「シンタキシン」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/tnishiki/?lang=japanese 西木 禎一]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/tnishiki/?lang=japanese 西木 禎一]</font><br>
''岡山大学 大学院 医歯薬学総合研究科 細胞生理学分野''<br>
''岡山大学 大学院 医歯薬学総合研究科 細胞生理学分野''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年12月22日 原稿完成日:2015年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年12月22日 原稿完成日:2015年2月4日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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同義語:p35, HPC-1, synaptocanalin
同義語:p35, HPC-1, synaptocanalin


{{box|text= シンタキシンは、開口放出を含め細胞内小胞輸送において膜融合に関わるタンパク質ファミリーおよびそのメンバーである。ヒトを含む哺乳類では、少なくとも16種類のアイソフォームが同定されている。基本的に分子の大部分を細胞質に向けて存在する非常にαへリックスに富んだ分子量約35,000の膜タンパク質である。アイソフォームの中には脳に特異的に発現するもあれば、脳を含め広く生体内に分布しているものもある。神経細胞におけるシンタキシンの具体的な役割はアイソフォームによって異なり、シナプス前終末からの神経伝達物質の開口放出、電位依存性カルシウムチャネルの機能調節、シナプス後膜へのAMPA型グルタミン酸受容体の輸送調節、神経突起の伸長など多岐にわたる。脳での発現が認められていないアイソフォームもいくつかあるが、この項ではそれらを含め遺伝子が単離されているシンタキシン全般について概説するとともに、シナプス伝達に重要な役割を果たしているアイソフォームを中心に詳しく述べる。}}
{{box|text= シンタキシンは、開口放出を含め細胞内小胞輸送において膜融合に関わるタンパク質ファミリーおよびそのメンバーである。ヒトを含む哺乳類では、少なくとも16種類のアイソフォームが同定されている。基本的に分子の大部分を細胞質に向けて存在する非常にαへリックスに富んだ分子量約35,000の膜タンパク質である。多くのアイソフォームは脳を含め広く生体内に分布している一方で、脳に特異的に発現するものもある。神経細胞におけるシンタキシンの役割はアイソフォームによって異なり、神経伝達物質の開口放出、カルシウムチャネルの機能調節、シナプス後膜へのグルタミン酸受容体の輸送調節、神経突起の伸長など多岐にわたる。脳での発現が認められていないアイソフォームもあるが、それらを含めシンタキシンファミリーについて概説するとともに、神経機能に重要な役割を果たしているアイソフォームを中心に詳しく説明する。}}


{{Pfam_box
{{Pfam_box
| Symbol = シンタキシン
| Symbol = シンタキシン
| Name = シンタキシン
| Name = シンタキシン
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| caption = シンタキシン1AのN末端領域<ref name=ref1></ref>
| caption = シンタキシン1AのN末端領域<ref name=ref1></ref>
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== シンタキシンとは ==
== シンタキシンとは ==
 シンタキシンは、細胞内小胞輸送において膜融合をつかさどるタンパク質ファミリーおよびそのメンバーである。最初に同定されたアイソフォームは、[[シナプス小胞]]タンパク質[[シナプトタグミン]]と結合する分子量約35,000の内在性[[膜タンパク質]]p35Aおよびp35Bとして[[ラット]]脳可溶化画分から単離された<ref name=ref2><pubmed>1321498</pubmed></ref>。両者は異なる遺伝子によりコードされているが、どちらも288個のアミノ酸からなり、その配列は約80%の相同性をもつ。[[シナプス]]小胞のドッキングと[[開口放出]]に関わるとの予測から、「順番に整理して一緒に並べること」を意味する古代ギリシャ語σψνταξισ (syntaxis) にちなみシンタキシンsyntaxinと命名された。ほぼ同時期に複数のグループにより同定されたので、HPC-1<ref><pubmed>1587842 </pubmed></ref>あるいはsynaptocanalin<ref><pubmed>9137572</pubmed></ref>とも呼ばれる。
 シンタキシンは、細胞内[[小胞輸送]]において膜融合をつかさどるタンパク質ファミリーおよびそのメンバーである。最初に同定されたアイソフォームは、[[シナプス小胞]]タンパク質[[シナプトタグミン]]と結合する分子量約35,000の[[膜タンパク質]]p35Aおよびp35Bとして[[ラット]]脳から単離された<ref name=ref2><pubmed>1321498</pubmed></ref>。両者は異なる遺伝子によりコードされているが、どちらも288個のアミノ酸からなり、その配列は約80%の相同性をもつ。[[シナプス]]小胞のドッキングと[[開口放出]]に関わるとの予測から、「順番に整理して一緒に並べること」を意味する古代ギリシャ語σψνταξισ (syntaxis) にちなみシンタキシンsyntaxinと命名された。ほぼ同時期に複数のグループにより同定されたので、HPC-1<ref><pubmed>1587842 </pubmed></ref>あるいはsynaptocanalin<ref><pubmed>9137572</pubmed></ref>とも呼ばれる。


