「視床下核」の版間の差分

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== 大脳基底核疾患との関連  ==
== 大脳基底核疾患との関連  ==


直接路・間接路モデルが広く受け入れられた理由として、大脳基底核疾患の病態が、直接路と間接路のバランスの崩れで説明できることにあった<ref name=ref4 />。パーキンソン病の際には、線条体におけるドーパミンの枯渇により、直接路ニューロンの活動性低下、間接路ニューロンの活動性亢進が想定され、それに伴って、淡蒼球内節の活動性亢進、淡蒼球外節の活動性低下、視床下核の活動性亢進が観察された<ref><pubmed>Miller WC, DeLong MR: Altered tonic activity of neurons in the globus pallidus and subthalamic nucleus in the primate MPTP model of parkinsonism. In: The Basal Ganglia II: Structure and Function-Current Concepts, ed by Carpenter MB, Jayaraman A, Plenum, New York, 1986, pp. 415-427</pubmed></ref>。さらに直接路・間接路モデルによると、活動性が亢進した視床下核を破壊すれば、パーキンソン病の症状が改善するはずであり、実際、動物実験で行ったところ、症状が軽減された<ref><pubmed>2402638</pubmed></ref>。これらが根拠となり、今日のような視床下核をターゲットとした定位脳手術の隆盛を見ることとなった。<br> 実際は、手技上の問題から視床下核を凝固するのではなく、視床下核に電極を挿入し高頻度電気刺激を加える脳深部刺激療法(deep brain stimulation, DBS)を行っている訳であるが<ref><pubmed>Benabid AL, Mitrofanis J, Chabardes S et al: Subthalamic nucleus stimulation for Parkinson's disease. In: Textbook of Stereotactic and Functional Neurosurgery, ed by Lozano AM, Gildenberg PL, Tasker RR, Springer, Berlin, 2009, pp. 1603-1630</pubmed></ref>、これが局所の神経活動を抑制しているのか、興奮させているのか、未だに議論があるところである<ref><pubmed>19081243</pubmed></ref>。さらに、当初、直接路と間接路の活動性のアンバランスを支持するデータが多かったが、その後の報告によれば、それほど明確ではなく、最近ではむしろ視床下核で観察される発振現象(β帯域のニューロン発火や局所フィールド電位)が、大脳基底核の情報伝達を阻害することにより、諸症状を引き起こしているのではないかとも考えられている<ref><pubmed>18221864</pubmed></ref>。<br> 一方、DBSの副作用として、情動異常が挙げられる<ref name=ref12 />。DBSは、視床下核の運動領域である背側部をターゲットとしているが、何らかの原因で電気刺激がより腹側部の前頭前野領域や辺縁領域にも及び(図3)、通常は視床下核の活動によって抑制されている情動機能が、DBSによって解放されたためではないかと考えられる。<br>
直接路・間接路モデルが広く受け入れられた理由として、大脳基底核疾患の病態が、直接路と間接路のバランスの崩れで説明できることにあった<ref name=ref4 />。パーキンソン病の際には、線条体におけるドーパミンの枯渇により、直接路ニューロンの活動性低下、間接路ニューロンの活動性亢進が想定され、それに伴って、淡蒼球内節の活動性亢進、淡蒼球外節の活動性低下、視床下核の活動性亢進が観察された<ref>'''W C Miller, M R DeLong'''<br>Altered tonic activity of neurons in the globus pallidus and subthalamic nucleus in the primate MPTP model of parkinsonism. In: The Basal Ganglia II: Structure and Function-Current Concepts, ed by Carpenter MB, Jayaraman A,<br>''Plenum, New York,'' 1986, pp. 415-427</ref>。さらに直接路・間接路モデルによると、活動性が亢進した視床下核を破壊すれば、パーキンソン病の症状が改善するはずであり、実際、動物実験で行ったところ、症状が軽減された<ref><pubmed>2402638</pubmed></ref>。これらが根拠となり、今日のような視床下核をターゲットとした定位脳手術の隆盛を見ることとなった。<br> 実際は、手技上の問題から視床下核を凝固するのではなく、視床下核に電極を挿入し高頻度電気刺激を加える脳深部刺激療法(deep brain stimulation, DBS)を行っている訳であるが<ref>'''AL Benabid, J Mitrofanis, S Chabardes et al.'''<br>Subthalamic nucleus stimulation for Parkinson's disease. In: Textbook of Stereotactic and Functional Neurosurgery, ed by Lozano AM, Gildenberg PL, Tasker RR,<br> ''Springer, Berlin,'' 2009, pp. 1603-1630</ref>、これが局所の神経活動を抑制しているのか、興奮させているのか、未だに議論があるところである<ref><pubmed>19081243</pubmed></ref>。さらに、当初、直接路と間接路の活動性のアンバランスを支持するデータが多かったが、その後の報告によれば、それほど明確ではなく、最近ではむしろ視床下核で観察される発振現象(β帯域のニューロン発火や局所フィールド電位)が、大脳基底核の情報伝達を阻害することにより、諸症状を引き起こしているのではないかとも考えられている<ref><pubmed>18221864</pubmed></ref>。<br> 一方、DBSの副作用として、情動異常が挙げられる<ref name=ref12 />。DBSは、視床下核の運動領域である背側部をターゲットとしているが、何らかの原因で電気刺激がより腹側部の前頭前野領域や辺縁領域にも及び(図3)、通常は視床下核の活動によって抑制されている情動機能が、DBSによって解放されたためではないかと考えられる。<br>


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