「視覚運動性眼振」の版間の差分

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[[Image:図2 OKN.jpg|thumb|250px|'''図2.OKRのゲインの適応'''<br>(A)OKRの短期と長期のゲインの適応。マウスに1日1時間の周期0.16Hz、振幅15度の正弦波状スクリーンの回転によるトレーニングを連続して5日間行ったときのOKRのゲインの変化。○は毎日のトレーニングの前のゲイン、●は1時間のトレーニング後のゲイン。トレーニング時以外はマウスを暗所飼育した。5日間のトレーニング後、マウスを通常の飼育(明、12時間;暗、12時間)に戻し、OKRのゲインの回復を2週間ほど調べた。右は、同じマウスの1日目と3, 4、6日目のOKRの平均とレース。**, P &lt; 0.01; *, P &lt;0.1 (paired t-test).(B)小脳片葉によるOKRの適応制御機構。適応の短期の記憶痕跡は小脳片葉に形成されるが、長期の記憶は前庭神経核に保持される。<ref name=ref7 />を改変。]]  
[[Image:図2 OKN.jpg|thumb|250px|'''図2.OKRのゲインの適応'''<br>(A)OKRの短期と長期のゲインの適応。マウスに1日1時間の周期0.16Hz、振幅15度の正弦波状スクリーンの回転によるトレーニングを連続して5日間行ったときのOKRのゲインの変化。○は毎日のトレーニングの前のゲイン、●は1時間のトレーニング後のゲイン。トレーニング時以外はマウスを暗所飼育した。5日間のトレーニング後、マウスを通常の飼育(明、12時間;暗、12時間)に戻し、OKRのゲインの回復を2週間ほど調べた。右は、同じマウスの1日目と3, 4、6日目のOKRの平均とレース。**, P &lt; 0.01; *, P &lt;0.1 (paired t-test).(B)小脳片葉によるOKRの適応制御機構。適応の短期の記憶痕跡は小脳片葉に形成されるが、長期の記憶は前庭神経核に保持される。<ref name=ref7 />を改変。]]  


== 視運動性眼振と視機性眼球反応 ==
== 視覚運動性眼振と視機性眼球反応 ==


 前庭や視覚の機能の検査に、ドラム状の縞模様のスクリーンを定加速度かつ定方向にまわすことで誘発される視運動性眼振 (OKN) (タイトルは視覚運動性眼振になっております。どちらかに統一を御願い致します)が用いられる。OKNは、1820年に、小脳のプルキンエ細胞の命名者である[[wikipedia:Jan Evangelista Purkyně|J. E. Purkinje]] (1787-1869) によって初めて記載された。図3AにウサギとヒトのOKNの例を示す。  
 前庭や視覚の機能の検査に、ドラム状の縞模様のスクリーンを定加速度かつ定方向にまわすことで誘発される視覚運動性眼振 (OKN) (タイトルは視覚運動性眼振になっております。どちらかに統一を御願い致します)が用いられる。OKNは、1820年に、小脳のプルキンエ細胞の命名者である[[wikipedia:Jan Evangelista Purkyně|J. E. Purkinje]] (1787-1869) によって初めて記載された。図3AにウサギとヒトのOKNの例を示す。  


 OKNでは、遅い眼球運動と速い眼球運動が規則的に繰り返される。遅い眼球運動は、OKRと同じくスクリーンの回転と同方向に生じ、緩徐相(slow phase)と呼ばれる。一方、スクリーンの回転と逆方向に生じる速い眼球運動は、急速相(fast phase)と呼ばれる。ウサギでは、スクリーンの回転開始からかなり遅れてOKNの緩徐相が出現し、やがて一定速度に達する。その速度はスクリーンの速度に比べてかなり小さい。一方、ヒトやサルでは、緩徐相はスクリーンが回転を始めると急速に立ち上がり、そのあと数秒かけて徐々に増加しやがてスクリーンの回転速度にほぼ等しくなる。一方、OKNの緩徐相がスクリーンの回転速度に達した段階でスクリーンの回転を止めてまっ暗にすると、視運動性後眼振(optokinetic after nystagmus, OKAN) が生じる(図3B)。ヒトやサルのOKANの緩徐相の速度とその減衰の時間経過は、ウサギのOKANの緩徐相のそれらに似ている 。一方、ウサギで観察されるOKNの緩徐相には、サルやヒトで見られる速い立ち上がりの成分はなく、OKANの緩徐相と同じような遅い成分しかない。そこで、ヒトやサルのOKNの緩徐相のうちの数秒の時間経過で立ち上がる遅い部分とOKANの緩徐相が、OKRによるものと考えられる。ヒトやサルのOKNの緩徐相の立ち上がりの速い成分はOKRではなく、むしろに随意運動の滑動性追跡眼球運動に由来すると考えられる(図3C)。サルでは両側の[[前庭器官]]を破壊するとOKANが完全に消失し、ヒトでも両側の[[迷路]]障害でOKANが障害される。ヒトで網膜の中心部の損傷により滑動性追跡眼球運動が障害されても、遅い成分のOKNは誘発される。これらの所見は、ヒトやサルの立ち上がりの遅いOKNの緩徐相 = OKANの緩徐相 = OKRという考え方を支持する<ref name="ref10">'''時田喬'''<br>眼振の生理と検査<br>''金原出版'', 東京, 1973.</ref>。  
 OKNでは、遅い眼球運動と速い眼球運動が規則的に繰り返される。遅い眼球運動は、OKRと同じくスクリーンの回転と同方向に生じ、緩徐相(slow phase)と呼ばれる。一方、スクリーンの回転と逆方向に生じる速い眼球運動は、急速相(fast phase)と呼ばれる。ウサギでは、スクリーンの回転開始からかなり遅れてOKNの緩徐相が出現し、やがて一定速度に達する。その速度はスクリーンの速度に比べてかなり小さい。一方、ヒトやサルでは、緩徐相はスクリーンが回転を始めると急速に立ち上がり、そのあと数秒かけて徐々に増加しやがてスクリーンの回転速度にほぼ等しくなる。一方、OKNの緩徐相がスクリーンの回転速度に達した段階でスクリーンの回転を止めてまっ暗にすると、視運動性後眼振(optokinetic after nystagmus, OKAN) が生じる(図3B)。ヒトやサルのOKANの緩徐相の速度とその減衰の時間経過は、ウサギのOKANの緩徐相のそれらに似ている 。一方、ウサギで観察されるOKNの緩徐相には、サルやヒトで見られる速い立ち上がりの成分はなく、OKANの緩徐相と同じような遅い成分しかない。そこで、ヒトやサルのOKNの緩徐相のうちの数秒の時間経過で立ち上がる遅い部分とOKANの緩徐相が、OKRによるものと考えられる。ヒトやサルのOKNの緩徐相の立ち上がりの速い成分はOKRではなく、むしろに随意運動の滑動性追跡眼球運動に由来すると考えられる(図3C)。サルでは両側の[[前庭器官]]を破壊するとOKANが完全に消失し、ヒトでも両側の[[迷路]]障害でOKANが障害される。ヒトで網膜の中心部の損傷により滑動性追跡眼球運動が障害されても、遅い成分のOKNは誘発される。これらの所見は、ヒトやサルの立ち上がりの遅いOKNの緩徐相 = OKANの緩徐相 = OKRという考え方を支持する<ref name="ref10">'''時田喬'''<br>眼振の生理と検査<br>''金原出版'', 東京, 1973.</ref>。  
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