 シンタキシンファミリーは、[[SNARE]] ([[soluble ''N''-etylmaleimide sensitive fusion protein attachment protein receptor]]の略) と総称される[[膜融合]]関連タンパク質スーパーファミリーの一員でもある。SNAREは、輸送小胞に局在する[[v-SNARE]] (vはvesicularのv) と、標的膜に存在しv-SNAREの受容体となる[[t-SNARE]] (tはtarget-membraneのt) の2種類に大別される<ref><pubmed>8455717</pubmed></ref>。シンタキシンはその局在(後述)からt-SNAREに属するとともに、SNAREモチーフの中央に[[グルタミン]]残基を持つことから、そのアミノ酸一文字表記にならい[[Q-SNARE]]とも分類される<ref><pubmed>9861047</pubmed></ref>。
 シンタキシンファミリーは、[[SNARE]] ([[soluble ''N''-etylmaleimide sensitive fusion protein attachment protein receptor]]の略) と総称される[[膜融合]]関連タンパク質スーパーファミリーの一員でもある。SNAREは、輸送小胞に局在する[[v-SNARE]] (vはvesicularのv) と、標的膜に存在しv-SNAREの受容体となる[[t-SNARE]] (tはtarget-membraneのt) の2種類に大別される<ref><pubmed>8455717</pubmed></ref>。シンタキシンはその局在(後述)からt-SNAREに属するとともに、SNAREモチーフの中央に[[グルタミン]]残基を持つことから、そのアミノ酸一文字表記にならい[[Q-SNARE]]とも分類される<ref><pubmed>9861047</pubmed></ref>。
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[[ファイル:Syntaxin Fig0.png|300px|サムネイル|右|'''図1. 哺乳類のシンタキシンの系統樹'''<br>文献<ref name=ref7><pubmed>11737951</pubmed></ref>の図を基に改変、作成。]]
[[ファイル:Syntaxin Fig0.png|300px|サムネイル|右|'''図1. 哺乳類のシンタキシンの系統樹'''<br>文献<ref name=ref7><pubmed>11737951</pubmed></ref>の図を基に改変、作成。]]


 ヒトでは少なくとも16種類のアイソフォームが存在し、そのうちの多くが線虫から哺乳類に至るまで進化的に保存されている(図1、表)<ref name=ref7><pubmed>11737951</pubmed></ref>。なお、シンタキシン12、13、および14はオルソログである。また、ESTデータベースの検索結果から2種類のcDNA断片がシンタキシンのアイソフォームとして同定され、それぞれシンタキシン9([http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucest/1721869/?report=genbank AA150357])および15([http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucest/1875469/ AA244750])と命名されている<ref><pubmed>9144278</pubmed></ref>。
 [[ヒト]]では少なくとも16種類のアイソフォームが存在し、そのうちの多くが[[線虫]]から[[哺乳類]]に至るまで進化的に保存されている('''図1'''、'''表''')<ref name=ref7><pubmed>11737951</pubmed></ref>。なお、シンタキシン12、13、および14はオルソログである。また、ESTデータベースの検索結果から2種類のcDNA断片がシンタキシンのアイソフォームとして同定され、それぞれシンタキシン9([http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucest/1721869/?report=genbank AA150357])および15([http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucest/1875469/ AA244750])と命名されている<ref><pubmed>9144278</pubmed></ref>。


