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== 発見の歴史と日本人の貢献 == | == 発見の歴史と日本人の貢献 == | ||
R. GuilleminとA. V. Schallyが、「脳のペプチドホルモン産生に関する発見」で、1977年にノーベル賞を受けている。彼らは何万もの豚の脳から生理活性を指標にペプチドを単離した。その研究においてA. Arimura, H. Matsuoらが重要な役割を演じている。また、「ペプチドホルモンの放射性同位元素標識免疫検定法(RIA)の開発」でR. S. Yalowが同時受賞している。これらの発見と技術開発はペプチドの研究、特に内分泌学に革命的な変化をもたらした。その後、脳や腸管から多くのペプチドが単離され、C末端のアミド化された構造が多くのペプチドに共通することが明らかになった。V. MuttとK. Tatemotoはその構造に着目し単離する化学的方法を開発した | R. GuilleminとA. V. Schallyが、「脳のペプチドホルモン産生に関する発見」で、1977年にノーベル賞を受けている。彼らは何万もの豚の脳から生理活性を指標にペプチドを単離した。その研究においてA. Arimura, H. Matsuoらが重要な役割を演じている。また、「ペプチドホルモンの放射性同位元素標識免疫検定法(RIA)の開発」でR. S. Yalowが同時受賞している。これらの発見と技術開発はペプチドの研究、特に内分泌学に革命的な変化をもたらした。その後、脳や腸管から多くのペプチドが単離され、C末端のアミド化された構造が多くのペプチドに共通することが明らかになった。V. MuttとK. Tatemotoはその構造に着目し単離する化学的方法を開発した <ref><pubmed>6896083</pubmed></ref>。この方法によりneuropeptide Y (NPY)やgalaninなどの多くのペプチドが発見された。名称も生理活性ではなく構造から付けられた。例えば、NPYはチロシン(Y)残基を多く含むことによる。また、galaninはグリシン(G)で始まり、アラニンで終わる構造である。近年に至ってK. Kangawaらがグレリン(ghrelin)を発見している<ref><pubmed>10604470</pubmed></ref>。このような歴史を経て現在までに、90の遺伝子が明らかになり、約100の神経ペプチドが知られるようになった<ref>http://www.neuropeptides.nl/</ref>。 | ||
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== 神経ペプチドの生合成と作用機構 == | == 神経ペプチドの生合成と作用機構 == | ||
神経ペプチドは遺伝子にコードされており、転写・翻訳およびプロセッシングによって合成される。合成された神経ペプチドは、シナプス小胞(synaptic vesicle、直径, 50-100 nm)ではなく、分泌小胞(secretory vesicle、直径, 100 nm以上)に貯蔵され開口放出される。シナプス部位で放出されるものは少なく、脳内では細胞体と樹状突起で放出され、比較的高濃度で細胞間隙に存在する。例えば、視床下部視索上核(supraoptic nucleus, SON)におけるオキシトシンの細胞外濃度は5-20 nMである。しかも半減期が約20分と長い。これは、グルタミン酸における取り込みやアセチルコリンの分解のような不活化機構が存在しないからである。そのために分泌部位から遠く離れたところにまで作用を及ぼすことになる | 神経ペプチドは遺伝子にコードされており、転写・翻訳およびプロセッシングによって合成される。合成された神経ペプチドは、シナプス小胞(synaptic vesicle、直径, 50-100 nm)ではなく、分泌小胞(secretory vesicle、直径, 100 nm以上)に貯蔵され開口放出される。シナプス部位で放出されるものは少なく、脳内では細胞体と樹状突起で放出され、比較的高濃度で細胞間隙に存在する。例えば、視床下部視索上核(supraoptic nucleus, SON)におけるオキシトシンの細胞外濃度は5-20 nMである。しかも半減期が約20分と長い。これは、グルタミン酸における取り込みやアセチルコリンの分解のような不活化機構が存在しないからである。そのために分泌部位から遠く離れたところにまで作用を及ぼすことになる<ref><pubmed>16429122</pubmed></ref>。後葉ホルモンと向下垂体ホルモンは軸索末端から放出されるが、そこにはシナプス構造はなく血管周囲に直接放出され血流で標的部位まで運ばれる。このように神経細胞の性質と内分泌細胞の性質を兼ね備えていることからこれらのニューロンは神経内分泌細胞(neuroendocrine cell)と呼ばれる。また、このような分泌様式を神経分泌(neurosecretion)という。 | ||
神経ペプチドの受容体はほとんどが、Gタンパク共役型でありイオンチャネル型のものはない。したがって、細胞内シグナル伝達系を介して作用する。代表的なものはGsとGiを介するcAMP合成の促進と抑制、GiあるいはGoのGβγによるGIRKチャネル(G-protein-coupled inwardly rectifying potassium channels, Kir3)の活性化、およびGq/11を介するイノシトール-3-リン酸(IP3)とジアシルグリセルール(DAG)の産生である。なお、酵素共役型受容体(グアニル酸シクラーゼ、チロシンキナーゼ)も一部のペプチドでは知られている。 | 神経ペプチドの受容体はほとんどが、Gタンパク共役型でありイオンチャネル型のものはない。したがって、細胞内シグナル伝達系を介して作用する。代表的なものはGsとGiを介するcAMP合成の促進と抑制、GiあるいはGoのGβγによるGIRKチャネル(G-protein-coupled inwardly rectifying potassium channels, Kir3)の活性化、およびGq/11を介するイノシトール-3-リン酸(IP3)とジアシルグリセルール(DAG)の産生である。なお、酵素共役型受容体(グアニル酸シクラーゼ、チロシンキナーゼ)も一部のペプチドでは知られている。 | ||
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== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
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(執筆者:加藤昌克、担当編集者:河西晴郎) | (執筆者:加藤昌克、担当編集者:河西晴郎) |