「ゾーン構造」の版間の差分

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=== <br>副嗅球におけるゾーン構造  ===
=== <br>副嗅球におけるゾーン構造  ===


 鋤鼻上皮上で異なるゾーンに位置するV1R鋤鼻神経、V2R鋤鼻神経は、副嗅球の異なるゾーンに投射することが知られている。V1R鋤鼻神経はGi2αを、V2R鋤鼻神経はGoαを共発現するが、鋤鼻神経の投射先である副嗅球でその発現を調べると、副嗅球前方部(rostral zone)はGi2α陽性の鋤鼻神経が、副嗅球後方部(caudal zone)にはGoα陽性鋤鼻神経が軸索投射することが明らかになった。これはV1R鋤鼻神経は、鋤鼻上皮apical zoneから副嗅球rostral zoneへ、V2R鋤鼻神経は鋤鼻上皮basal zoneから副嗅球caudal zoneへ、zone-to-zone projectionすることを表している。実際、個々のV1RやV2Rにレポーター遺伝子を発現させ、それぞれの受容体を発現する鋤鼻神経の投射パターンを調べると、V1R発現細胞は副嗅球rostral zoneのいくつかの糸球に、V2R発現細胞ではcaudal zoneのいくつかの糸球に軸索投射する様子があきらかになった(Belluscio et al 1999)。このゾーン選択的な軸索投射を反映して、V1Rと共発現するOCAMの発現パターンとしても副嗅球におけるゾーン構造を観察することができる(Yoshihara and Mori 1997)(図2)。 <br>  
 鋤鼻上皮上で異なるゾーンに位置するV1R鋤鼻神経、V2R鋤鼻神経は、副嗅球の異なるゾーンに投射することが知られている。V1R鋤鼻神経はGi2αを、V2R鋤鼻神経はGoαを共発現するが、鋤鼻神経の投射先である副嗅球でその発現を調べると、副嗅球前方部(rostral zone)はGi2α陽性の鋤鼻神経が、副嗅球後方部(caudal zone)にはGoα陽性鋤鼻神経が軸索投射することが明らかになった。これはV1R鋤鼻神経は、鋤鼻上皮apical zoneから副嗅球rostral zoneへ、V2R鋤鼻神経は鋤鼻上皮basal zoneから副嗅球caudal zoneへ、zone-to-zone projectionすることを表している。実際、個々のV1RやV2Rにレポーター遺伝子を発現させ、それぞれの受容体を発現する鋤鼻神経の投射パターンを調べると、V1R発現細胞は副嗅球rostral zoneのいくつかの糸球に、V2R発現細胞ではcaudal zoneのいくつかの糸球に軸索投射する様子が観察される(Belluscio et al 1999)。このゾーン選択的な軸索投射を反映して、V1Rと共発現するOCAMの発現も鋤鼻上皮apical zoneと副嗅球rostral zoneに限局している(Yoshihara and Mori 1997)(図2)。 <br>  


=== <br>副嗅覚系におけるゾーン構造の機能  ===
=== <br>副嗅覚系におけるゾーン構造の機能  ===
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=== 小脳におけるゾーン構造  ===
=== 小脳におけるゾーン構造  ===


 哺乳類の[[小脳]]において、小脳皮質プルキンエ細胞はオリーブ核より軸索入力を受け、小脳核へ軸索投射する。小脳皮質は正中線に沿って内側部が虫部、外側部が半球、虫部と半球に挟まれた領域を中間部と前後軸に伸びる帯状の領域に分類される。小脳核は内側より室頂核(内側核)、中位核、歯状核(外側核)と分けられるが、小脳皮質虫部は室頂核へ、中間部は中位核へ、半球部は外側核へ選択的に投射することが明らかになり、小脳は前後軸に広がる3つのゾーンに機能分化することが示唆されていた()。  
 哺乳類の[[小脳]]において、小脳皮質プルキンエ細胞はオリーブ核より軸索入力を受け、小脳核へ軸索投射する。小脳皮質は正中線に沿って内側部が虫部、外側部が半球、虫部と半球に挟まれた領域を中間部と前後軸に伸びる帯状の領域に分類される。小脳核は内側より室頂核(内側核)、中位核、歯状核(外側核)と分けられるが、小脳皮質虫部は室頂核へ、中間部は中位核へ、半球部は外側核へ選択的に投射することが明らかになり、小脳は前後軸に広がる3つのゾーンに機能分化することが示唆されていた()。


 1960年代に入り、小脳皮質へ登上線維を送り出すオリーブ核の亜領域と、出力先である小脳皮質の亜領域の詳細な検討がなされた。小脳皮質の微小電気刺激によるオリーブ核での逆行性応答のマッピング、そして各種トレーサーによる登上線維マッピングにより、左右の小脳皮質はそれぞれ前後軸に沿って伸びる少なくともA,B,C1,C2,C3,D1,D2の7つのゾーン('''longitudinal zones''')が存在するモデルが提唱された。現在では入力領域のさらなる差別化、そして小脳核への出力パターンを組み合わせることで、A,AX,X, B, A2, C1, CX, C2, C3, D1, D0, D2の12のゾーンが小脳皮質にあると考えられている(Apps and Hawkes 2009)(図3)。これらのゾーン構造のうち、BゾーンやC3ゾーンでは「マイクロゾーン」と呼ばれる100~300μm幅と、通常のゾーン構造の幅(~1mm)より更に細かなゾーン構造が見いだされている()。しかしながら、マイクロゾーンが全てのlongitudinal zoneに存在するかはまだ不明でありこれからの研究が俟たれる。  
 1960年代に入り、小脳皮質へ登上線維を送り出すオリーブ核の亜領域と、出力先である小脳皮質の亜領域の詳細な検討がなされた。小脳皮質の微小電気刺激によるオリーブ核での逆行性応答のマッピング、そして各種トレーサーによる登上線維マッピングにより、左右の小脳皮質はそれぞれ前後軸に沿って伸びる少なくともA,B,C1,C2,C3,D1,D2の7つのゾーン('''longitudinal zones''')が存在するモデルが提唱された。現在では入力領域のさらなる差別化、そして小脳核への出力パターンを組み合わせることで、A,AX,X, B, A2, C1, CX, C2, C3, D1, D0, D2の12のゾーンが小脳皮質にあると考えられている(Apps and Hawkes 2009)(図3)。これらのゾーン構造のうち、BゾーンやC3ゾーンでは「マイクロゾーン」と呼ばれる100~300μm幅と、通常のゾーン構造の幅(~1mm)より更に細かなゾーン構造が見いだされている()。しかしながら、マイクロゾーンが全てのlongitudinal zoneに存在するかはまだ不明でありこれからの研究が俟たれる。  
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== 参考文献&nbsp;  ==
== 参考文献&nbsp;  ==


Apps and Hawkes 2009 PMID=19693030
Apps and Hawkes 2009 PMID=19693030  


Belluscio et al 1999 PMID=10219242<br>Berghard and Buck 1996 PMID=8558259<br>Brochu et al 1990 PMID=2329190  
Belluscio et al 1999 PMID=10219242<br>Berghard and Buck 1996 PMID=8558259<br>Brochu et al 1990 PMID=2329190  
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