003><pubmed>14687549</pubmed></ref><ref name=Sretavan1988><pubmed>2461517</pubmed></ref> 。このように、神経活動による作用は、神経系や発生段階の違い、あるいは軸索と標的細胞との相互作用によって異なる。さらに、網膜からLGNへの投射においては、神経活動に依存してミクログリアがプレシナプスを貪食して刈込を促進することから<ref name=Schafer2012><pubmed>22632727</pubmed></ref> 、軸索と標的細胞以外の要因も神経活動依存的な分岐形成に重要な役割を果たしている。
 軸索分岐は発火活動やシナプス活動と言った神経活動によっても変化する。LGN軸索は大脳皮質視覚野で終末分岐によって緻密な分枝を形成するが、その発火活動を抑制することによって分枝数は減少する。in vitroの実験においても、LGNや大脳皮質ニューロンの軸索分岐は神経活動を低下させることで抑制され、発火活動を増大させることによって促進される<ref name=Matsumoto2016><pubmed>26061995</pubmed></ref> 。しかし、逆に作用するケースもある。網膜からLGNや上丘(superior colliculus)への投射においては、神経活動を抑制することによって分枝の数や範囲が増大する<ref name=McLaughlin2003><pubmed>14687549</pubmed></ref><ref name=Sretavan1988><pubmed>2461517</pubmed></ref> 。このように、神経活動による作用は、神経系や発生段階の違い、あるいは軸索と標的細胞との相互作用によって異なる。さらに、網膜からLGNへの投射においては、神経活動に依存してミクログリアが前シナプスを貪食して刈込を促進することから<ref name=Schafer2012><pubmed>22632727</pubmed></ref> 、軸索と標的細胞以外の要因も神経活動依存的な分岐形成に重要な役割を果たしている。


 神経活動が軸索分岐を制御するためには、それが分子シグナルに変換される必要がある。一般に神経活動は特定の転写調節因子を介して、その下流に位置する効果分子の発現を制御する<ref name=Yamamoto2012><pubmed>22607005</pubmed></ref> 。このメカニズムによって、細胞外シグナルの発現あるいは細胞骨格制御因子の発現や活性化がコントロールされていると考えられる。
 神経活動が軸索分岐を制御するためには、それが分子シグナルに変換される必要がある。一般に神経活動は特定の転写調節因子を介して、その下流に位置する効果分子の発現を制御する<ref name=Yamamoto2012><pubmed>22607005</pubmed></ref> 。このメカニズムによって、細胞外シグナルの発現あるいは細胞骨格制御因子の発現や活性化がコントロールされていると考えられる。