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== 生理機能 == | == 生理機能 == | ||
SRFの標的遺伝子は、最初期遺伝子と細胞骨格関連遺伝子に分類されるものが多く、細胞レベルでも、これらに関連した細胞移動、細胞形態などの機能が示されている<ref name=ref32><pubmed>11839767</pubmed></ref>。個体レベルでは、SRFノックアウト(KO)マウスは、胚発生時の中胚葉形成不全で胎生致死であるため<ref name=ref6><pubmed>9799237</pubmed></ref>、現在では主にCre-loxPシステムを用いて作製した30種類近い組織•細胞特異的SRF KOマウスについて検討が進んでいる<ref name=ref7><pubmed>20498652</pubmed></ref>。筋分化<ref name=ref7><pubmed>20498652</pubmed></ref>、心機能<ref name=ref7><pubmed>20498652</pubmed></ref>、免疫系細胞の成熟<ref name=ref7><pubmed>20498652</pubmed></ref>など多彩な生命現象に関与すると報告されている。 | |||
中枢神経系を標的としたSRFKOマウスは、これまでに少なくとも6系統が報告されている。 | 中枢神経系を標的としたSRFKOマウスは、これまでに少なくとも6系統が報告されている。 | ||
[[CaMKIIα]][[プロモーター]]で[[Creレコンビナーゼ]]を発現させ、前脳特異的にSRFをKOしたマウスが3系統あるが<ref name=ref5><pubmed>15880109</pubmed></ref><ref name=ref9><pubmed>16415869</pubmed></ref><ref name=ref10><pubmed>20123976</pubmed></ref><ref name=ref12><pubmed>16600861</pubmed></ref><ref name=ref13><pubmed>15837932</pubmed></ref>、それぞれCreレコンビナーゼの発現時期が異なるため、表現型は異なっている。[[wikipedia:JA:周産期|周産期]]や出生前においてSRFをKOさせたマウス系統の解析では、[[脳室下帯]]から[[嗅球]]への細胞移動<ref name=ref13><pubmed>15837932</pubmed></ref>、海馬層形成と樹状突起形態<ref name=ref10><pubmed>20123976</pubmed></ref>、海馬における軸索ガイダンス<ref name=ref9><pubmed>16415869</pubmed></ref>への重要性が示されている。また、神経細胞におけるSRF依存性遺伝子発現が細胞非自律的な[[オリゴデンドロサイト]]の分化に重要であるとの指摘がある<ref name=ref33><pubmed>19270689</pubmed></ref>。また、生後8週目からSRFがKOされるマウス系統の解析では、海馬依存性[[即時記憶]]や[[長期抑圧現象]] | [[CaMKIIα]][[プロモーター]]で[[Creレコンビナーゼ]]を発現させ、前脳特異的にSRFをKOしたマウスが3系統あるが<ref name=ref5><pubmed>15880109</pubmed></ref><ref name=ref9><pubmed>16415869</pubmed></ref><ref name=ref10><pubmed>20123976</pubmed></ref><ref name=ref12><pubmed>16600861</pubmed></ref><ref name=ref13><pubmed>15837932</pubmed></ref>、それぞれCreレコンビナーゼの発現時期が異なるため、表現型は異なっている。[[wikipedia:JA:周産期|周産期]]や出生前においてSRFをKOさせたマウス系統の解析では、[[脳室下帯]]から[[嗅球]]への細胞移動<ref name=ref13><pubmed>15837932</pubmed></ref>、海馬層形成と樹状突起形態<ref name=ref10><pubmed>20123976</pubmed></ref>、海馬における軸索ガイダンス<ref name=ref9><pubmed>16415869</pubmed></ref>への重要性が示されている。また、神経細胞におけるSRF依存性遺伝子発現が細胞非自律的な[[オリゴデンドロサイト]]の分化に重要であるとの指摘がある<ref name=ref33><pubmed>19270689</pubmed></ref>。また、生後8週目からSRFがKOされるマウス系統の解析では、海馬依存性[[即時記憶]]や[[長期抑圧現象]]に重要な役割を果たすこと指摘されている<ref name=ref12><pubmed>16600861</pubmed></ref>。一方、生後数ヶ月でSRFがKOされるマウス系統では、脳の構造上の変化や細胞移動の異常はなく、β-アクチンやc''-fos'', ''egr''-1, Arc遺伝子というSRFの標的遺伝子の神経活動依存的発現が障害された。通常よりも豊かな環境(enriched environment, EE)においてもこのような異常は認められた<ref name=ref5><pubmed>15880109</pubmed></ref>。さらに長期増強現象も障害されたことが報告されている<ref name=ref5><pubmed>15880109</pubmed></ref>。 | ||
また、[[シナプシンI]](synapsin I) | また、[[シナプシンI]](synapsin I)プロモーターでCreレコンビナーゼを発現させ、SRFをKOしたマウス系統もあり、CaMKIIプロモーターの系統と行動学的な違いが比較検討されている<ref name=ref34><pubmed>21329726</pubmed></ref>。 | ||
近年、[[ネスチン]](nestin)プロモーターでCreレコンビナーゼを発現させた[[神経前駆細胞]] | 近年、[[ネスチン]](nestin)プロモーターでCreレコンビナーゼを発現させた[[神経前駆細胞]]特異的SRF KOマウスと[[neuronal helix-loop-helix protein-1]] (NEX) プロモーターを用いた大脳皮質と海馬の[[グルタミン酸]]作動性神経特異的SRF KOマウスが報告され、皮質軸索投射へのSRFの関与が指摘された<ref name=ref35><pubmed>22090492</pubmed></ref>。 | ||
末梢神経系においては、[[Wnt1]] | 末梢神経系においては、[[Wnt1]]プロモーターでCreレコンビナーゼを発現させた後根神経節特異的SRF KOマウスの解析により、軸索投射におけるSRFの重要性が指摘された<ref name=ref14><pubmed>18498735</pubmed></ref>。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |