9,444
回編集
細編集の要約なし |
細編集の要約なし |
||
64行目: | 64行目: | ||
===細胞競合=== | ===細胞競合=== | ||
細胞競合(cell competition)とは[[栄養因子]]の受容や増殖性に劣る細胞集団(敗者)が正常細胞集団(勝者)と接した場合、敗者の細胞がアポトーシスを起こして失われる現象である。ショウジョウバエ成虫原基などの上皮組織や、哺乳類初期胚や[[wikipedia:ja:心筋|心筋]]などでは増殖性に劣る細胞集団が排除されるとの報告がある<ref name=ref26><pubmed>19855017</pubmed></ref> <ref name=ref27 /> <ref name=ref28 />。こうした競合的な細胞間のふるまいは、適応度の高い細胞が集団中で生きのこる基本的なプロセスと考えられる。一方、神経系では、標的からの限られた量の栄養因子に対する競合で見られる「[[神経栄養因子仮説]]」が古くから知られる細胞競合の代表例であり、末梢神経系細胞と標的組織との間で神経接続が生じる際に多くみられる。神経栄養因子仮説における競合は非増殖性の神経細胞間での競合が主であり、増殖性に関して適応度の高い細胞の選択機構ではなく、神経細胞と標的組織との数の調節(マッチング)のための機構と考えられる<ref name=ref29><pubmed></pubmed></ref>。 | 細胞競合(cell competition)とは[[栄養因子]]の受容や増殖性に劣る細胞集団(敗者)が正常細胞集団(勝者)と接した場合、敗者の細胞がアポトーシスを起こして失われる現象である。ショウジョウバエ成虫原基などの上皮組織や、哺乳類初期胚や[[wikipedia:ja:心筋|心筋]]などでは増殖性に劣る細胞集団が排除されるとの報告がある<ref name=ref26><pubmed>19855017</pubmed></ref> <ref name=ref27><pubmed>25199831</pubmed></ref> <ref name=ref28><pubmed>23842495</pubmed></ref>。こうした競合的な細胞間のふるまいは、適応度の高い細胞が集団中で生きのこる基本的なプロセスと考えられる。一方、神経系では、標的からの限られた量の栄養因子に対する競合で見られる「[[神経栄養因子仮説]]」が古くから知られる細胞競合の代表例であり、末梢神経系細胞と標的組織との間で神経接続が生じる際に多くみられる。神経栄養因子仮説における競合は非増殖性の神経細胞間での競合が主であり、増殖性に関して適応度の高い細胞の選択機構ではなく、神経細胞と標的組織との数の調節(マッチング)のための機構と考えられる<ref name=ref29><pubmed>16776578</pubmed></ref>。 | ||
===エラー除去=== | ===エラー除去=== | ||
73行目: | 73行目: | ||
==アポトーシス以外の細胞死の役割== | ==アポトーシス以外の細胞死の役割== | ||
新しく見つかってきた制御された細胞死の、生理的状況下の神経系における機能はまだほとんど不明である。病理的状況下におけるアポトーシス以外の細胞死の関与は、いくつか報告がある。ネクロプトーシスの関与を示す報告としては、ネクロプトーシスの阻害剤Nec-1が脳虚血に伴う障害を軽減させるという報告 | 新しく見つかってきた制御された細胞死の、生理的状況下の神経系における機能はまだほとんど不明である。病理的状況下におけるアポトーシス以外の細胞死の関与は、いくつか報告がある。ネクロプトーシスの関与を示す報告としては、ネクロプトーシスの阻害剤Nec-1が脳虚血に伴う障害を軽減させるという報告<ref name=ref9><pubmed>16408008</pubmed></ref>や、ALS(amyotrophic lateral sclerosis)患者由来のアストロサイトと運動神経細胞との共培養系で見られる運動神経細胞の細胞死が、RIP1とMLKL依存的なネクロプトーシスであるとの報告[17]等がある。一方、パイロトーシスは感染時の神経細胞死で生じてうるとされる<ref name=ref15><pubmed>24398937</pubmed></ref>。フェロプトーシスはその阻害剤がグルタミン酸による興奮毒性神経細胞死を止めうるとの報告<ref name=ref16><pubmed>22632970</pubmed></ref>がある。 | ||