「夢」の版間の差分

7 バイト除去 、 2016年2月18日 (木)
82行目: 82行目:
1953年にAserinskyとKleitmanがレム睡眠を発見した直後から、「なぜ睡眠中に目が動くのか?」ということが問題になった。レム睡眠中に水平方向の眼球運動が規則正しく出現した被験者を起こして夢内容を聴取したところ、「卓球の試合の夢を見ていた。卓球台の真ん中に立って、球の行方を目で追っていた」という言語報告が得られたことから、「レム睡眠時の急速眼球運動は,覚醒時のサッケードと同様に夢の視覚像を追う(走査する)ために出現する」という説(走査仮説,Scanning hypothesis)が唱えられた<ref name="Dement1957"/><ref name="Roffwarg1962"/>
1953年にAserinskyとKleitmanがレム睡眠を発見した直後から、「なぜ睡眠中に目が動くのか?」ということが問題になった。レム睡眠中に水平方向の眼球運動が規則正しく出現した被験者を起こして夢内容を聴取したところ、「卓球の試合の夢を見ていた。卓球台の真ん中に立って、球の行方を目で追っていた」という言語報告が得られたことから、「レム睡眠時の急速眼球運動は,覚醒時のサッケードと同様に夢の視覚像を追う(走査する)ために出現する」という説(走査仮説,Scanning hypothesis)が唱えられた<ref name="Dement1957"/><ref name="Roffwarg1962"/>


1960~1970年代には多くの研究者がレム睡眠時の眼球運動パタンと夢内容の間に相関があることを報告したが、視覚的な夢を見ないと考えられる先天性の盲人や新生児でもレム睡眠時に急速眼球運動が出現することや<ref name="Gross1965"><pubmed>5846596</pubme></ref>、上述のHobsonによる活性化合成仮説が出てからは、レム睡眠時の急速眼球運動はPGO-waveによって駆動されるランダムな目の動きと考えられ、注目されなくなった。
1960~1970年代には多くの研究者がレム睡眠時の眼球運動パタンと夢内容の間に相関があることを報告したが、視覚的な夢を見ないと考えられる先天性の盲人や新生児でもレム睡眠時に急速眼球運動が出現することや<ref name="Gross1965"><pubmed></pubme></ref>、上述のHobsonによる活性化合成仮説が出てからは、レム睡眠時の急速眼球運動はPGO-waveによって駆動されるランダムな目の動きと考えられ、注目されなくなった。


1980年代後半に、レム睡眠時の急速眼球運動に伴って、覚醒時照明下でのサッケードに伴って出現するラムダ波と同様の電位が後頭の視覚野優位に出現することが報告され<ref name="Miyauchi1987"><pubmed>2435518</pubmed></ref><ref name="Miyauchi1990"><pubmed>1694480</pubmed></ref><ref name="Ogawa2009"><pubmed>19062337</pubmed></ref>、fMRIによってこの活動が第一次視覚野で生じていることが明らかにされた<ref name="Miyauchi2008"><pubmed>18830586</pubmed></ref>。またレム睡眠の特徴である骨格筋の緊張の著しい低下が欠如し、レム睡眠になると夢の内容に応じて身体の運動が生じるレム睡眠行動障害患者(REM sleep behavior disorder: RBD)を用いて、レム睡眠中の動作と眼球運動の関連を調べた研究では、対象をつかむ、指し示すなどの目標のはっきりした四肢の動作と眼球運動の方向が一致することが報告された<ref name="Leclair-Visonneau2010"><pubmed>20478849</pubmed></ref>。これらの知見を考え合わせると,少なくともレム睡眠時の急速眼球運動の一部は,走査仮説が主張するように夢の中での視覚像を追うために出現していると考えられる。
1980年代後半に、レム睡眠時の急速眼球運動に伴って、覚醒時照明下でのサッケードに伴って出現するラムダ波と同様の電位が後頭の視覚野優位に出現することが報告され<ref name="Miyauchi1987"><pubmed>2435518</pubmed></ref><ref name="Miyauchi1990"><pubmed>1694480</pubmed></ref><ref name="Ogawa2009"><pubmed>19062337</pubmed></ref>、fMRIによってこの活動が第一次視覚野で生じていることが明らかにされた<ref name="Miyauchi2008"><pubmed>18830586</pubmed></ref>。またレム睡眠の特徴である骨格筋の緊張の著しい低下が欠如し、レム睡眠になると夢の内容に応じて身体の運動が生じるレム睡眠行動障害患者(REM sleep behavior disorder: RBD)を用いて、レム睡眠中の動作と眼球運動の関連を調べた研究では、対象をつかむ、指し示すなどの目標のはっきりした四肢の動作と眼球運動の方向が一致することが報告された<ref name="Leclair-Visonneau2010"><pubmed>20478849</pubmed></ref>。これらの知見を考え合わせると,少なくともレム睡眠時の急速眼球運動の一部は,走査仮説が主張するように夢の中での視覚像を追うために出現していると考えられる。
76

回編集