「境界性パーソナリティ障害」の版間の差分

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===経過・予後===
===経過・予後===
 従来から多くの患者が長期経過の中で境界性パーソナリティ障害と診断されなくなることが報告されている<ref name=ref1 />。1980~90年代の研究では、境界性パーソナリティ障害患者が約15年の経過の中で依然として境界性パーソナリティ障害と診断される率は25-44%に留まっていた。同時にそこでは、精神症状や問題行動の減少、社会機能の改善が見られることが確認されている。Zanariniら<ref name=ref9><pubmed>17541053</pubmed></ref>は、入院患者の経過研究において10年間で88%が境界性パーソナリティ障害と診断されなくなっており、社会機能の回復も確かであったと報告している。彼らの退院後16年の経過報告<ref name=ref10><pubmed>22737693</pubmed></ref>では、2年以上の寛解、回復(GAS>60となること)をそれぞれ99%、60%が経験するけれども、2年以上の寛解の後に36%が再発する、2年以上の回復の後に44%が回復の状態を喪うことが明らかにされた。
 従来から多くの患者が長期経過の中で境界性パーソナリティ障害と診断されなくなることが報告されている<ref name=ref1 />。1980~90年代の研究では、境界性パーソナリティ障害患者が約15年の経過の中で依然として境界性パーソナリティ障害と診断される率は25-44%に留まっていた。同時にそこでは、精神症状や問題行動の減少、社会機能の改善が見られることが確認されている。Zanariniら<ref name=ref9><pubmed>17541053</pubmed></ref>は、入院患者の経過研究において10年間で88%が境界性パーソナリティ障害と診断されなくなっており、社会機能の回復も確かであったと報告している。彼らの退院後16年の経過報告<ref name=ref10><pubmed>22737693</pubmed></ref>では、2年以上の寛解、回復(GAS>60となること)をそれぞれ99%、60%が経験するけれども、2年以上の寛解の後に36%が再発する、2年以上の回復の後に44%が回復の状態を失うことが明らかにされた。


 ただし、このように従来の研究において境界性パーソナリティ障害の回復可能性が確認されつつあるものの、境界性パーソナリティ障害患者の自殺は、長期経過中に自殺率8~10%にも及ぶとされており、これには十分な警戒が必要である<ref name=ref11><pubmed>11665545</pubmed></ref>。
 ただし、このように従来の研究において境界性パーソナリティ障害の回復可能性が確認されつつあるものの、境界性パーソナリティ障害患者の自殺は、長期経過中に自殺率8~10%にも及ぶとされており、これには十分な警戒が必要である<ref name=ref11><pubmed>11665545</pubmed></ref>。