「アパシー」の版間の差分

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 [[国際疾病分類第10版]]<ref name=ref5> World Health Organization International statistical classification of diseases and related health problems 10th revision, vol. 1<br>World Health Organization, Geneva, Switzerland (1992)</ref> においてもアパシーは疾患としての項目はなく、症状,徴候および異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないものの中にR45.3 [[無気力]]及び[[感情鈍麻]](アパシー)とあるに過ぎない。いずれにしてもアパシーの診断基準に統一されたものはまだないのが現状であり、アパシーの研究を進める上で統一された診断基準がないことは最も大きな問題であると考えられる。
 [[国際疾病分類第10版]]<ref name=ref5> World Health Organization International statistical classification of diseases and related health problems 10th revision, vol. 1<br>World Health Organization, Geneva, Switzerland (1992)</ref> においてもアパシーは疾患としての項目はなく、症状,徴候および異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないものの中にR45.3 [[無気力]]及び[[感情鈍麻]](アパシー)とあるに過ぎない。いずれにしてもアパシーの診断基準に統一されたものはまだないのが現状であり、アパシーの研究を進める上で統一された診断基準がないことは最も大きな問題であると考えられる。


 アパシーの重要度評価としては1991年にMarinらがApathy Evaluation Scale(アパシー評価尺度)を開発し、その後Starksteinらがその短縮版としてApathy Scaleを発表した(1992)。Apathy Scaleの日本語版は岡田らによってやる気スコア<ref name=ref8>'''岡田 和悟, 小林 祥泰, 青木 耕, 須山 信夫, 山口 修平'''<br>やる気スコアを用いた脳卒中後の意欲低下の評価<br>脳卒中, 1998, 20: 318-323  
 アパシーの重要度評価としては1991年にMarinらがApathy Evaluation Scale(アパシー評価尺度)を開発し<ref name=ref6><pubmed>1754629</pubmed></ref>、その後Starksteinらがその短縮版としてApathy Scaleを発表した<ref name=ref7><pubmed>1627973</pubmed></ref>。Apathy Scaleの日本語版は岡田らによってやる気スコア<ref name=ref8>'''岡田 和悟, 小林 祥泰, 青木 耕, 須山 信夫, 山口 修平'''<br>やる気スコアを用いた脳卒中後の意欲低下の評価<br>脳卒中, 1998, 20: 318-323</ref>として翻訳され、[http://cvddb.med.shimane-u.ac.jp/cvddb/ 脳卒中データバンクのホームページ]からpdfファイルのダウンロードが可能であり、使用できる。  
</ref>として翻訳され、[http://cvddb.med.shimane-u.ac.jp/cvddb/ 脳卒中データバンクのホームページ]からpdfファイルのダウンロードが可能であり、使用できる。  


== うつ状態との異同 ==
== うつ状態との異同 ==
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== 想定されるメカニズム  ==
== 想定されるメカニズム  ==


 アパシーは[[パーキンソン病]]やアルツハイマー病、脳卒中後患者など脳器質疾患患者で多い症状とされ<ref name="ref2" />、アパシーが引き起こされるメカニズムもモチベーションの障害などの症状の神経心理学的な特徴<ref name="ref18"><pubmed>16207933</pubmed></ref>、基礎疾患の病態<ref name="ref19"><pubmed>17765337</pubmed></ref> <ref name="ref20"><pubmed>15964021</pubmed></ref>や治療効果のある薬剤<ref name="ref21"><pubmed>12426416</pubmed></ref> <ref name="ref22"><pubmed>12670060</pubmed></ref>、脳卒中患者のアパシーにおける脳損傷部位、アパシー患者における[[PET]]や[[SPECT]]、[[MR spectroscopy]]などの機能的脳画像研究などさまざまな検討がなされている(表)。これらの検討からは[[ドーパミン]]や[[アセチルコリン]]などの[[神経伝達物質]]の異常やモチベーションに関連する神経回路として[[前頭葉]]−皮質下回路のどこかが損傷されるとアパシーが引き起こされるとの仮説が提唱39)されているが、報告によって結果には差異が見られる。この結果の差異は使用されている診断基準や重症度評価の違いもあるが、そもそもアパシーはさまざまな疾患で認められる臨床症状あるいは症候群であり、さまざまな原因によって類似した症状が引き起こされるためと考えられる。  
 アパシーは[[パーキンソン病]]やアルツハイマー病、脳卒中後患者など脳器質疾患患者で多い症状とされ<ref name="ref2" />、アパシーが引き起こされるメカニズムもモチベーションの障害などの症状の神経心理学的な特徴<ref name="ref18"><pubmed>16207933</pubmed></ref>、基礎疾患の病態<ref name="ref19"><pubmed>17765337</pubmed></ref> <ref name="ref20"><pubmed>15964021</pubmed></ref>や治療効果のある薬剤<ref name="ref21"><pubmed>12426416</pubmed></ref> <ref name="ref22"><pubmed>12670060</pubmed></ref>、脳卒中患者のアパシーにおける脳損傷部位、アパシー患者における[[PET]]や[[SPECT]]、[[MR spectroscopy]]などの機能的脳画像研究などさまざまな検討がなされている(表)。これらの検討からは[[ドーパミン]]や[[アセチルコリン]]などの[[神経伝達物質]]の異常やモチベーションに関連する神経回路として[[前頭葉]]−皮質下回路のどこかが損傷されるとアパシーが引き起こされるとの仮説が提唱<ref name=ref38><pubmed>12169339</pubmed></ref>されているが、報告によって結果には差異が見られる。この結果の差異は使用されている診断基準や重症度評価の違いもあるが、そもそもアパシーはさまざまな疾患で認められる臨床症状あるいは症候群であり、さまざまな原因によって類似した症状が引き起こされるためと考えられる。  


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