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<font size="+1">大神田 麻子</font><br> | <font size="+1">[https://researchmap.jp/mokanda 大神田 麻子]</font><br> | ||
''追手門学院大学''<br> | ''追手門学院大学''<br> | ||
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0095222 板倉 昭二]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0095222 板倉 昭二]</font><br> | ||
''京都大学''<br> | ''京都大学''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年3月3日 原稿完成日:2016年3月15日 改訂日:2021年3月23日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0048432 定藤 規弘](自然科学研究機構生理学研究所 大脳皮質機能研究系)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0048432 定藤 規弘](自然科学研究機構生理学研究所 大脳皮質機能研究系)<br> | ||
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英:theory of mind 英略称:ToM 独:Theorie des Geistes 仏:théorie de l'esprit<br> | |||
英同義語:mentalizing | |||
{{box|text= 心の理論とは、他者の心を類推し、理解する能力である。特に発達心理学において、乳幼児を対象にさまざまな研究が行われるようになった。[[ヒト]]およびヒト以外の[[動物]]が心の理論を持っているかどうかについては、誤信念課題によって調べられる。この課題で他者の信念についての質問に正答することができた場合に、心の理論を持っていると結論される。一般的に4歳後半から5歳の子どもはこれらの課題に通過することができる。自閉症患者では障害が認められる。}} | {{box|text= 心の理論とは、他者の心を類推し、理解する能力である。特に発達心理学において、乳幼児を対象にさまざまな研究が行われるようになった。[[ヒト]]およびヒト以外の[[動物]]が心の理論を持っているかどうかについては、誤信念課題によって調べられる。この課題で他者の信念についての質問に正答することができた場合に、心の理論を持っていると結論される。一般的に4歳後半から5歳の子どもはこれらの課題に通過することができる。自閉症患者では障害が認められる。}} | ||
== 心の理論とは == | == 心の理論とは == | ||
心の理論とは、他者の心を類推し、理解する能力である。心の理論という呼び方は、1978年に発表されたPremackとWoodruffによる論文”Does the chimpanzee have a theory of mind?”において初めて用いられ<ref name=ref15>'''Premack, D., & Woodruff, G.'''<br>Does the chimpanzee have a theory of mind?<br>''Behavioral and Brain Sciences'', 1, 512-526. 1978</ref> | 心の理論とは、他者の心を類推し、理解する能力である。心の理論という呼び方は、1978年に発表されたPremackとWoodruffによる論文”Does the chimpanzee have a theory of mind?”において初めて用いられ<ref name=ref15>'''Premack, D., & Woodruff, G.'''<br>Does the chimpanzee have a theory of mind?<br>''Behavioral and Brain Sciences'', 1, 512-526. 1978</ref>、それ以後、特に発達心理学において、乳幼児を対象にさまざまな研究が行われるようになった。日本語では一般的に「心の理論」と訳されるが、「他者の心的状態の推定」(inferences of other's mental states)を意味する。また、同義語としてmentalizingがある | ||
[[ヒト]]およびヒト以外の[[動物]]が心の理論を持っているかどうかについては、主に[[誤信念課題]](false belief task)によって調べられる。 | |||
==標準誤信念課題== | ==標準誤信念課題== | ||
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===誕生日課題=== | ===誕生日課題=== | ||
この課題では、「ピーターは誕生日プレゼントに子犬が欲しいと思っていたので、ピーターの母親はピーターに内緒で子犬を買い、ピーターを驚かそうと子犬を地下室に隠しておいた。そしてピーターには誕生日プレゼントにはおもちゃを買ったと伝えた。しかしピーターは地下室の子犬を偶然見つけてしまった。ピーターの祖母が母にピーターが誕生日プレゼントを知っているかどうか聞いた」というストーリーを子どもに聞かせ、「お母さんは祖母になんと答えるか」という質問をする。正解は「おもちゃ」である。[[アイスクリーム課題]]が複雑なストーリーを用いているために、よりシンプルな課題として、この[[誕生日課題]]が考案された<ref name=ref16 />。 | |||
===社会的失言(Faux Pas)検出課題=== | ===社会的失言(Faux Pas)検出課題=== | ||
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Baron-Cohenは、3~5歳の健常児、[[ダウン症]]児、および[[自閉症]]児がサリー・アン課題に通過できるか調べたところ、自閉症児群のほうが知能年齢が高いにもかかわらず、課題の通過率は20%であったことを示した<ref name=ref1 />。その後の研究では、[[アスペルガー症候群]]の子ども、高機能自閉症児は標準誤信念課題<ref name=ref2 /> <ref name=ref6><pubmed>8040158</pubmed></ref>、および二次的誤信念課題<ref name=ref6 />に通過できることが示された。しかし、より高次で自然なストーリー(嘘、白い嘘、ジョーク、振り遊び、皮肉など)に関する理解については、二次的誤信念課題を通過できた自閉症者でも失敗することが多く<ref name=ref6 />、また一次的、二次的誤信念課題を通過したアスペルガー症候児、[[高機能自閉症]]児でも、社会的失言検出課題は難しかった<ref name=ref2 />。 | Baron-Cohenは、3~5歳の健常児、[[ダウン症]]児、および[[自閉症]]児がサリー・アン課題に通過できるか調べたところ、自閉症児群のほうが知能年齢が高いにもかかわらず、課題の通過率は20%であったことを示した<ref name=ref1 />。その後の研究では、[[アスペルガー症候群]]の子ども、高機能自閉症児は標準誤信念課題<ref name=ref2 /> <ref name=ref6><pubmed>8040158</pubmed></ref>、および二次的誤信念課題<ref name=ref6 />に通過できることが示された。しかし、より高次で自然なストーリー(嘘、白い嘘、ジョーク、振り遊び、皮肉など)に関する理解については、二次的誤信念課題を通過できた自閉症者でも失敗することが多く<ref name=ref6 />、また一次的、二次的誤信念課題を通過したアスペルガー症候児、[[高機能自閉症]]児でも、社会的失言検出課題は難しかった<ref name=ref2 />。 | ||
== 関連項目 == | |||
* [[共同注意]] | |||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
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