「アミロイドーシス」の版間の差分

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| '''原発性アミロイドーシス''' || 稀 || keine Assoziation zu anderen Grunderkrankungen<br /> Ursache unbekannt<br /> meist Ablagerungen vom sogenannten AL-Typ (s. u.)
| '''原発性アミロイドーシス''' || 稀 || 基礎疾患を伴わないアミロイドーシス<br /> meist Ablagerungen vom sogenannten AL-Typ (s. u.)
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| '''家族性アミロイドーシス''' || 稀 || tritt gehäuft in Kombination mit vererbten Erkrankungen auf<br /> z.&nbsp;B. familiäres Mittelmeerfieber<br /> meist Ablagerungen vom AA-Typ<br /> v.&nbsp;a. Niere betroffen
| '''家族性アミロイドーシス''' || 稀 || tritt gehäuft in Kombination mit vererbten Erkrankungen auf<br /> z.&nbsp;B. familiäres Mittelmeerfieber<br /> meist Ablagerungen vom AA-Typ<br /> v.&nbsp;a. Niere betroffen
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| '''二次性アミロイドーシス''' || am häufigsten || ausschließlich bei anderen Grunderkrankungen auftretend<br /> z.&nbsp;B. chronische infektiöse und nichtinfektiöse Entzündungen, Tumoren des lymphatischen Systems, längere Dialyse<br /> Ablagerungen verschiedenster Amyloid-Subtypen
| '''二次性アミロイドーシス''' || || 何らかの基礎疾患に合併して生じるアミロイドーシス<br /> 多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症とALアミロイドーシス<br /> 関節リウマチとAAアミロイドーシス<br /> 長期透析とAβ<sub>2</sub>Mアミロイドーシス
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| '''老人性全身アミロイドーシス''' || häufig || im Alter ohne zugrundeliegende Erkrankung auftretend<br /> Ablagerungen v.&nbsp;a. von AS-Amyloid<br /> hauptsächlich Herz und Gehirn betroffen
| '''老人性全身アミロイドーシス''' || || im Alter ohne zugrundeliegende Erkrankung auftretend<br /> Ablagerungen v.&nbsp;a. von AS-Amyloid<br /> hauptsächlich Herz und Gehirn betroffen
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2014年1月3日 (金) 19:07時点における版

富田 泰輔
東京大学 薬学研究科
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年11月27日 原稿完成日:2013年月日
担当編集委員:漆谷 真(京都大学 大学院医学研究科)

英:amyloidosis

 アミロイドamyloidコンゴーレッド染色でオレンジ色に染まり、偏光顕微鏡で緑色偏光を呈し、電子顕微鏡観察下では7~15nmの繊維構造を呈する物質である。アミロイドが、組織間隙に沈着して臓器の機能不全が生じる疾患をアミロイドーシス amyloidosisと呼ぶ[1]。アミロイドタンパク質の種類や臓器によって特徴が見られ、大きく全身性アミロイドーシス限局性アミロイドーシスに分類される。代表的な全身性アミロイドーシスには、全身性AAアミロイドーシス、家族性アミロイドニューロパチーが挙げられる。限局性アミロイドーシスには脳アミロイドーシスである、アルツハイマー病脳血管アミロイドアンギオパチー、遺伝性アミロイド性脳出血で、クロイツフェルト・ヤコブ病などが知られている。基本的には、アミロイドーシス発症の分子病態は凝集するアミロイドタンパク質の濃度上昇か、凝集能亢進によるものである。したがってアミロイドタンパク質の除去が根本治療戦略となる。

(編集コメント:元の抄録はアミロイドそのものの抄録でしたので、アミロイドーシスの内容としました)

アミロイドーシスとは

 アミロイドamyloidはコンゴーレッド染色でオレンジ色に染まり、偏光顕微鏡で緑色偏光を呈し、電子顕微鏡観察下では7~15nmの繊維構造を呈する物質として定義される。アミロイドが、組織間隙に沈着する疾患を総称してアミロイドーシス amyloidosisと呼ぶ[2]。多くの場合、前駆タンパクであるアミロイドタンパク質が折りたたみ障害を引き起こして重合し、βシート構造に富む不溶性線維として蓄積・凝集している

