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Masanoritachikawa (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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=== 研究動向 === | === 研究動向 === | ||
[[Image:Tachikawa fig 4.jpg|thumb| | [[Image:Tachikawa fig 4.jpg|thumb|400px|図4 血液脳関門における輸送担体のタンパク質発現量の種差 A. ヒトBBBとddyマウスBBBにおけるタンパク質発現量の比較。B. ヒトBBBとカニクイザルBBBにおけるタンパク質発現量の比較。タンパク質発現量は、mean ±S.D.でプロットした。赤字, 薬物トランスポーター; 青, 内因性物質のトランスポーター; 緑, その他。 <ref name="ref2" /><ref name="ref4"><pubmed> 22401960 </pubmed></ref><ref name="ref5"><pubmed> 21254069 </pubmed></ref><ref name="ref6"><pubmed> 21291474 </pubmed></ref>のデータを基に作成)]] | ||
PET, SPECTおよびMRIなどのイメージング技術を利用することによって、ヒトのBBBにおける物質の透過速度やトランスポーターの輸送活性が測定され、ヒトと実験動物の間の違いが定量的に解析されている。合成可能なリガンド数が少ないこと、特定のトランスポーターだけに輸送される物質がほとんどないことから、現在、一部の化合物やトランスポーターを対象とした解析に限られている。一方、寺崎らが開発した「機能性分子のタンパク質絶対定量法(Quantitative Targeted Absolute Proteomics (QTAP)」によって、ヒト、サル、マウスのBBBにおける複数のトランスポーターのタンパク質発現量が解明された(図4)<ref name="ref2" /><ref name="ref4" /><ref name="ref5" /><ref name="ref6" />。これら2つの手法によって、ヒト血液脳関門研究およびヒト-動物間の種差研究は、発現の有無、BBBを透過する・しないなどといった定性的解析から、発現量(mol)、透過速度、輸送速度およびその差などに基づく定量的解析へと大きく舵を切りつつある。 | PET, SPECTおよびMRIなどのイメージング技術を利用することによって、ヒトのBBBにおける物質の透過速度やトランスポーターの輸送活性が測定され、ヒトと実験動物の間の違いが定量的に解析されている。合成可能なリガンド数が少ないこと、特定のトランスポーターだけに輸送される物質がほとんどないことから、現在、一部の化合物やトランスポーターを対象とした解析に限られている。一方、寺崎らが開発した「機能性分子のタンパク質絶対定量法(Quantitative Targeted Absolute Proteomics (QTAP)」によって、ヒト、サル、マウスのBBBにおける複数のトランスポーターのタンパク質発現量が解明された(図4)<ref name="ref2" /><ref name="ref4" /><ref name="ref5" /><ref name="ref6" />。これら2つの手法によって、ヒト血液脳関門研究およびヒト-動物間の種差研究は、発現の有無、BBBを透過する・しないなどといった定性的解析から、発現量(mol)、透過速度、輸送速度およびその差などに基づく定量的解析へと大きく舵を切りつつある。 | ||
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== トランスポーターの輸送活性の再構築法 == | == トランスポーターの輸送活性の再構築法 == | ||
[[Image:Tachikawa fig 5.jpg|thumb| | [[Image:Tachikawa fig 5.jpg|thumb|600px|図5 血液脳関門におけるトランスポーターの輸送活性の再構築 Kp brain ratioは、mdr1a遺伝子欠損マウスにおける脳対血漿中薬物濃度比(Kp brain)を野生型マウスのKp brainで除した値として定義され、in vivoのBBBのmdr1a輸送活性を表す。<ref name="ref8"/>のデータを基に作成)]] | ||
トランスポーターの輸送活性を構成する個々の要素(分子数、1分子あたりの輸送活性)を''in vitro''実験等で解明し、それらのデータを統合することによって''in vivo''のトランスポーターの輸送活性を解析する手法である。イメージング技術と異なり、ヒトにプローブ化合物を投与することなく、ヒトBBBにおけるトランスポーターの輸送活性を解析することが理論的に可能であり、現在、この実現を目指している。理論的に、全てのトランスポーターに適用可能であり、有用な解析手法として期待されている。トランスポーターの輸送活性は、トランスポーター1分子あたりの輸送活性と分子数(タンパク質発現量, mol)の積に分解できる(図5)。従って、トランスポーター1分子あたりの輸送活性を''in vitro''実験によって測定し、ヒト死後脳から単離した脳毛細血管におけるトランスポーターのタンパク質発現量と統合することによって、''in vivo''のヒトBBBにおける輸送活性を再構築できる。この考え方を実証するために、マウスmdr1a発現細胞単層膜で測定したmdr1aの輸送活性をそのmdr1a発現量で除することによってmdr1a 1分子あたりの輸送活性を算出した。これをマウス脳毛細血管におけるmdr1a発現量と統合することによって、BBBのmdr1a輸送活性を再構築した。その結果、異なる輸送活性を示す全11基質について再構築された輸送活性は実測値と良好に一致した(図5)<ref name="ref8" /> 。このように、''in vivo''のBBBにおける輸送活性を再構築できることが実験的に証明されている。この再構築の考え方をヒトに適用し、ヒトのトランスポーターの発現培養細胞における1分子輸送活性およびヒト脳毛細血管における発現量を測定することによって、ヒトBBBにおける種々のトランスポーターの輸送活性を解析できるようになると考えられている。 | トランスポーターの輸送活性を構成する個々の要素(分子数、1分子あたりの輸送活性)を''in vitro''実験等で解明し、それらのデータを統合することによって''in vivo''のトランスポーターの輸送活性を解析する手法である。イメージング技術と異なり、ヒトにプローブ化合物を投与することなく、ヒトBBBにおけるトランスポーターの輸送活性を解析することが理論的に可能であり、現在、この実現を目指している。理論的に、全てのトランスポーターに適用可能であり、有用な解析手法として期待されている。トランスポーターの輸送活性は、トランスポーター1分子あたりの輸送活性と分子数(タンパク質発現量, mol)の積に分解できる(図5)。従って、トランスポーター1分子あたりの輸送活性を''in vitro''実験によって測定し、ヒト死後脳から単離した脳毛細血管におけるトランスポーターのタンパク質発現量と統合することによって、''in vivo''のヒトBBBにおける輸送活性を再構築できる。この考え方を実証するために、マウスmdr1a発現細胞単層膜で測定したmdr1aの輸送活性をそのmdr1a発現量で除することによってmdr1a 1分子あたりの輸送活性を算出した。これをマウス脳毛細血管におけるmdr1a発現量と統合することによって、BBBのmdr1a輸送活性を再構築した。その結果、異なる輸送活性を示す全11基質について再構築された輸送活性は実測値と良好に一致した(図5)<ref name="ref8" /> 。このように、''in vivo''のBBBにおける輸送活性を再構築できることが実験的に証明されている。この再構築の考え方をヒトに適用し、ヒトのトランスポーターの発現培養細胞における1分子輸送活性およびヒト脳毛細血管における発現量を測定することによって、ヒトBBBにおける種々のトランスポーターの輸送活性を解析できるようになると考えられている。 |
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