渡辺 拓也、二井 健介
マサチューセッツ州立大学 メディカルスクール
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年6月4日 原稿完成日:2013年6月xx日
担当編集委員:林 康紀(独立行政法人理化学研究所)
英語名:neurexin 英略称:NRXN
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Neurexin 2 | |||||||||||||
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Identifiers | |||||||||||||
Symbols | NRXN2; FLJ40892; KIAA0921 | ||||||||||||
External IDs | OMIM: 600566 MGI: 1096362 HomoloGene: 86984 GeneCards: NRXN2 Gene | ||||||||||||
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RNA expression pattern | |||||||||||||
More reference expression data | |||||||||||||
Orthologs | |||||||||||||
Species | Human | Mouse | |||||||||||
Entrez | 9379 | 18190 | |||||||||||
Ensembl | ENSG00000110076 | ENSMUSG00000033768 | |||||||||||
UniProt | P58401 | E9PUM9 | |||||||||||
RefSeq (mRNA) | NM_015080 | NM_001205234 | |||||||||||
RefSeq (protein) | NP_055895 | NP_001192163 | |||||||||||
Location (UCSC) |
Chr 11: 64.37 – 64.49 Mb |
Chr 19: 6.42 – 6.54 Mb | |||||||||||
PubMed search | [3] | [4] | |||||||||||
Neurexin 3 | |||||||||||||
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Identifiers | |||||||||||||
Symbols | NRXN3; C14orf60 | ||||||||||||
External IDs | OMIM: 600567 MGI: 1096389 HomoloGene: 88711 GeneCards: NRXN3 Gene | ||||||||||||
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RNA expression pattern | |||||||||||||
More reference expression data | |||||||||||||
Orthologs | |||||||||||||
Species | Human | Mouse | |||||||||||
Entrez | 9369 | 18191 | |||||||||||
Ensembl | ENSG00000021645 | ENSMUSG00000066392 | |||||||||||
UniProt | Q9HDB5 | n/a | |||||||||||
RefSeq (mRNA) | NM_001105250 | NM_172544 | |||||||||||
RefSeq (protein) | NP_001098720 | NP_766132 | |||||||||||
Location (UCSC) |
Chr 14: 78.71 – 80.33 Mb |
Chr 12: 89.31 – 90.74 Mb | |||||||||||
PubMed search | [5] | [6] | |||||||||||
ニューレキシンはシナプス前末端(presynapse,presynaptic terminal)に存在する1回膜貫通型タンパク質であり、シナプス後部(postsynapse)の膜タンパク質であるニューロリギン(Neuroligin: NLGN)とシナプス間隙で結合し、シナプス構築や神経伝達物質の放出機構などに関わっている[1]。多くのスプライス変異体が存在し、グルタミン酸作動性・GABA作動性神経シナプスの構築の選別に影響すると考えられている[2] [3]。また、自閉症や統合失調症の発症に関与していると考えられている[4] [5] [6] [7] [8] [9] 。
主な結合タンパク質であるニューロリギンも参照のこと。
歴史