 沈着するアミロイドタンパク質の種類や臓器によって特徴が見られ、特に大きく全身性アミロイドーシスと限局性アミロイドーシスに分類されている。

(編集コメント:病名、原因物質と沈着するタンパク質を表か箇条書きに出来ないでしょうか。)

全身性アミロイドーシス

 アミロイドタンパク質が血中に存在する場合は全身性アミロイドーシスとなる[3]

 アミロイドタンパク質としては、モノクローナル免疫グロブリンL鎖由来のアミロイドALH鎖由来のアミロイドAH血清アミロイドAの代謝産物であるアミロイドA(AA)、β2ミクログロブリントランスサイレチンゲルソリンアポAIが知られている。いずれもアミロイドタンパク質の産生亢進、濃度上昇がアミロイドーシスを惹起していることが知られており、例えばアミロイドALでは免疫グロブリン産生細胞である形質細胞の過剰な増殖や腫瘍化がその原因である。また膠原病リウマチなどが原因となり全身性慢性炎症を基礎疾患として血清アミロイドAの濃度上昇が継続し、全身性AAアミロイドーシスを惹起する。さらに腎障害及び血液透析によってβ2ミクログロブリンの排泄、除去が不全となり、10年以上の長期透析の結果アミロイド沈着を招くことが知られている。

 遺伝子変異によって生じる全身性アミロイドーシスとして、家族性アミロイドニューロパチー Familial amyloid polyneuropathy(FAP)が知られている[4]。FAPはトランスサイレチン、ゲルソリン、アポAI、血清アミロイドA遺伝子変異に連鎖し、これらのアミロイドタンパク質が神経節を含む神経系および他の臓器に沈着する。また最近になり、全身性アミロイドーシスを惹起するプリオン遺伝子も同定された[5]。我が国を含めて、特にトランスサイレチン遺伝子変異によるFAPが最も多い[6]

 通常トランスサイレチンは四量体を形成しているが、遺伝子変異によって生じるアミノ酸置換によって不安定な単量体へ解離しやすくなり、なんらかの機序で重合して線維化すると考えられている。体内のトランスサイレチンは主として肝臓で産生されるが、肝実質にアミロイドは沈着しない。このためFAP患者の肝臓を移植により正常肝に換えることでアミロイドタンパク質である変異トランスサイレチンの消失が期待され、移植後多くの症例でFAPの臨床進行が停止するか、遅延することが確認されている。また2013年には、トランスサイレチンの四量体の解離及び変性を抑制することでアミロイド形成を阻害し、末梢神経障害の進行を抑制するVyndaqel(一般名:Tafamidis)が承認された。

限局性アミロイドーシス

 特定の臓器に限局して沈着を認める場合は限局性アミロイドーシスとなる。臓器に応じて分類され、脳アミロイドーシス[7]としてはアルツハイマー病や脳血管アミロイドアンギオパチーで蓄積が見られるアミロイドβタンパク質(Aβ)の他、シスタチンCの遺伝子変異[8]アイスランド型遺伝性アミロイド性脳出血で見出されている。

 またプリオンタンパク質の蓄積、沈着はクロイツフェルト・ヤコブ病やゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群などのプリオン病患者脳で報告されている。さらにBRI2遺伝子の変異によって生じるアミロイドペプチドABri、ADanはそれぞれBritish型、Danish型家族性認知症患者脳において蓄積している[9]。BRI2はその最C末端部がFurinによって切断され分泌されているが、野生型ペプチドには凝集性が認められない。しかし終止コドン近傍の遺伝子変異により野生型よりも僅かに長く、凝集性の高いペプチドが分泌され、これらがアミロイドとして脳実質に蓄積する。

 その他の限局性アミロイドーシスとしては、内分泌アミロイドーシスのアミロイドタンパク質としてはカルシトニンアミリンインスリン心房ナトリウム利尿ペプチドが同定されており、主にこれらのホルモンを分泌する細胞由来の腫瘍内で蓄積・沈着が観察される。また皮膚アミロイドーシスとしてはケラチンが、限局性結節性アミロイドーシスはアミロイドALがアミロイドタンパク質として蓄積することが報告されている。