{| class="wikitable"   
{| class="wikitable"   
|+ 表.シンタキシンアイソフォームの発現分布と主な動物種のホモログのGENE ID
|+ 表.シンタキシンアイソフォームの発現分布と主な[[動物]]種のホモログのGENE ID
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|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |アイソフォーム<sup>注)</sup>
|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |アイソフォーム<sup>注)</sup>
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|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |細胞内局在
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|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |ヒト
|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |ヒト
|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |マウス
|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |[[マウス]]
|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |ラット
|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |[[ラット]]
|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |ハエ
|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |[[ショウジョウバエ]]
|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |線虫
|style="background-color:#d3d3d3; text-align:center" |線虫


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|<b>1A</b><ref name=ref2><pubmed>1321498</pubmed></ref>
|<b>[[シンタキシン1A|1A]]</b><ref name=ref2><pubmed>1321498</pubmed></ref>
|神経組織、分泌組織
|神経組織、[[分泌]]組織
|[[細胞膜]]
|[[細胞膜]]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=6804 6804]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=6804 6804]
61行目: 61行目:
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=176743 176743]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=176743 176743]
|-
|-
|<b>1B</b><ref name=ref2><pubmed>1321498</pubmed></ref>
|<b>[[シンタキシン1B|1B]]</b><ref name=ref2><pubmed>1321498</pubmed></ref>
|神経組織、分泌組織
|神経組織、分泌組織
|細胞膜
|細胞膜
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|なし
|なし
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|2<ref name=ref9><pubmed>7690687</pubmed></ref>
|[[シンタキシン2|2]]<ref name=ref9><pubmed>7690687</pubmed></ref>
(別名エピモルフィン)
(別名[[エピモルフィン]])
|広範な器官
|広範な器官
(特に脾臓、肝臓、精巣)
(特に[[脾臓]]、[[肝臓]]、[[精巣]])
|細胞膜
|細胞膜
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=2054 2054]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=2054 2054]
81行目: 81行目:
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=181505 181505]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=181505 181505]
|-
|-
|<b>3</b><ref name=ref9><pubmed>7690687</pubmed></ref>
|<b>[[シンタキシン3|3]]</b><ref name=ref9><pubmed>7690687</pubmed></ref>
|広範な器官
|広範な器官
(特に脾臓、肺、腎臓)
(特に脾臓、肺、[[腎臓]])
|細胞膜
|細胞膜
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=6809 6809]  
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=6809 6809]  
91行目: 91行目:
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=3565871 3565871]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=3565871 3565871]
|-
|-
|<b>4</b><ref name=ref9><pubmed>7690687</pubmed></ref>
|<b>[[シンタキシン4|4]]</b><ref name=ref9><pubmed>7690687</pubmed></ref>
|広範な器官
|広範な器官
(特に心臓)
(特に[[心臓]])
|細胞膜
|細胞膜
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=6810 6810]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=6810 6810]
101行目: 101行目:
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=177647 177647]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=177647 177647]
|-
|-
|5<ref name=ref9><pubmed>7690687</pubmed></ref>
|[[シンタキシン5|5]]<ref name=ref9><pubmed>7690687</pubmed></ref>
|広範な器官
|広範な器官
(特に脾臓、肝臓、精巣)
(特に脾臓、肝臓、精巣)
|小胞体–ゴルジ体中間区画
|[[小胞体]]–[[ゴルジ体]]中間区画
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=6811 6811]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=6811 6811]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=56389 56389]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=56389 56389]
111行目: 111行目:
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=179611 179611]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=179611 179611]
|-
|-
|<b>6</b><ref><pubmed>8663448</pubmed></ref>
|<b>[[シンタキシン6|6]]</b><ref><pubmed>8663448</pubmed></ref>
|広範な器官
|広範な器官
|トランスゴルジ網(TGN)
|[[トランスゴルジ網]](TGN)
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=10228 10228]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=10228 10228]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=58244 58244]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=58244 58244]
120行目: 120行目:
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=259698 259698]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=259698 259698]
|-
|-
|<b>7</b><ref><pubmed>9358037</pubmed></ref>
|<b>[[シンタキシン7|7]]</b><ref><pubmed>9358037</pubmed></ref>
|広範な器官
|広範な器官
|初期および後期エンドソーム
|初期および後期[[エンドソーム]]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=8417 8417]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=8417 8417]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=53331 53331]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=53331 53331]
129行目: 129行目:
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=172718 172718]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=172718 172718]
|-
|-
|<b>8</b><ref><pubmed>9852078</pubmed></ref><ref name=ref13><pubmed>9852078</pubmed></ref>
|<b>[[シンタキシン8|8]]</b><ref name=ref13><pubmed>9852078</pubmed></ref>
|広範な器官
|広範な器官
(特に心臓)
(特に心臓)
|初期および後期エンドソーム
|初期および[[後期エンドソーム]]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=9482 9482]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=9482 9482]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=55943 55943]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=55943 55943]
139行目: 139行目:
|なし
|なし
|-
|-
|10<ref><pubmed>9446797</pubmed></ref>
|[[シンタキシン10|10]]<ref><pubmed>9446797</pubmed></ref>
|広範な器官
|広範な器官
(特に心臓、骨格筋、膵臓)
(特に心臓、[[骨格筋]]、[[膵臓]])
|トランスゴルジ網(TGN)
|トランス[[ゴルジ]]網(TGN)
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=8677 8677]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=8677 8677]
|なし
|なし
149行目: 149行目:
|なし
|なし
|-
|-
|11<ref><pubmed>9571206</pubmed></ref>
|[[シンタキシン11|11]]<ref><pubmed>9571206</pubmed></ref>
|広範な器官
|広範な器官
(特に心臓、胎盤)
(特に心臓、[[胎盤]])
|トランスゴルジ網(TGN)
|トランスゴルジ網(TGN)
後期エンドソーム
後期エンドソーム
160行目: 160行目:
|なし
|なし
|-
|-
|<b>12</b><ref><pubmed>9507000</pubmed></ref>/<b>13</b><ref><pubmed>9553086</pubmed></ref>/14
|<b>[[シンタキシン12|12]]</b><ref><pubmed>9507000</pubmed></ref>/<b>[[シンタキシン13|13]]</b><ref><pubmed>9553086</pubmed></ref>/[[シンタキシン14|14]]