ニューレキシンが最初にクロゴケグモの毒成分であるα-latrotoxinの受容体として発見され、その後、他のニューレキシンが同定された[12]。
構造
哺乳類ではNRXNは3つの遺伝子(NRXN1、2、3)から成り、プロモーターの違いから、長鎖のαNRXN(上流プロモーター)、短鎖のβNRXN(下流プロモーター)の2つのアイソフォームに転写される。従って、3つのαNRXN(1α、2α、3α)と3つのβNRXN(1β、2β、3β)からなる。さらに、αNRXNは選択的スプライシング部位を5つ[alternative splice site (SS)1から5]、βNRXNは2つ(SS4と5)有しており、3000以上のスプライス変異体が存在する(PMID: 16794786, 18923512, 20510934, 12036300)。NRXNの選択的スプライシングは神経活動によって、調節されている(PMID: 22196734)。αNRXNは細胞外側に6つのLNSドメイン[laminin, Neurexin, sex-hormone binding protein (LNS)ドメインまたはLaminin G ドメイン]とLNSドメインを隔てる3つのEGF様ドメイン(epidermal growth factor-like ドメイン)を有している。一方、βNRXNのLNSドメインは一つである。両NRXNの細胞内C末端領域にはPDZドメイン[postsynaptic density (PSD) -95/ discs large/ zona-occludens-1ドメイン]を有する(PMID: 17275284, 16794786)(図1)。βNRXN の細胞外構造およびβNRXNとNLGN複合体の3次元構造が明らかとなっている[13]、(動画)。
ショウジョウバエや線虫、ミツバチ、アメフラシなどの無脊椎動物においてもαNRXN遺伝子が同定されている(PMID: 1203630, 18974885, 21555073)。また、線虫ではβNRXNも同定されている(PMID: 21055481)。
結合タンパク質
細胞外ドメインを介した結合タンパク質:これまでに5つのタンパク質 [NLGN、dystroglycan、neurexophilins、Leucine-rich repeat transmembrane neuronal proteins (LRRTMs)、Cbln]が同定されている(PMID: 7695896,11470830,8699246, 20064387,20064388,20537373, 21410790)。NLGNとの結合において、NRXNのスプライス変異体は、細胞間の認識や接着ならびにシナプス構築などの過程に重要な役割を有していることが示されており、現在までにSS4の挿入の有無が結合選択性に影響することが報告されている(ニューロリギン:DOI XXXX, 参照のこと)。
βNRXN1(4-)(SS4非挿入体)は、splicing site B(SSB)の挿入の有無に関わらずNLGN1[NL1(-), NL1A, NL1B, NL1AB]ならびにNLGN2[NL2(-)とNL2A]と高親和性に結合するが、βNRXN1(4+)(SS4挿入体)のSSB挿入体NLGN1(NL1B, NL1AB)との結合親和性は低い(表1)(PMID: 16242404,18812509,16846852, 16624946)。一方、αNRXNはSS4の有無に関わらずNLGN1-SSB挿入体とは結合しないが(PMID: 16242404)、αNRXNのLNS6ドメインのみではNLGN1-SSB挿入体と結合する(PMID: 18812509)。LRRTMsは、α-,βNRXN(4-)とのみ結合する(PMID: 20519524)。Cbln1とCbln2はα-,βNRXN(4+)と結合するが、NRXN(4-)とは結合しない(PMID: 21410790)。
Dystroglycanはα-、βNRXNとスプライス変異体依存的に結合する(PMID: 11470830)。また、neurexophilinはαNRXNとスプライス変異体非依存的に結合する(PMID: 8699246,9856994)。
細胞内ドメインを介した結合タンパク質:細胞内C末端領域のPDZドメインを介し、シナプトタグミン(synaptotagmin)(PMID: 8439414)やCASK(PMID: 8786425)などのシナプス前末端局在タンパク質と結合している。
発現
NRXNは脳に高レベルで発現しており、海馬においては細胞種の違いによって異なるアイソフォームの発現が認められている(例えば、海馬CA1錐体細胞と歯状回顆粒細胞ではNRXN3αの発現が認められないのに対して、介在細胞ではNRXN3αが高発現している)(PMID: 7695896)。また、脳以外の臓器にも発現しており、NRXN1(α, β)と3(α, β)のmRNAは心臓、肺、腎臓、胎盤にも発現している(PMID: 21048075, 12379233)。また、血管においてもNRXNの発現が認められている(PMID: 19926856)。
機能
