「皮質性小脳萎縮症」の版間の差分
(ページの作成:「<div align="right"> <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0113019 西澤 正豊]</font><br> ''新潟大学 脳研究所 ''<br> DOI:<selfdoi /> 原稿受付日...」) |
Makotourushitani (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
3行目: | 3行目: | ||
''新潟大学 脳研究所 ''<br> | ''新潟大学 脳研究所 ''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年1月30日 原稿完成日:2016年月日<br> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年1月30日 原稿完成日:2016年月日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0141446 漆谷 真] | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0141446 漆谷 真](滋賀医科大学 医学部 神経内科)<br> | ||
</div> | </div> | ||
2017年1月9日 (月) 20:13時点における最新版
英語名:cortical cerebellar atrophy
英語略:CCA
概念
脊髄小脳変性症の中では最も高齢で発症し、小脳性運動失調のみが緩徐に進行する孤発性の一群を皮質性小脳萎縮症と呼ぶ。単一疾患ではなく、一見家族歴を欠いていても、遺伝子診断により遺伝性脊髄小脳変性症原因遺伝子であるSCA6やSCA31と確定される例があり、またアルコール性などの二次性小脳変性症も含まれる。純粋小脳型を呈する変性疾患としての皮質性小脳萎縮症は、実際には非常に少ないと考えられる。
診断・症候
中年期以降に、小脳性の体幹運動失調と構音障害が緩徐に進行する。経過は多系統萎縮症に比べて緩やかであり、進行しても独立歩行が可能な例もある。四肢の協調運動障害も次第に進行するが、小脳系以外の症候は認めない。
画像検査では、小脳に限局して進行性の萎縮を認める(図2)。病初期には虫部前葉から萎縮が始まり、次第に小脳半球に波及する。しかし、甲状腺機能低下症、ビタミンE欠乏症、ビタミンB1欠乏症、Wilson病などの代謝性疾患、慢性アルコール中毒、フェニトインや臭化バレリル尿素などの薬物中毒、有機水銀中毒、トルエンやベンゼンなどの有機溶媒中毒、傍腫瘍性小脳変性症(腫瘍随伴性神経症候群)、グルテン失調症、GAD抗体陽性失調症、急性小脳炎、Fisher症候群、神経Behçet病、多発性硬化症、小脳血管障害、小脳腫瘍など、多くの疾患を除外する必要があり、診断を皮質性小脳萎縮症と確定することは容易ではない。
治療
根治的な治療法は確立されていないが、小脳の機能維持を目的として、四肢末梢への錘負荷やバランス訓練などのリハビリテーションが広く行われてきた。小脳が正常に保たれている脳血管障害に対する機能回復訓練とは異なり、運動学習の首座と考えられる小脳に進行性の変性が起きている小脳変性症の場合にも、繰り返し学習による可塑性(use- dependent plasticity)が獲得されるか否かは明らかでなかった。そこで、厚生労働省の運動失調症調査研究班で筆者らは、短期集中リハビリが小脳性運動失調の進行抑制に有効であるかを検証する臨床治験を、皮質性小脳萎縮症と遺伝性純粋小脳型失調症(SCA6とSCA31)を対象として実施し、1日各1時間の理学療法と作業療法を1ヶ月間継続すると、小脳性運動失調は改善し、その効果は最大6ヶ月続くことが実証された。この効果は既存の薬物治療効果を上回っており、小脳機能維持を目的としたリハビリテーション体制を整備することが今後の課題である。