新近性判断

2012年12月7日 (金) 00:45時点におけるWikiSysop (トーク | 投稿記録)による版 (→‎神経基盤)

英語名:recency judgment

 時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定する、もしくは継次的に呈示された複数の刺激系列の中から後の刺激系列中の刺激を同定することである。

概要

 現在からの遠さ、系列内の位置、相対的時間(前後関係)などに基づいて親近性判断がなされ、時間が記憶されているわけではないと考えられている[1]。時間経過により記憶“強度”が低下し、その”強度”に基づいて親近性判断がされるという仮説は否定されている[2]。また、系列内の順序判断と系列間の順序判断には別のメカニズムが働くことが示唆されている[2]。刺激系列中の初期に呈示された刺激と最後に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。また、初期に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とがある。 

記憶干渉

 刺激系列中の初期に呈示された刺激と最後に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。これが短期記憶における系列位置効果である。また、初期に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とがある。以前の経験からの影響を制御することで正しい親近性判断が可能となるので、順向干渉を検討する手段として親近性判断が用いられる。ただし、親近性判断に影響するのは記憶干渉だけでなく、刺激の弁別性も大きいと考えられる。

神経基盤

 単なる再認とは異なることが脳画像研究から[3]損傷研究[4]からも知られており、より情報を特定する必要がある。情報源(ソース)や詳細の想起と同様に、前頭葉-頭頂葉のネットワークが関係している。また、刺激と結びついた時間順序情報を想起するのに海馬が関わっていると考えられている。

参考文献

  1. Friedman, W.J.
    Memory for the time of past events. Psychol Bull, 113, 44-66.:1993
  2. 2.0 2.1 Hintzman, D.L. (2005).
    Memory strength and recency judgments. Psychonomic bulletin & review, 12(5), 858-64. [PubMed:16524002] [WorldCat]
  3. Konishi, S., Uchida, I., Okuaki, T., Machida, T., Shirouzu, I., & Miyashita, Y. (2002).
    Neural correlates of recency judgment. The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience, 22(21), 9549-55. [PubMed:12417679] [PMC] [WorldCat]
  4. Kopelman, M.D., Stanhope, N., & Kingsley, D. (1997).
    Temporal and spatial context memory in patients with focal frontal, temporal lobe, and diencephalic lesions. Neuropsychologia, 35(12), 1533-45. [PubMed:9460723] [WorldCat] [DOI]


(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)