|広範な器官
|広範な器官
170行目: 170行目:
|なし
|なし
|-
|-
|<b>16</b><ref><pubmed>9464276</pubmed></ref>
|<b>[[シンタキシン16|16]]</b><ref><pubmed>9464276</pubmed></ref>
|広範な器官
|広範な器官
(特に心臓、膵臓)
(特に心臓、膵臓)
180行目: 180行目:
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=175712 175712]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=175712 175712]
|-
|-
|<b>17</b><ref name=ref13><pubmed>9852078</pubmed></ref>
|<b>[[シンタキシン17|17]]</b><ref name=ref13><pubmed>9852078</pubmed></ref>
|広範な器官
|広範な器官
(特に肝臓、精巣)
(特に肝臓、精巣)
190行目: 190行目:
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=172663 172663]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=172663 172663]
|-
|-
|<b>18</b><ref><pubmed>10788491</pubmed></ref>
|<b>[[シンタキシン18|18]]</b><ref><pubmed>10788491</pubmed></ref>
|少なくとも脳
|少なくとも脳
|小胞体
|小胞体
199行目: 199行目:
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=179055 179055]
|[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=179055 179055]
|-
|-
|19
|[[シンタキシン19|19]]
|不明
|不明
|不明
|不明
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[[ファイル:Syntaxin Fig1.png|300px|サムネイル|右|'''図2. 代表的なシンタキシンのドメイン構造''']]
[[ファイル:Syntaxin Fig1.png|300px|サムネイル|右|'''図2. 代表的なシンタキシンのドメイン構造''']]


 シンタキシンは、約250から300アミノ酸からなる膜タンパク質である(膜貫通ドメインを欠くアイソフォーム11を除く)。非常にαへリックに富む複数のドメインがリンカーでつながれた構造をしている(図2)。カルボキシ末端の一箇所の膜貫通ドメイン(アイソフォーム7は二箇所)が膜に埋め込まれ、分子の大部分を細胞質に向けて存在している。
 シンタキシンは、約250から300アミノ酸からなる膜タンパク質(膜貫通ドメインを欠くアイソフォーム11を除く)である。主にαへリックスからなる複数のドメインがリンカーでつながれた構造をしている('''図2''')。カルボキシ末端の一箇所の膜貫通ドメイン(アイソフォーム7は二箇所)が膜に埋め込まれ、分子の大部分を細胞質に向けて存在している。


