16,040
回編集
細編集の要約なし |
細 (→チューニング関数と相関構造) |
||
70行目: | 70行目: | ||
===チューニング関数と相関構造=== | ===チューニング関数と相関構造=== | ||
冗長符号化が実現されているという仮定のもとで次に問題となるのは、どのような神経活動によって、冗長性が実現されているのかという問題である。ZoharyらはMT野神経細胞が0.2程度の正の相関係数を示すことから、これが冗長性を生むと考えた<ref name=Zohary1994><pubmed>8022482</pubmed></ref>。例えば独立な神経細胞が2つあり、2つの発火頻度の平均値を刺激の推定量として使う場合、推定値の変動(分散)は1つの場合の半分になる。独立な神経細胞の5つの発火頻度の平均値で推定する場合は変動が5分の1になる。神経細胞の数を増やしていけば、推定値の変動を0に近くなるまでどこまでも小さくしていける。すなわち、神経細胞の数が多いほど推定精度は高くなる。ところが神経細胞の活動が正の相関を持つときには、推定精度に限界が生じる。MT野神経細胞集団のように相関係数が0.2である場合には、どんなに神経細胞の数を大きくしても、推定値の分散は1つの神経細胞の推定揺らぎの5分の1までしか小さくできない。刺激弁別の精度が神経細胞数の増加とともに一定の値に収束し、独立の場合よりずっと小さくなるのは冗長な符号化の一例となっている。 | |||
しかし、この考え方には大きな欠点がある。複数の神経細胞の活動の平均値を刺激の推定量とすることに意味があるのは、それら複数の神経細胞が刺激に対して全く同じように応答している場合のみである。すなわち、刺激と神経細胞の平均発火頻度との関係を表すチューニング関数(応答関数・活性化関数)が同じ神経細胞集団に対してのみ、発火頻度の平均値を推定量とすることに意味がある。しかし、一般には刺激の推定精度を議論するのに平均発火率の揺らぎを使用する妥当性はない。次に示すように、集団活動による刺激の推定精度は神経細胞間の相関だけで決められるわけではなく、個々の神経細胞のチューニング関数と相関構造の関係が重要な役割を担うことが明らかになっている<ref name=Averbeck2006><pubmed>16760916</pubmed></ref>[Averbeck 2006]。 | しかし、この考え方には大きな欠点がある。複数の神経細胞の活動の平均値を刺激の推定量とすることに意味があるのは、それら複数の神経細胞が刺激に対して全く同じように応答している場合のみである。すなわち、刺激と神経細胞の平均発火頻度との関係を表すチューニング関数(応答関数・活性化関数)が同じ神経細胞集団に対してのみ、発火頻度の平均値を推定量とすることに意味がある。しかし、一般には刺激の推定精度を議論するのに平均発火率の揺らぎを使用する妥当性はない。次に示すように、集団活動による刺激の推定精度は神経細胞間の相関だけで決められるわけではなく、個々の神経細胞のチューニング関数と相関構造の関係が重要な役割を担うことが明らかになっている<ref name=Averbeck2006><pubmed>16760916</pubmed></ref>[Averbeck 2006]。 |