「知的障害関連遺伝子」の版間の差分

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==IDの分子遺伝学的診断フローチャート==
==IDの分子遺伝学的診断フローチャート==
[[Image:図5. IDの分子遺伝学的検査のフローチャート.png|thumb|300px|図'''5. IDの分子遺伝学的検査のフローチャート''']]
 [[wikipedia:American Academy of Neurology|アメリカ神経学会]](ANN)からの[[全般性発達障害]](global developmental delay)/知的障害(Intellectual Disability)の評価を行うガイドライン(2003年)では、少なくとも三世代にわたる家系図、出生前後の病歴、特徴的な身体所見、画像所見、核型検査などの遺伝学的検査、代謝系の検査、行動などについての評価を段階的に行うことが勧められている。<ref name=ref10><pubmed>21956720</pubmed></ref>そのなかで遺伝学的検査は3.5~10%に診断的意義を認め、形態異常が認められない症例でも行うべきであるとしている。<ref><pubmed>12578916</pubmed></ref>


 [[wikipedia:American Academy of Neurology|アメリカ神経学会]](ANN)からの[[全般性発達障害]](global developmental delay)/知的障害(Intellectual Disability)の評価を行うガイドライン(2003年)では、少なくとも三世代にわたる家系図、出生前後の病歴、特徴的な身体所見、画像所見、核型検査などの遺伝学的検査、代謝系の検査、行動などについての評価を段階的に行うことが勧められている。<ref name=ref10><pubmed>21956720</pubmed></ref>そのなかで遺伝学的検査は3.5~10%に診断的意義を認め、形態異常が認められない症例でも行うべきであるとしている。<ref><pubmed>12578916</pubmed></ref>遺伝学的検査は段階的に行うことが推奨される(既知の原因探索を除く)。まず染色体異常の検出方法として、[[wikipedia:ja:Gバンド分染法|Gバンド分染法]]による核型検査、FISH法が挙げられ、これらの検査では約数Mb~数十Kbレベルの構造異常が検出可能である。より微細なゲノム構造異常、CNVの検出方法として、マイクロアレイ解析、MLPA法、[[wikipedia:ja:定量PCR法|定量PCR法]]などがあり、これらの検査では約数Kbレベルの構造異常を検出することができる。Michelsonら(2011年)の報告によると、核型検査での異常検出率は約4% (症候性は約19%)、サブテロメアFISHでの異常検出率は約3-6% (症候性が約5%)であった。<ref name=ref10 />マイクロアレイ解析での異常検出率は約7% (症候性は約11%)であり、欧米ではGバンド分染法に替わるFirst tier testとして提唱された。<ref name=ref2 />単一遺伝子異常のうち、[[FMR1]]遺伝子変異は軽症の患児の2%に認め、[[MECP2]]遺伝子変異は中等度から重度の女児の1.5%に認めており、家族歴のないID患者でもよく認めることから、ルーチンで行うことが推奨されている。<ref name=ref10 />
 遺伝学的検査は段階的に行うことが推奨される(既知の原因探索を除く)。まず染色体異常の検出方法として、[[wikipedia:ja:Gバンド分染法|Gバンド分染法]]による核型検査、FISH法が挙げられ、これらの検査では約数Mb~数十Kbレベルの構造異常が検出可能である。より微細なゲノム構造異常、CNVの検出方法として、マイクロアレイ解析、MLPA法、[[wikipedia:ja:定量PCR法|定量PCR法]]などがあり、これらの検査では約数Kbレベルの構造異常を検出することができる。Michelsonら(2011年)の報告によると、核型検査での異常検出率は約4% (症候性は約19%)、サブテロメアFISHでの異常検出率は約3-6% (症候性が約5%)であった。<ref name=ref10 />マイクロアレイ解析での異常検出率は約7% (症候性は約11%)であり、欧米ではGバンド分染法に替わるFirst tier testとして提唱された。<ref name=ref2 />


現時点でのIDの分子遺伝学的検査の流れを以下にまとめる(図5)。
 単一遺伝子異常のうち、[[FMR1]]遺伝子変異は軽症の患児の2%に認め、[[MECP2]]遺伝子変異は中等度から重度の女児の1.5%に認めており、家族歴のないID患者でもよく認めることから、ルーチンで行うことが推奨されている。<ref name=ref10 />


[[Image:図5. IDの分子遺伝学的検査のフローチャート.png|thumb|300px|図'''5. IDの分子遺伝学的検査のフローチャート''']]  
 現時点でのIDの分子遺伝学的検査の流れを以下にまとめる(図5)。
 
 症候性IDが疑われる症例は、[[wikipedia:ja:表現型|表現型]]より推定される既知の原因探索を行う。既知の原因を認めなかった場合は、非症候性IDと同様の段階的な原因探索を行う。非症候性IDが疑われる症例は、まず核型検査を行い染色体異常の有無を確認し、異常を認めなければ、より微細なゲノム構造異常をみるために、マイクロアレイ解析を行う。ゲノム構造異常を認めた場合は、その領域に存在する候補遺伝子の探索、あるいは切断点近傍の遺伝子解析を行う。


 症候性IDが疑われる症例は、[[wikipedia:ja:表現型|表現型]]より推定される既知の原因探索を行う。既知の原因を認めなかった場合は、非症候性IDと同様の段階的な原因探索を行う。非症候性IDが疑われる症例は、まず核型検査を行い染色体異常の有無を確認し、異常を認めなければ、より微細なゲノム構造異常をみるために、マイクロアレイ解析を行う。ゲノム構造異常を認めた場合は、その領域に存在する候補遺伝子の探索、あるいは切断点近傍の遺伝子解析を行う。ゲノム構造異常を認めない場合は、高密度[[SNP]]マイクロアレイを用いて連鎖解析や[[wikipedia:homozygosity mapping|homozygosity mapping]]を行い、候補領域の絞り込みを行う。候補領域内の責任遺伝子探索を続いて行うが、直接シーケンス法で遺伝子変異の探索を行う他に、コントロール配列と変異のある配列の二本鎖が解離する温度の違いを検出することで遺伝子変異の検出を行う、[[wikipedia:ja:高解像度融解曲線分析|高解像度融解曲線分析]] high-resolution melting curve (HRM) 法を用いることも有用である。近年では次世代シーケンサーを用いた全エクソーム・全ゲノムシーケンス解析を行うことで、高速で網羅的な解析が可能となり遺伝子特定のスピードが上がっている。  
 ゲノム構造異常を認めない場合は、高密度[[SNP]]マイクロアレイを用いて連鎖解析や[[wikipedia:homozygosity mapping|homozygosity mapping]]を行い、候補領域の絞り込みを行う。候補領域内の責任遺伝子探索を続いて行うが、直接シーケンス法で遺伝子変異の探索を行う他に、コントロール配列と変異のある配列の二本鎖が解離する温度の違いを検出することで遺伝子変異の検出を行う、[[wikipedia:ja:高解像度融解曲線分析|高解像度融解曲線分析]] high-resolution melting curve (HRM) 法を用いることも有用である。近年では次世代シーケンサーを用いた全エクソーム・全ゲノムシーケンス解析を行うことで、高速で網羅的な解析が可能となり遺伝子特定のスピードが上がっている。


==展望==
==展望==