 アイソフォーム6、8、10以外のシンタキシンは、アミノ末端に[[Munc-18]]との結合に関わる約20アミノ酸からなるNペプチドモチーフをもつ(後述)<ref><pubmed>21139055</pubmed></ref>。
 アイソフォーム6、8、10以外のシンタキシンは、アミノ末端に[[Munc-18]]との結合に関わる約20のアミノ酸残基からなるNペプチドモチーフをもつ(後述)<ref><pubmed>21139055</pubmed></ref>。


 アミノ末端側のHabcと呼ばれるドメインでは、3本の[[wikipedia:ja:αへリックス|αへリックス]]が逆平行に結合し束になっている<ref name=ref1><pubmed>9753330</pubmed></ref><ref><pubmed>10913252</pubmed></ref>。Habcに続くリンカーは非常にフレキシブルで<ref><pubmed>12680753</pubmed></ref>、Habcは次のH3ドメインに折り重なることよりシンタキシンの膜融合能を制御する負の調節ドメインとして働く<ref><pubmed>10535962</pubmed></ref>。
 アミノ末端側のHabcと呼ばれるドメインでは、3本の[[wj:αへリックス|αへリックス]]が逆平行に結合し束になっている<ref name=ref1><pubmed>9753330</pubmed></ref><ref><pubmed>10913252</pubmed></ref>。Habcに続くリンカーはフレキシブルで<ref><pubmed>12680753</pubmed></ref>、Habcは次のH3ドメインに折り重なることよりシンタキシンの膜融合能を制御する負の調節ドメインとして働く<ref><pubmed>10535962</pubmed></ref>。


 シンタキシンのカルボキシ末端側3分の1は、膜融合能を発揮するのに必要最小限の領域である。SNAREモチーフを含むH3ドメインは、対になる他のSNAREと結合し、膜融合能をもつ[[SNARE複合体]]を形成する<ref name=ref9100028><pubmed>9100028</pubmed></ref>。実際、H3ドメインと膜貫通ドメインからなるシンタキシン1の組換えフラグメントを[[SNAP-25]]ととともに再構成した人工脂質小胞は、[[シナプトブレビン]]2を再構成した人工脂質小胞と自発的に融合する<ref><pubmed>9529252</pubmed></ref>。
 シンタキシンのカルボキシ末端側3分の1は、膜融合能を発揮するのに必要最小限の領域である。SNAREモチーフを含むH3ドメインは対になる他のSNAREと結合し、膜融合能をもつ[[SNARE複合体]]を形成する<ref name=ref9100028><pubmed>9100028</pubmed></ref>。実際、H3ドメインと膜貫通ドメインからなるシンタキシン1の組換えフラグメントを[[SNAP-25]]ととともに再構成した人工脂質小胞は、[[シナプトブレビン]]2を再構成した人工脂質小胞と自発的に融合する<ref><pubmed>9529252</pubmed></ref>。


 単量体のシンタキシンは、活性化状態と不活性状態を移行する<ref><pubmed>14668446</pubmed></ref>。活性化状態では、HabcとH3が解離したいわゆる開いた構造をとり、対になるSNAREと結合できる。これに対し、HabcがH3に折り重なった閉じた構造になると不活性型となり、SNARE複合体を形成できない<ref><pubmed>18458823</pubmed></ref><ref><pubmed>10449403 </pubmed></ref>。
 単量体のシンタキシンは、活性化状態と不活性状態を移行する<ref><pubmed>14668446</pubmed></ref>。活性化状態では、HabcとH3が解離したいわゆる開いた構造をとり、対になるSNAREと結合できる。これに対し、HabcがH3に折り重なった閉じた構造になると不活性型となり、SNARE複合体を形成できない<ref><pubmed>18458823</pubmed></ref><ref><pubmed>10449403 </pubmed></ref>。


== 生体内および細胞内分布 ==
== 生体内および細胞内分布 ==
 生体内において、シンタキシンの大部分のアイソフォームは広範な器官に分布しており、脳に発現しているアイソフォームもある(表)。一方、シンタキシン1Aおよび1Bは、脳などの神経組織および副腎髄質などの分泌組織に特異的に発現している。
 生体内においてシンタキシンの大部分のアイソフォームは広範な器官に分布しており、そのうちアイソフォーム3、4、6、7、8、12/13、16、17および18は脳にも発現している(表)。一方、シンタキシン1Aおよび1Bは、脳などの神経組織および副腎髄質などの分泌組織に特異的に発現している。


