「サイクリックAMP応答配列結合タンパク質」の版間の差分

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== CREBと結合する共活性化因子 ==
== CREBと結合する共活性化因子 ==
 CREBは転写因子であるが単独での転写活性化能力は低く、CREB転写活性の大部分はCREBのKID領域やbZIP領域と結合する共活性化因子(コアクチベーター)との相互作用によって担われている。CREBと共活性化因子の相互作用は刺激依存的に制御されている。
 CREBは転写因子であるが単独での転写活性化能力は低く、CREB転写活性の大部分はCREBのKID領域やbZIP領域と結合する共活性化因子([[コアクチベーター]])との相互作用によって担われている。CREBと共活性化因子の相互作用は刺激依存的に制御されている。


=== CREB結合タンパク質(CREB-binding protein, CBP)とp300 ===
=== CREB結合タンパク質(CREB-binding protein, CBP)とp300 ===
 細胞外からの刺激を受けない基底状態においてもCREBは標的遺伝子のプロモーター領域のCREに結合している<ref name=Impey2004><pubmed> 15620361 </pubmed></ref> <ref name=Zhang2005><pubmed>15753290</pubmed></ref>[13, 14]。刺激によってゲノムに結合しているCREBのKID領域のSer133がリン酸化修飾を受けると、CREB結合タンパク質CBPとの親和性が上昇し、CREBとCBPが複合体を形成する<ref name=Mayr2001/>[3]。CBPはヒストンアセチル化活性を持つため、ヒストンとDNAとの相互作用を弱めてCREB結合領域周辺のクロマチン構造を変化させて転写を促進する。また、CREB-CBP複合体はRNAポリメラーゼII複合体との相互作用を介して転写を増強する。なお、脊椎動物ではCBP遺伝子(CREBBP)のパラローグとしてp300遺伝子(EP300)が存在する。p300はCBPと構造的に類似しており、CREBに対してCBP同様に作用すると考えらえるが、生体におけるCBP/p300パラローグの機能差の有無や生理的意義については不明な点が多い。
 細胞外からの刺激を受けない基底状態においてもCREBは標的遺伝子のプロモーター領域のCREに結合している<ref name=Impey2004><pubmed> 15620361 </pubmed></ref> <ref name=Zhang2005><pubmed>15753290</pubmed></ref>。刺激によってゲノムに結合しているCREBのKID領域のSer133がリン酸化修飾を受けると、CREB結合タンパク質CBPとの親和性が上昇し、CREBとCBPが複合体を形成する<ref name=Mayr2001/>。CBPは[[ヒストンアセチル化活性]]を持つため、ヒストンとDNAとの相互作用を弱めてCREB結合領域周辺の[[クロマチン]]構造を変化させて転写を促進する。また、CREB-CBP複合体は[[RNAポリメラーゼ]]II複合体との相互作用を介して転写を増強する。なお、脊椎動物ではCBP遺伝子(CREBBP)のパラローグとして[[p300]]遺伝子(EP300)が存在する。p300はCBPと構造的に類似しており、CREBに対してCBP同様に作用すると考えらえるが、生体におけるCBP/p300パラローグの機能差の有無や生理的意義については不明な点が多い。


=== CREBコアクチベーター(CREB-regulated transcription coactivators, CRTCs)  ===
=== CREBコアクチベーター(CREB-regulated transcription coactivators, CRTCs)  ===
 CREBのbZIP領域は2量体形成およびDNA結合に関わるドメインであるが、この領域に結合する共活性化因子としてCREBコアクチベーターCRTCsが知られる<ref name=Conkright2003><pubmed> 14536081 </pubmed></ref>[15]。哺乳類においてCRTCsは3種(CRTC1、CRTC2およびCRTC3)からなる遺伝子ファミリーを形成しているが、神経系では主にCRTC1およびCRTC2が発現している。基底状態においてCRTCsはリン酸化修飾されており、14-3-3タンパク質と複合体を形成して細胞質に存在している。ここにcAMPやCa<sup>2+</sup>濃度上昇などの刺激が入ると、カルシニューリンによってCRTCsは脱リン酸化されて14-3-3から解離し、速やかに核内に移行してCREBと結合する。CRTCのbZIP領域への結合はCREBのCRE結合活性を増強し、また、CREB-CRTC複合体がTFIID複合体と効率的に相互作用することにより、CREBを介した転写活性を増強すると考えられるが<ref name=Conkright2003/>[15]、詳細は不明である。なお、CREB-CRTC相互作用はKID領域のSer133リン酸化とは関係なく制御されており、CBP/p300とは独立した刺激依存的なCREB転写活性機構であると考えられている<ref><pubmed>17476304</pubmed></ref><ref><pubmed>15454081</pubmed></ref>[16, 17]
 CREBのbZIP領域は2量体形成およびDNA結合に関わるドメインであるが、この領域に結合する共活性化因子としてCREBコアクチベーターCRTCsが知られる<ref name=Conkright2003><pubmed> 14536081 </pubmed></ref>。哺乳類においてCRTCsは3種(CRTC1、CRTC2およびCRTC3)からなる遺伝子ファミリーを形成しているが、神経系では主にCRTC1およびCRTC2が発現している。基底状態においてCRTCsはリン酸化修飾されており、14-3-3タンパク質と複合体を形成して細胞質に存在している。ここにcAMPやCa<sup>2+</sup>濃度上昇などの刺激が入ると、[[カルシニューリン]]によってCRTCsは脱リン酸化されて14-3-3から解離し、速やかに核内に移行してCREBと結合する。CRTCのbZIP領域への結合はCREBのCRE結合活性を増強し、また、CREB-CRTC複合体がTFIID複合体と効率的に相互作用することにより、CREBを介した転写活性を増強すると考えられるが<ref name=Conkright2003/>、詳細は不明である。なお、CREB-CRTC相互作用はKID領域のSer133リン酸化とは関係なく制御されており、CBP/p300とは独立した刺激依存的なCREB転写活性機構であると考えられている<ref><pubmed>17476304</pubmed></ref><ref><pubmed>15454081</pubmed></ref>。


== 標的遺伝子 ==
== 標的遺伝子 ==