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=== 強迫症状の内容、臨床像 === | === 強迫症状の内容、臨床像 === | ||
[[Image:強迫性障害 図1.jpg|thumb|350px|'''図1.強迫症状構造(Y-BOCSによる因子構造のメタ解析)'''<br>OCDにおけるsymptom dimension (Bloch et al. 2008 8)<br>点線は、子供のみが関連しているもの]] | [[Image:強迫性障害 図1.jpg|thumb|350px|'''図1.強迫症状構造(Y-BOCSによる因子構造のメタ解析)'''<br>OCDにおけるsymptom dimension (Bloch et al. 2008 8)<br>点線は、子供のみが関連しているもの]] | ||
表1に本邦のOCD患者における強迫症状の内容を出現頻度と伴に示す4)。 | 表1に本邦のOCD患者における強迫症状の内容を出現頻度と伴に示す4)。 | ||
'''表1.日本人によくみられる脅迫症状''' | '''表1.日本人によくみられる脅迫症状''' <ref><pubmed>9718239</pubmed></ref> | ||
{| width="290" cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" | {| width="290" cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" | ||
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強迫症状の内容な多彩であるが、強迫観念では、汚染の心配や、「運転中に誤って人を傷つけていないか」といった攻撃性に関するもの、「きちんと左右対称にしないと不吉なことが起こるのでは」など、しばしば魔術的思考を伴った対称性へのこだわり、物事の正確性の追求、不吉な数字(例;4や9)などが多い。一方強迫行為では、長時間の手洗いや入浴、掃除などの洗浄、人に害を加えていないこと、間違いがないことなどの確認、繰り返しの儀式、物を対称に並べる、何度も数える、物を収集し捨てられず溜め込む、などが多く認められる。 | 強迫症状の内容な多彩であるが、強迫観念では、汚染の心配や、「運転中に誤って人を傷つけていないか」といった攻撃性に関するもの、「きちんと左右対称にしないと不吉なことが起こるのでは」など、しばしば魔術的思考を伴った対称性へのこだわり、物事の正確性の追求、不吉な数字(例;4や9)などが多い。一方強迫行為では、長時間の手洗いや入浴、掃除などの洗浄、人に害を加えていないこと、間違いがないことなどの確認、繰り返しの儀式、物を対称に並べる、何度も数える、物を収集し捨てられず溜め込む、などが多く認められる。 | ||
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薬物療法の第一選択は、OCDの保険適応を有しているSSRI(フルボキサミン、パロキセチン)、あるいはクロミプラミン(アナフラニ―ル)などの強力なセロトニン(5-HT)再取り込み阻害作用をもつ抗うつ薬である。SSRIの副作用は、三環系など他の抗うつ薬に比し軽度で、より安全性に優れるが、吐き気や不安増強などを一過性に認めることがある。これらの標準的な初期用量や投与量を表2に示す33)。 | 薬物療法の第一選択は、OCDの保険適応を有しているSSRI(フルボキサミン、パロキセチン)、あるいはクロミプラミン(アナフラニ―ル)などの強力なセロトニン(5-HT)再取り込み阻害作用をもつ抗うつ薬である。SSRIの副作用は、三環系など他の抗うつ薬に比し軽度で、より安全性に優れるが、吐き気や不安増強などを一過性に認めることがある。これらの標準的な初期用量や投与量を表2に示す33)。 | ||
'''表2.A 2012 Evidence-Based Algorithm for the Pharmacotherapy of Obsessive Compulsive Disorder'''<br> | '''表2.A 2012 Evidence-Based Algorithm for the Pharmacotherapy of Obsessive Compulsive Disorder'''<br> | ||
Recommended SSRI dosage for the treatment of OCD in adults aged 18-68 years | Recommended SSRI dosage for the treatment of OCD in adults aged 18-68 years | ||
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| 30mg/day | | 30mg/day | ||
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これらの効果が不十分な場合、診断の再確認など原因を検討して治療法を再考する。薬物療法では、他のSSRIへの変更、SSRIに少量の抗精神病薬を付加投与する方法などを試みる 12,26)。また観念のみ認める場合、認知的歪みや洞察の修正、治療的動機づけの強化などが必要な場合などでは認知療法が、心理・社会的、人格的要因などの関与が考えられる場合では家族療法など他の精神療法が、それぞれ有効となる。 | これらの効果が不十分な場合、診断の再確認など原因を検討して治療法を再考する。薬物療法では、他のSSRIへの変更、SSRIに少量の抗精神病薬を付加投与する方法などを試みる 12,26)。また観念のみ認める場合、認知的歪みや洞察の修正、治療的動機づけの強化などが必要な場合などでは認知療法が、心理・社会的、人格的要因などの関与が考えられる場合では家族療法など他の精神療法が、それぞれ有効となる。 | ||