 神経系においてシンタキシン1は、[[大脳皮質]]、[[海馬]]、[[小脳]]、[[脊髄]]、[[網膜]]のシナプスが豊富な領域に観察される<ref><pubmed>8361334</pubmed></ref>。[[有郭乳頭味蕾]]<ref><pubmed>17447252</pubmed></ref>、[[蝸牛]]内の[[コルチ器]]<ref><pubmed>10103074</pubmed></ref>、[[松果体]]細胞<ref><pubmed>8593674</pubmed></ref> にも存在する。神経系だけでなく、発生学的にニューロンと同じ外胚葉由来の[[副腎髄質]]にも発現している<ref name=ref7818508><pubmed>7818508</pubmed></ref>。[[中枢神経系]]および[[末梢神経系]]の両方において、1Aと1Bの分布は異なる<ref><pubmed>10197765</pubmed></ref><ref><pubmed>8996803</pubmed></ref>。
 神経系においてシンタキシン1は、[[大脳皮質]]、[[海馬]]、[[小脳]]、[[脊髄]]、[[網膜]]のシナプスが豊富な領域に観察される<ref><pubmed>8361334</pubmed></ref>。[[有郭乳頭味蕾]]<ref><pubmed>17447252</pubmed></ref>、[[蝸牛]]内の[[コルチ器]]<ref><pubmed>10103074</pubmed></ref>、[[松果体]]細胞<ref><pubmed>8593674</pubmed></ref> にも存在する。神経系だけでなく、発生学的にニューロンと同じ外胚葉由来の[[副腎髄質]]にも発現している<ref name=ref7818508><pubmed>7818508</pubmed></ref>。[[中枢神経系]]および[[末梢神経系]]の両方において、1Aと1Bの分布は異なる<ref><pubmed>10197765</pubmed></ref><ref><pubmed>8996803</pubmed></ref>。


 細胞内において、16種類のアイソフォームのうちシンタキシン1(AおよびB)から4までの5種類は形質膜に局在しており、残りは小胞体、[[ゴルジ体]]、トランスゴルジ網、[[エンドソーム]]などに局在している(表)。
 細胞内において、16種類のアイソフォームのうちシンタキシン1(AおよびB)から4までの5種類は[[形質膜]]に局在しており、残りは小胞体、[[ゴルジ体]]、トランスゴルジ網、[[エンドソーム]]などに局在している(表)。


 ニューロンにおいてシンタキシン1は、主に[[シナプス前膜]]を含む細胞膜に局在する一方、シナプス小胞膜にも認められる<ref><pubmed>8301329</pubmed></ref><ref><pubmed>7698978</pubmed></ref><ref><pubmed>23821748 </pubmed></ref>。小脳皮質においては、ほとんどの[[グルタミン酸]]作動性終末と、一部の[[GABA]]作動性シナプスに局在する<ref><pubmed>22094010 </pubmed></ref>。その他にも、[[視索上核]]の[[オキシトシン]]ニューロンでは[[軸索終末]]だけでなく[[細胞体]]や[[樹状突起]]に発現が見られるとともに<ref><pubmed>21988098</pubmed></ref>、[[ヒヨコ]]の[[毛様体神経節]]の杯状シナプス前部<ref><pubmed>15102922</pubmed></ref>、[[カエル]]の[[運動神経終末]]<ref><pubmed>8963446</pubmed></ref>にも存在する。[[アストロサイト]]にも発現している<ref><pubmed>9098527</pubmed></ref><ref><pubmed>21656854</pubmed></ref>。
 ニューロンにおいてシンタキシン1は、主に[[シナプス前膜]]を含む細胞膜に局在する一方、シナプス小胞膜にも認められる<ref><pubmed>8301329</pubmed></ref><ref><pubmed>7698978</pubmed></ref><ref><pubmed>23821748 </pubmed></ref>。小脳皮質においては、ほとんどの[[グルタミン酸]]作動性終末と、一部の[[GABA]]作動性シナプスに局在する<ref><pubmed>22094010 </pubmed></ref>。その他にも、[[視索上核]]の[[オキシトシン]]ニューロンでは[[軸索終末]]だけでなく[[細胞体]]や[[樹状突起]]に発現が見られるとともに<ref><pubmed>21988098</pubmed></ref>、[[ヒヨコ]]の[[毛様体神経節]]の杯状シナプス前部<ref><pubmed>15102922</pubmed></ref>、[[カエル]]の[[運動神経終末]]<ref><pubmed>8963446</pubmed></ref>にも存在する。[[アストロサイト]]にも発現している<ref><pubmed>9098527</pubmed></ref><ref><pubmed>21656854</pubmed></ref>。


