「知的障害関連遺伝子」の版間の差分

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==ID関連遺伝子の分類==
==ID関連遺伝子の分類==


 ID関連遺伝子は現在450遺伝子以上報告され、そのうち症候性ID関連が約400遺伝子、非症候性ID関連が約50遺伝子である。<ref name=ref1 />X連鎖性遺伝子は約100遺伝子 (約22%)であり、XLIDが高頻度(男性の約1/600-1/1000人)でIDが男性に多いことをよく説明する。<ref name=ref3><pubmed>22482801</pubmed></ref>XLIDも、非症候性 XLID (従来MRXと呼ばれた)と、症候性XLID (従来のMRXS)に分類される。症候性XLIDには現在150症候群以上が知られ、そのうち約80遺伝子が単離、約30症候群の遺伝子座位が同定されている(図1)。非症候性 XLIDでは45家系以上で遺伝子座位が同定され、現在約40遺伝子が単離されているが、そのうち約20遺伝子は同時に症候性XLIDの責任遺伝子でもある(図2)。<ref name=ref1 /><ref name=ref3 /><ref>’’’ Greenwood Genetic Center XLID Update of the Atlas on X-linked Mental Retardation. 2011. http://www.ggc.org/research/molecular-studies/xlid.html’’’</ref>近年、常染色体に責任遺伝子を持つIDの報告が相次いでおり、相対的にXLIDの頻度は低下している。<ref name=ref1 /><ref name=ref5><pubmed>20797689</pubmed></ref><ref name=ref6><pubmed>21076407</pubmed></ref><ref name=ref7><pubmed>21572417</pubmed></ref><ref name=ref8><pubmed>21937992</pubmed></ref>
 ID関連遺伝子は現在450遺伝子以上報告され、そのうち症候性ID関連が約400遺伝子、非症候性ID関連が約50遺伝子である。<ref name=ref1 />


 Najmabadiら(2011年)は、[[wikipedia:ja:常染色体劣性遺伝|常染色体劣性遺伝]]形式を示す非症候性IDの136[[wikipedia:ja:血族婚|血族婚]]家系に対し、次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析を行い、新規原因遺伝子として50遺伝子を同定したと報告している。<ref name=ref8 />Awadallaら(2010年)やVissersら(2010年)は、家族歴のない非症候性ID例([[自閉症]]や[[統合失調症]]を含む)において、エクソーム解析により常染色体上の遺伝子に多数の[[新生突然変異]](de novo mutation)を報告しており、今後さらに常染色体上のID関連遺伝子の同定が進むと考えられる。<ref name=ref5 /><ref name=ref6 />ID関連遺伝子は、コードする蛋白質の機能別に、①シナプス形成に関与、②細胞骨格に関与、③シグナル伝達系群に関与、④遺伝子転写制御やエピジェネティックス機構に関与、⑤代謝系に関与するものなどに分けられる。中でもシナプス形成・機能に関連する遺伝子は多い。また一症例に疾患関連CNVや関連遺伝子変異を同時に認める報告も相次いでおり、複数の遺伝子異常がID重症度と関連している可能性が示唆される。<ref name=ref1 /><ref name=ref7 /><ref name=ref9><pubmed>21841781</pubmed></ref>Bokhoven(2011年)が提示したシナプス形成・機能に関与する分子群を示す(図3、4)。
 X連鎖性遺伝子は約100遺伝子 (約22%)であり、XLIDが高頻度(男性の約1/600-1/1000人)でIDが男性に多いことをよく説明する。<ref name=ref3><pubmed>22482801</pubmed></ref>XLIDも、非症候性 XLID (従来MRXと呼ばれた)と、症候性XLID (従来のMRXS)に分類される。症候性XLIDには現在150症候群以上が知られ、そのうち約80遺伝子が単離、約30症候群の遺伝子座位が同定されている(図1)。非症候性 XLIDでは45家系以上で遺伝子座位が同定され、現在約40遺伝子が単離されているが、そのうち約20遺伝子は同時に症候性XLIDの責任遺伝子でもある(図2)。<ref name=ref1 /><ref name=ref3 /><ref>’’’ Greenwood Genetic Center XLID Update of the Atlas on X-linked Mental Retardation. 2011. http://www.ggc.org/research/molecular-studies/xlid.html’’’</ref>近年、常染色体に責任遺伝子を持つIDの報告が相次いでおり、相対的にXLIDの頻度は低下している。<ref name=ref1 /><ref name=ref5><pubmed>20797689</pubmed></ref><ref name=ref6><pubmed>21076407</pubmed></ref><ref name=ref7><pubmed>21572417</pubmed></ref><ref name=ref8><pubmed>21937992</pubmed></ref>
 
 Najmabadiら(2011年)は、[[wikipedia:ja:常染色体劣性遺伝|常染色体劣性遺伝]]形式を示す非症候性IDの136[[wikipedia:ja:血族婚|血族婚]]家系に対し、次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析を行い、新規原因遺伝子として50遺伝子を同定したと報告している。<ref name=ref8 />Awadallaら(2010年)やVissersら(2010年)は、家族歴のない非症候性ID例([[自閉症]]や[[統合失調症]]を含む)において、エクソーム解析により常染色体上の遺伝子に多数の[[新生突然変異]](de novo mutation)を報告しており、今後さらに常染色体上のID関連遺伝子の同定が進むと考えられる。<ref name=ref5 /><ref name=ref6 />
 
 ID関連遺伝子は、コードする蛋白質の機能別に、
 
#シナプス形成に関与するもの
#細胞骨格に関与するもの
#シグナル伝達系群に関与するもの
#遺伝子転写制御やエピジェネティックス機構に関与するもの
#代謝系に関与するもの
 
 などに分けられる。中でもシナプス形成・機能に関連する遺伝子は多い。また一症例に疾患関連CNVや関連遺伝子変異を同時に認める報告も相次いでおり、複数の遺伝子異常がID重症度と関連している可能性が示唆される。<ref name=ref1 /><ref name=ref7 /><ref name=ref9><pubmed>21841781</pubmed></ref>Bokhoven(2011年)が提示したシナプス形成・機能に関与する分子群を示す(図3、4)。


==IDの分子遺伝学的診断フローチャート==
==IDの分子遺伝学的診断フローチャート==