571
回編集
細編集の要約なし |
細編集の要約なし |
||
144行目: | 144行目: | ||
[[Image:麻薬3.png|thumb|350px|'''図3.オピオイドによる鎮痛作用部位''']] | [[Image:麻薬3.png|thumb|350px|'''図3.オピオイドによる鎮痛作用部位''']] | ||
前述の通り、オピオイドが結合する特異的受容体には μ、δおよびκの3つのtypesのオピオイド受容体 (opioid receptor: OR) がある。μ-OR (MOR)、δ-OR (DOR) およびκ-OR (KOR) は、すべてGTP結合タンパク質(Gタンパク質)と共役する7回膜貫通型受容体(GPCR)である。これらオピオイド受容体タイプ間の相同性は高く(全体で約60%)、特に細胞膜貫通領域では非常に高い。いずれの受容体も基本的に[[Gi]]/[[Go|o]]タンパク質と共役しており、ORの活性化後、さまざまな[[細胞内情報伝達]]系が影響を受け、[[神経伝達物質]]の遊離や[[神経細胞体]]の興奮性が低下するために神経細胞の活動が抑制される。これらの中で鎮痛作用に関して最も重要な役割を果たすのがMORである。μ、δおよびκの3つのtypesのORに対する親和性および鎮痛効果 (potency) は個々の薬物によって異なる。 | |||
オピオイド受容体は[[脳]]・[[脊髄]]や[[知覚神経]]に幅広く存在するが、生体に投与したオピオイド鎮痛薬はどこにどのように作用して痛みの伝達を抑制するのは、未だ完全には解明されていない。おそらく、脳、脊髄、知覚神経に存在する MORにそれぞれ作用し、それらの総和として鎮痛効果を示していると推測できるが、全身投与のオピオイドの鎮痛効果が脊髄内投与の[[ナロキソン]](MOR antagonist)によって一部抑制されるため、脊髄後角浅層部のMORが鎮痛効果に深く関与することはほぼ疑いがない。脊髄[[後角]]浅層部は痛覚を伝える知覚神経([[Aδ]]、[[C線維]])の中枢側終末が多く存在し、エンケファリン、ダイノルフィンなどの内因性 opioid peptidesや MOR、KORが最も高密度で存在する部位でもある。こうした背景からも、脊髄後角におけるオピオイドの鎮痛作用機序が最も精力的に研究されている。 | オピオイド受容体は[[脳]]・[[脊髄]]や[[知覚神経]]に幅広く存在するが、生体に投与したオピオイド鎮痛薬はどこにどのように作用して痛みの伝達を抑制するのは、未だ完全には解明されていない。おそらく、脳、脊髄、知覚神経に存在する MORにそれぞれ作用し、それらの総和として鎮痛効果を示していると推測できるが、全身投与のオピオイドの鎮痛効果が脊髄内投与の[[ナロキソン]](MOR antagonist)によって一部抑制されるため、脊髄後角浅層部のMORが鎮痛効果に深く関与することはほぼ疑いがない。脊髄[[後角]]浅層部は痛覚を伝える知覚神経([[Aδ]]、[[C線維]])の中枢側終末が多く存在し、エンケファリン、ダイノルフィンなどの内因性 opioid peptidesや MOR、KORが最も高密度で存在する部位でもある。こうした背景からも、脊髄後角におけるオピオイドの鎮痛作用機序が最も精力的に研究されている。 | ||
226行目: | 226行目: | ||
=== 覚醒剤 === | === 覚醒剤 === | ||
「覚せい剤取締法」では、一般名[[メタンフェタミン]]、[[アンフェタミン]] | 「覚せい剤取締法」では、一般名[[メタンフェタミン]]、[[アンフェタミン]]及びその塩類並びにこれらを含有する物を「覚せい剤」として規制の対象としている。
覚せい剤は、主に[[wikipedia:ja:麻黄|麻黄]]([[wikipedia:ja:マオウ|マオウ]])という植物から抽出された[[エフェドリン]]等を原料として、化学的に合成して製造され、形状は主に白色の粉末や無色透明の結晶で、無臭でやや苦みがある。覚せい剤には、神経を興奮させる作用があり、乱用すると眠気や疲労感がなくなり、頭が冴えたような感じになる。しかし、そのような効果も数時間で切れ、その後は激しい脱力感、疲労感、倦怠感に襲われる。
| ||
覚せい剤は、特に依存性が強く、乱用を続けると、[[wikipedia:ja:覚せい剤精神病|覚せい剤精神病]]の状態になり、[[幻覚]]や[[妄想]]が現れるほか、時には[[錯乱]] | 覚せい剤は、特に依存性が強く、乱用を続けると、[[wikipedia:ja:覚せい剤精神病|覚せい剤精神病]]の状態になり、[[幻覚]]や[[妄想]]が現れるほか、時には[[錯乱]]状態になって、発作的に暴力をふるったりすることもある。このような症状は、乱用を止めても長期間にわたって残る危険性がある。
また、大量の覚せい剤を摂取すると、急性中毒により、全身けいれんを起こし、意識を失い、最後には[[脳出血]]で死亡することもある。 | ||
=== 大麻 === | === 大麻 === | ||
244行目: | 244行目: | ||
=== ヘロイン === | === ヘロイン === | ||
ヘロインは、けしを原料とした薬物で、けしからあへんを採取し、あへんからの抽出物を精製して作られ、「麻薬及び向精神薬取締法」で麻薬として規制されている。
ヘロインは、[[wikipedia:ja:静脈注射|静脈注射]]のほか、火であぶって煙を吸う方法、吸引具により吸引する方法、経口による方法で乱用されている。
ヘロインには神経を抑制する作用があり、乱用すると強い[[陶酔感]]を覚えることから、このような快感が忘れられず、乱用を繰り返すようになり、強い精神的依存が形成される。
さらに、強い身体的依存も形成され、2~3時間ごとに摂取しないと、体中の筋肉に激痛が走り、骨がバラバラになって飛散するかと思うほどの痛み、[[wikipedia:ja:悪寒|悪寒]]、嘔吐、[[失神]]などの激しい禁断症状に苦しむ。 | |||
=== あへん === | === あへん === | ||
252行目: | 252行目: | ||
=== LSD === | === LSD === | ||
[[LSD]](化学名:[[リゼルギン酸ジエチルアミド]] | [[LSD]](化学名:[[リゼルギン酸ジエチルアミド]])は、合成麻薬の一種で、「麻薬及び向精神薬取締法」の規制の対象とされ、水溶液をしみこませた紙片、錠剤、カプセル、ゼラチン等があり、経口又は飲み物とともに飲むなどして乱用されている。
LSDを乱用すると、幻視、幻聴、時間の感覚の欠如などの強烈な幻覚作用が現れる。特に幻視作用が強く、ほんのわずかな量だけで物の形が変形、巨大化して見えたり、色とりどりの光が見えたりする状態が8~12時間続く。
また、乱用を続けると、長期にわたって神経障害を来す。 | ||
==関連項目== | ==関連項目== |