 初代培養した海馬ニューロンにおいて、シンタキシン3は細胞体や樹状突起に加え[[成長円錐]]にも<ref><pubmed>16598260</pubmed></ref>、シンタキシン4<ref><pubmed>20434989</pubmed></ref>および12/13<ref><pubmed></pubmed></ref>および16<ref><pubmed>17852734</pubmed></ref>はスパインを含め樹状突起に存在する。金魚の網膜のリボンシナプスには、シンタキシン3の選択的スプライシングアイソフォームBが発現している<ref><pubmed>20060037</pubmed></ref>。
 [[初代培養]]した海馬ニューロンにおいて、シンタキシン3は細胞体や樹状突起に加え[[成長円錐]]にも<ref name=ref44><pubmed>16598260</pubmed></ref>、シンタキシン4<ref name=ref45><pubmed>20434989</pubmed></ref>および12/13<ref name=ref46><pubmed>20098723</pubmed></ref>および16<ref><pubmed>17852734</pubmed></ref>はスパインを含め樹状突起に存在する。金魚の網膜のリボンシナプスには、シンタキシン3の選択的スプライシングアイソフォームBが発現している<ref name=ref48><pubmed>20060037</pubmed></ref>。


== 翻訳後修飾 ==
== 翻訳後修飾 ==
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== 結合タンパク質 ==
== 結合タンパク質 ==
 シンタキシンは自身と同じ膜に局在する別のt-SNAREと結合するとともに、さらに輸送されて来る小胞に局在するv-SNAREとも結合して[[SNARE複合体]]を形成し膜融合能を発揮する。さらにシンタキシンには、[[SNARE複合体]]形成を制御するタンパク質の多くが結合する。以下に、他の分子との結合が最も良く調べられているシンタキシン1を例にして主な結合タンパク質を紹介する。他のアイソフォームでは、シンタキシ4はFアクチンと<ref><pubmed>18285343</pubmed></ref>、シンタキシン13はシナプス後部の[[足場タンパク質]]Homer1c(別名Vesl-1L)<ref><pubmed>10833436</pubmed></ref>、NEEP21(neuron-enriched endosomal protein of 21 kDa)<ref><pubmed>12070131</pubmed></ref>、およびGRASP-1(GRIP-associated protein-1))<ref><pubmed>20098723</pubmed></ref>と結合することが報告されている。
 シンタキシンは自身と同じ膜に局在する別のt-SNAREと結合するとともに、さらに輸送されて来る小胞に局在するv-SNAREとも結合して[[SNARE複合体]]を形成し膜融合能を発揮する。さらにシンタキシンには、[[SNARE複合体]]形成を制御するタンパク質の多くが結合する。この節では、他の分子との結合が最も良く調べられているシンタキシン1の主な結合タンパク質を紹介する。他のアイソフォームでは、シンタキシ4はF[[アクチン]]と<ref><pubmed>18285343</pubmed></ref>、シンタキシン13はシナプス後部の[[足場タンパク質]]Homer1c(別名Vesl-1L)<ref><pubmed>10833436</pubmed></ref>、NEEP21(neuron-enriched endosomal protein of 21 kDa)<ref><pubmed>12070131</pubmed></ref>、およびGRASP-1(GRIP-associated protein-1))<ref name=ref46 />と結合することが報告されている。