神経
NRXNは主にシナプス前末端に局在し、シナプス後部に局在する結合タンパク質との相互作用によりグルタミン酸作動性(興奮性)およびGABA作動性(抑制性)シナプスの形成・成熟・機能を制御していると考えられている。NRXNを強制発現させた株化細胞と初代培養神経細胞を共培養することにより、NRXNがシナプス後部の分化に果たす役割が明らかになっている。非神経細胞へのβNRXN強制発現は、共培養した神経細胞上の抑制性、興奮性シナプス後部の分化を誘導する。一方、αNRXNの強制発現は抑制性シナプス後部の分化を誘導する(PMID: 15620359, 18006501, 15837930, 16846852)。βNRXN(4+)は、興奮性シナプス後部タンパク質であるNLGN 1/3/4とPSD95のクラスター形成能を低下させるが、抑制性シナプス後部タンパク質であるNLGN2とgephyrinのクラスター形成能には影響しない(PMID:16624946)。このことから、βNRXN のSS4挿入の有無は、興奮性・抑制性神経シナプスの構築の選別に影響すると考えられている。
NRXNとNLGNをシナプス前・後細胞にそれぞれ強制発現させた機能解析により、αNRXN1とNLGN2は機能的抑制性シナプス形成に重要であるが、βNRXN1とNLGN2の組み合わせは重要ではないことが示唆されている(PMID: 23426688)。
以上より、特異的なNRXNとNLGNの結合の組み合わせが興奮性、抑制性シナプスの仕分けに重要であると考えられている。また、NLGNノックアウトとノックインマウスの解析により、抑制性シナプス前細胞の種類に依存して抑制性シナプスの機能異常が見られることが明らかになっている(PMID: 19889999,23583622)。これは抑制性細胞の種類によって、発現又は機能しているNRXNアイソフォームが異なることを示唆している。
LRRTMはα-, βNRXN(4-)と結合し、興奮性シナプス形成を制御している(PMID: 20064387)。
αNRXNはCa2+チャネルと共にシナプス伝達物質放出機構を調節することが示唆されている(PMID: 12827191)。
血管
βNRXNに対する抗体の血管への付加は、血管新生を抑制する。また、ノルアドレナリン誘導血管収縮も減弱させており、血管平滑筋のβNRXNはCa2+チャネル調節因子として血管緊張調整に関与しているようである。(PMID: 19926856, 21394644)。αNRXNの細胞外ドメインの類似断片は、受容体型チロシンキナーゼTie2を介して血管新生を促進する(PMID:23485462)。
腎臓
NRXNは、糸球体足細胞によって得られるスリット膜に発現しており、スリット膜の構成タンパク質であるCD2APと結合している。スリット膜は、糸球体におけるタンパク質通過防止機能を有しており、NRXNはタンパク質尿のバリアー機能に関与すると考えられている(PMID: 21048075)。
NRXN類似タンパク質
CASPRs(contactin-associated proteins: NRXN4としても知られている)はαNRXNと類似の構造を有するが、αNRXNには無い細胞外ドメインを有している。NRXNの様に細胞接着分子として機能している(PMID: 9786343)。また、CASPR1はAMPA型グルタミン酸受容体の輸送を調節することが報告されている(PMID: 22223644)。また、CASPR2の遺伝子変異は自閉症と関連していると考えられている(PMID: 22365836)。
疾患との関連
自閉症
患者の中にはNRXN1と2に変異[missense mutation (PMID: 17034946), truncating mutation (PMID:21424692), SNP (PMID: 22405623)]を有するものがいる。
統合失調症
NRXN1での変異 [truncating mutation (PMID: 21424692)、コピー数多型(PMID: 19880096、21477380)] が統合失調症患者で発見されている。
遺伝子改変マウス
αNRXN1 knockoutマウス
統合失調症患者で認められるPrepulse inhibitionの低下を示す。海馬において興奮性シナプス伝達障害が認められるが、抑制性シナプス伝達障害はない(PMID: 19822762)。αNRXN1 ヘテロKOマウスは、新規環境に対する反応性の増加を示し、特に雄性マウスにおいてその行動が認められる(PMID: 22348092)。
αNRXN triple Knockoutマウス
呼吸器系に障害が認められる。KOマウスはGABA作動性神経終末の数を減少させるが、グルタミン酸作動性神経終末には変化を示さない。さらに、KOマウスはCa2+チャネルの機能低下が原因となり、神経伝達物質放出の障害を示すことが報告されている。(PMID: 12827191)
参考文献
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