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前頭前野は不必要な反応や不適切な反応を抑制したり、必要に応じて適切な反応に切り替えたりすることに重要な役割を果たしている。 | 前頭前野は不必要な反応や不適切な反応を抑制したり、必要に応じて適切な反応に切り替えたりすることに重要な役割を果たしている。 | ||
[[ゴー・ノーゴー課題]]go-no go | [[ゴー・ノーゴー課題]] (go-no go task)ではある刺激に一定の運動反応(ゴー反応)をし,別の刺激には運動反応を一切しないようにする(ノーゴー反応)ことが要求される。前頭前野に損傷のある患者は,ノーゴー反応が求められても,運動反応をしないように抑制することが困難である。ヒトの非侵襲的研究では、ノーゴーという行動抑制に関係して前頭前野外側部の特に下部で活性化が見られる。サルの前頭前野にも、ノーゴー反応が要求されたときに選択的に活動を示すニューロンが多数見出される。 | ||
おいしいものが目の前にあれば飲んだり、食べたりしたくなるもの(短期的欲求)であるが、それは肥満や生活習慣病にもつながることから、健康を考え(長期的欲求)、飲んだり食べたりするのをがまんすることを[[セルフコントロール]]self | おいしいものが目の前にあれば飲んだり、食べたりしたくなるもの(短期的欲求)であるが、それは肥満や生活習慣病にもつながることから、健康を考え(長期的欲求)、飲んだり食べたりするのをがまんすることを[[セルフコントロール]] (self control)と呼ぶ。少しだけ働いて当面のわずかな収入を得る(短期的欲求)のではなく、将来の多くの収入(長期的目標)を目標に収入がほとんどない状態を耐える、ということが出来るのもセルフコントロール能力である。前頭前野はこのセルフコントロールにも重要な役割を果たしており、損傷患者は長期的利益より短期的利益を優先する傾向にある。ヒトの非侵襲的研究においては、セルフコントロールに関係して前頭前野の外側部の活性化が見られている。また、この部位を[[磁気刺激]]して活動を抑制すると、セルフコントロール行動が阻害されることも示されている。さらに、[[wikipedia:ja:サル|サル]]に課題を訓練してニューロン活動を記録した研究によると、外側部ニューロンがセルフコントロールを担う活動をすることが示されている。 | ||
前頭前野損傷患者はまた,反応基準の切り替えset shiftingを要求される事態で障害を示す。反応基準の切り替えに関係して最もよく用いられる課題に[[ウィスコンシン・カード分類課題]]Wisconsin card sorting | 前頭前野損傷患者はまた,反応基準の切り替えset shiftingを要求される事態で障害を示す。反応基準の切り替えに関係して最もよく用いられる課題に[[ウィスコンシン・カード分類課題]] (Wisconsin card sorting task; WCST)がある。これは、図2のように色(赤、緑、黄、青)、形(三角、星、十字、丸)、数(1、2、3、4)がそれぞれ違う128枚のカードを、被験者に「色」か「形」か「数」のどれか1つを基準に分類していくことを求めるものである。被験者は分類の基準については教えられない。正答が6回続くと、被験者に知らせることなく突然分類の基準が変えられるので、被験者はフィードバックに従って新しい分類基準を見出し、それに基づいて反応しなければならない。 | ||
前頭前野に損傷のある患者は、分類の基準が変わっても、いつまでも前の基準に固執する傾向を示す。この課題遂行の上で最も重要な「分類基準の切り替え」には「左側」前頭前野外側部の下方後ろよりが重要な役割を持つとされる。なお、特に基準が変わった後に、以前の基準に基づく反応を抑制する上では、前頭極の重要性が指摘されている。また、サルにこの課題の簡易版を訓練して前頭前野のニューロン活動を記録した研究によると、現在の分類基準を保持する、それぞれの分類基準に基づく反応が正しかったか誤っていたのかを捉える、という活動を見出されている。 | 前頭前野に損傷のある患者は、分類の基準が変わっても、いつまでも前の基準に固執する傾向を示す。この課題遂行の上で最も重要な「分類基準の切り替え」には「左側」前頭前野外側部の下方後ろよりが重要な役割を持つとされる。なお、特に基準が変わった後に、以前の基準に基づく反応を抑制する上では、前頭極の重要性が指摘されている。また、サルにこの課題の簡易版を訓練して前頭前野のニューロン活動を記録した研究によると、現在の分類基準を保持する、それぞれの分類基準に基づく反応が正しかったか誤っていたのかを捉える、という活動を見出されている。 | ||
== 前頭前野とトップダウン信号 == | == 前頭前野とトップダウン信号 == |