タイプ 頻度 詳細
原発性アミロイドーシス 基礎疾患を伴わないアミロイドーシス
meist Ablagerungen vom sogenannten AL-Typ (s. u.)
家族性アミロイドーシス tritt gehäuft in Kombination mit vererbten Erkrankungen auf
z. B. familiäres Mittelmeerfieber
meist Ablagerungen vom AA-Typ
v. a. Niere betroffen
二次性アミロイドーシス 何らかの基礎疾患に合併して生じるアミロイドーシス
多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症とALアミロイドーシス
関節リウマチとAAアミロイドーシス
長期透析とAβ2Mアミロイドーシス
老人性全身アミロイドーシス im Alter ohne zugrundeliegende Erkrankung auftretend
Ablagerungen v. a. von AS-Amyloid
hauptsächlich Herz und Gehirn betroffen
Official
abb.
Amyloid type/Gene Description OMIM
AL amyloid light chain AL amyloidosis / multiple myeloma. Contains immunoglobulin light-chains (λ,κ) derived from plasma cells. 254500
AA SAA Serum amyloid A protein (SAA) is an acute-phase reactant which is deposited in the tissues in AA amyloidosis.
β amyloid/APP Found in Alzheimer disease brain lesions. 605714
ATTR transthyretin A mutant form of a normal serum protein that is deposited in the genetically determined familial amyloid polyneuropathies. TTR is also deposited in the heart in senile systemic amyloidosis.[10] Also found in Leptomeningeal amyloidosis. 105210
2M β2 microglobulin Not to be confused with , β2m is a normal serum protein, part of major histocompatibility complex (MHC) Class 1 molecules. Haemodialysis-associated amyloidosis
AIAPP amylin Found in the pancreas of patients with type 2 diabetes.
APrP prion protein In prion diseases, misfolded prion proteins deposit in tissues and resemble amyloid proteins. Some examples are Creutzfeldt–Jakob disease (humans), BSE or "mad cow disease" (cattle), and scrapie (sheep and goats). 123400
AGel GSN Finnish type amyloidosis 105120
ACys CST3 Cerebral amyloid angiopathy, Icelandic-type 105150
AApoA1 APOA1 Familial visceral amyloidosis 105200
AFib FGA Familial visceral amyloidosis 105200
ALys LYZ Familial visceral amyloidosis 105200
? OSMR Primary cutaneous amyloidosis 105250
ABri
ADan
ITM2B Cerebral amyloid angiopathy, British-type
Danish-type
176500
117300
APro prolactin Prolactinoma
AKer keratoepithelin Familial corneal amyloidosis
AANF atrial natriuretic factor Senile amyloid of atria of heart
ACal calcitonin Medullary carcinoma of the thyroid

病態生理

図1.クロスβ構造
トランスサイレチン部分ペプチドからなるクロスβ構造。PDB ID: 2M5N

(編集コメント:結晶構造は回転できる物に取り替えました。これで良いかご確認下さい。SafariではWebGLをonにして下さい。)

構造

 各アミロイドタンパク質には一定の共通したアミノ酸配列や構造は見られないが、アミロイド線維になると共通してクロスβ構造と呼ばれる形態をとっている[11][12][13]。これはアミロイド線維を構成するポリペプチド鎖が線維軸と垂直方向にβストランドとなり、かつ線維軸方向にβシート構造をとっているものである。このような構造学的特徴はイメージング技術に応用されつつあり、線維に特異的に結合する低分子化合物を利用したアミロイドPETスキャンが可能となった[14][15]

線維形成過程と伝播

図2.アミロイド線維形成過程
アミロイド線維形成過程におけるシードの役割
図3.アルツハイマー病患者脳由来のAβ線維構造
患者脳由来アミロイドから伸長したアミロイドβタンパク質の分子構造。PDB ID: 2M4J

(編集コメント:長かったので、小見出しをつけました。内容に照らして適当かご確認下さい。)

 アミロイド線維形成過程では、多くの場合正常なフォールディングをうけているアミロイドタンパク質が何らかの理由で一旦部分変性し、会合することが必要である。また線維形成過程はその鋳型となるシード(種、核)の形成を契機として急速に進んでいくことが示されている[16]。すなわち、このシードの両端の末端にアミロイドタンパク質が結合して線維が伸長していくと考えられている。

