「コンドロイチン硫酸プロテオグリカン」の版間の差分

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 発生過程の神経細胞は軸索を伸長させ正確な回路網を形成する。神経回路形成においてはガイダンス因子とそのレセプターの作用が正確な神経軸索路の形成をみちびくことがしられている。軸索が神経系の様々な地点で経路を選択する際にコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)は軸索ガイダンス因子としてやその調節因子として働くことが知られている(Ichijo, 2004; Holt and Dickson, 2005; Carulli et al., 2005)。CSPGはコアタンパク質とコンドロイチン硫酸(CS)という糖鎖からなるハイブリッド分子である。CSPGの機能はCSに由来した性質と、コアタンパクに由来するものに分けて考えることができる。コアタンパクの機能は、分子間相互作用を介して細胞外マトリックスを構成する。CSPGとCSの一般的な事柄やその生化学については "Glycoforum" (http://www.glycoforum.gr.jp/indexJ.html) の詳しい解説が役立つ。  
 発生過程の神経細胞は軸索を伸長させ正確な回路網を形成する。神経回路形成においてはガイダンス因子とそのレセプターの作用が正確な神経軸索路の形成をみちびくことがしられている。軸索が神経系の様々な地点で経路を選択する際にコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)は軸索ガイダンス因子としてやその調節因子として働くことが知られている(Ichijo, 2004; Holt and Dickson, 2005; Carulli et al., 2005)。CSPGはコアタンパク質とコンドロイチン硫酸(CS)という糖鎖からなるハイブリッド分子である。CSPGの機能はCSに由来した性質と、コアタンパクに由来するものに分けて考えることができる。コアタンパクの機能は、分子間相互作用を介して細胞外マトリックスを構成する。CSPGとCSの一般的な事柄やその生化学については "Glycoforum" (http://www.glycoforum.gr.jp/indexJ.html) の詳しい解説が役立つ。  


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 CSのユニット組成の違いが神経突起の伸長や、大脳皮質の層形成に異なった効果を有することが報告されているが、どの様なレベルの構造多様性がどの様に神経細胞の振る舞いに影響を与えているかという機構については不明の点が多い。近年の研究は細胞が特定のCSの構造を識別していることを示唆している(Clement et al., 1998; Nadanaka et al., 1998; Oohira et al., 2000; Ueoka et al., 2000; Gilbert et al., 2005; Properzi et al., 2005)。CS結合タンパク質が8糖(4 units)や10糖(5 units)の長さにわたる特定のユニット配列を特異的に認識することが報告されており、従来に想定されていたようなCS鎖全体の長さや負の荷電量が非特異的に影響を与えているのではないと考えられるようになった(Blanchard et al., 2007; Deepa et al., 2007a; Deepa et al., 2007b; Pothacharoen et al., 2007; Numakura et al., 2010)。これらの報告は細胞表面のCSの構造多様性を認識する受容体の探索という分野を導くこととなった。近年報告されたtransmembrane protein tyrosine phosphatase (PTPσ)とcontactin-1はCS特異的な受容体の候補分子として注目を集めている(Mikami et al., 2009; Shen et al., 2009; Coles et al., 2011)。  
 CSのユニット組成の違いが神経突起の伸長や、大脳皮質の層形成に異なった効果を有することが報告されているが、どの様なレベルの構造多様性がどの様に神経細胞の振る舞いに影響を与えているかという機構については不明の点が多い。近年の研究は細胞が特定のCSの構造を識別していることを示唆している(Clement et al., 1998; Nadanaka et al., 1998; Oohira et al., 2000; Ueoka et al., 2000; Gilbert et al., 2005; Properzi et al., 2005)。CS結合タンパク質が8糖(4 units)や10糖(5 units)の長さにわたる特定のユニット配列を特異的に認識することが報告されており、従来に想定されていたようなCS鎖全体の長さや負の荷電量が非特異的に影響を与えているのではないと考えられるようになった(Blanchard et al., 2007; Deepa et al., 2007a; Deepa et al., 2007b; Pothacharoen et al., 2007; Numakura et al., 2010)。これらの報告は細胞表面のCSの構造多様性を認識する受容体の探索という分野を導くこととなった。近年報告されたtransmembrane protein tyrosine phosphatase (PTPσ)とcontactin-1はCS特異的な受容体の候補分子として注目を集めている(Mikami et al., 2009; Shen et al., 2009; Coles et al., 2011)。  


[[Image:CSunits.002.jpg|thumb|500px|'''図1''']]
== 参考文献 ==




(執筆者:一條裕之 担当編集委員:大隅典子)
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