 このようなシード依存性伸長反応モデルは、プリオンタンパク質が示す伝播能力とも関連していると考えられている。すなわち、一旦異常構造をとったタンパク質がシードとなり、別の個体におけるアミロイドタンパク質の構造及び性質を変化させていくというモデルである[17]。またシードへの組み込みはアミロイドタンパク質が同様の構造を取りうるかどうかに依存する。プリオンの感染性にはごく僅かなアミノ酸の違いに起因する「種の壁」が存在するが、この現象も一次配列の違いに依存する各種のプリオンが形成するシード構造の違いによって説明できる。

 最近ではアミロイドを形成しうるアミロイドタンパク質がいずれもプリオン様の伝播能力を示す可能性が推測されている[18][19]。実際、全身性アミロイドーシスの一つであるAAアミロイドーシスはモデルマウスを用いた伝播実験が確認されているが、野生のチーターにおいてAAアミロイドーシス発症頻度が近年上昇していることが示されていた。そして興味深いことに、AAアミロイドーシスを発症した個体の糞に伝播性が極めて高いアミロイドA線維が含まれていることが明らかとなった[20]

 糞便を介したアミロイドーシス伝播は、野生動物におけるプリオン病(ヒツジおけるスクレイピーシカにおけるChronic wasting disease)の水平伝播メカニズムを説明できるものとして注目を集めている。特に末梢神経やリンパ節を介したプリオンの伝播に関しては、食物摂取などを介した末梢組織から生じうる限局性アミロイドーシスの発症機構を担っている可能性がある[21]。またAβについても、アルツハイマー病モデルマウスの腹腔内にAβ線維を注入すると大脳皮質でのAβの沈着が亢進することも示されている[22]

 このようなタンパク質凝集物の細胞間伝播という概念は必ずしもアミロイドの形成には依存しておらず、凝集して線維を形成するタンパク質に普遍的に観察される可能性があり、最近では様々な神経変性疾患において細胞内に蓄積するタンパク質(タウシヌクレインTDP-43など)においても伝播能力の存在が確認されつつある[23]。また酵母などにおいてはプリオン様タンパク性因子による形質転換が報告されており、タンパク質の構造変化に依存した形質の伝播様式として注目されている[24]

 一方、アルツハイマー病患者脳から得られたAβ線維の構造解析がなされ、in vitroで凝集させた構造とは異なる凝集形態を示していたことから、in vivoにおける凝集プロセスの違いが指摘されており[25]、伝播メカニズムとの関係の解明が待たれている。

細胞毒性

 アミロイド線維が発揮する細胞障害および毒性はアミロイドーシスにおける臓器不全の基本的病態と言える。アミロイド沈着後に生じる疾患プロセスを抑制する治療薬の開発のためにも、その理解は必須である。しかしアミロイドタンパク質のどのような構造、分子状態が毒性を発揮するのかについては未だ明確ではない。近年ではAβとFAD変異がもたらす分子病態の解析から、アミロイド線維そのものではなく、その中間体となるオリゴマー[26]に起因しているというオリゴマー仮説が提唱されている。

 このアミロイドタンパク質の凝集物がどのように細胞傷害を惹起しているか、という点については、脂質二重膜の障害、酸化的ストレス小胞体ストレスの惹起、ミトコンドリア障害などが想定されている[27]。興味深いことに、全く異なるアミロイド原性タンパク質であるAβとADanが脳実質に蓄積するそれぞれの疾患モデルマウスを、神経障害と関連するtauトランスジェニックマウスと交配すると、いずれの場合もtau病理が亢進されることが示された[28]。これは少なくとも大脳皮質に沈着するアミロイドが示す神経細胞傷害プロセスの下流には共通性があることを示唆している。すなわち、アミロイド原性タンパク質の種類を問わず、どのような線維がどの細胞や臓器に沈着するかによって最終的にアミロイドーシスにおける病態が決定する可能性が考えられている。またAβが細胞外から神経細胞毒性を呈するために毒性受容体が想定さられており、NMDA型およびAMPA型グルタミン酸受容体、α7ニコチン性アセチルコリン受容体インスリン受容体RAGE、プリオンタンパク質やEphB2LilrB2などがその候補として挙げられている。

関連項目

参考文献

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