=== SNARE(SNAP-25およびシナプトブレビン) ===  
=== SNARE(SNAP-25およびシナプトブレビン) ===  
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=== シナプトタグミン ===
=== シナプトタグミン ===
 シンタキシン1は、H3ドメインを介して神経伝達物質放出のカルシウムイオンセンサーの最有力候補[[シナプトタグミン]]1と結合する<ref><pubmed>18275379</pubmed></ref><ref><pubmed>22068972</pubmed></ref>。カルシウムイオン非存在下では、シナプトタグミンのC<sub>2</sub>Bドメインと結合する<ref><pubmed>12496268</pubmed></ref><ref><pubmed>22008253 </pubmed></ref>。[[wikipedia:ja:大腸菌|大腸菌]]で発現させた組換えタンパク質同士の結合は、結合実験に用いるフラグメントの大きさや付加するタグによって、特にカルシウムイオンの要求性に、大きな影響を受ける<ref><pubmed>8604041</pubmed></ref>。ある条件下ではシンタキシンとシナプトタグミンの結合はカルシウム依存性であり<ref><pubmed>7791877</pubmed></ref>、シナプトタグミンのC<sub>2</sub>Aドメインへのカルシウムイオンの結合が必須である<ref><pubmed>9010211</pubmed></ref>。しかし、C<sub>2</sub>Aのカルシウム結合能を欠失させた変異シナプトタグミンを発現させたニューロンで神経伝達物質の放出に異常が認められないことから<ref><pubmed>12110845</pubmed></ref>、シンタキシンとシナプトグミンのカルシウム依存性結合の伝達物質放出における意義は不明である。
 シンタキシン1は、H3ドメインを介して神経伝達物質放出の[[カルシウムイオン]]センサーと考えられている[[シナプトタグミン]]1と結合する<ref><pubmed>18275379</pubmed></ref><ref><pubmed>22068972</pubmed></ref>。カルシウムイオン非存在下では、シナプトタグミンのC<sub>2</sub>Bドメインと結合する<ref><pubmed>12496268</pubmed></ref><ref><pubmed>22008253 </pubmed></ref>。[[wikipedia:ja:大腸菌|大腸菌]]で発現させた組換えタンパク質同士の結合は、結合実験に用いるフラグメントの大きさや付加するタグによって、特にカルシウムイオンの要求性に、大きな影響を受ける<ref><pubmed>8604041</pubmed></ref>。ある条件下ではシンタキシンとシナプトタグミンの結合はカルシウム依存性であり<ref><pubmed>7791877</pubmed></ref>、シナプトタグミンのC<sub>2</sub>Aドメインへのカルシウムイオンの結合が必須である<ref><pubmed>9010211</pubmed></ref>。しかし、C<sub>2</sub>Aのカルシウム結合能を欠失させた変異シナプトタグミンを発現させたニューロンで神経伝達物質の放出に異常が認められないことから<ref><pubmed>12110845</pubmed></ref>、シンタキシンとシナプトグミンの[[カルシウム]]依存性結合の伝達物質放出における意義は不明である。


===コンプレキシン ===
===コンプレキシン ===
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。中でも[[N型カルシウムチャネル]]との結合は良く調べられていて<ref><pubmed>8119979</pubmed></ref><ref><pubmed>1334074</pubmed></ref>、チャネルの細胞質内ループ中のシンプリントsynprintと呼ばれる部位とシンタキシン1のNペプチドがカルシウムイオン濃度依存性に結合する<ref><pubmed>7993624</pubmed></ref><ref><pubmed>12221094</pubmed></ref><ref><pubmed>8559250</pubmed></ref>。また、これとは別にシンタキシン1の膜貫通領域とその直前の細胞質領域が調節に関与している<ref><pubmed>11087812</pubmed></ref>。[[Gタンパク質]]によるカルシウムチャネルの機能調節は、シンタキシン1と[[Gβ|G<sub>β</sub>]]と[[Gγ|G<sub>γ</sub>]]からなるヘテロ二量体との直接結合により促進される<ref><pubmed>10692440</pubmed></ref>。
。中でも[[N型カルシウムチャネル]]との結合は良く調べられていて<ref><pubmed>8119979</pubmed></ref><ref><pubmed>1334074</pubmed></ref>、チャネルの細胞質内ループ中のシンプリントsynprintと呼ばれる部位とシンタキシン1のNペプチドがカルシウムイオン濃度依存性に結合する<ref><pubmed>7993624</pubmed></ref><ref><pubmed>12221094</pubmed></ref><ref><pubmed>8559250</pubmed></ref>。また、これとは別にシンタキシン1の膜貫通領域とその直前の細胞質領域が調節に関与している<ref><pubmed>11087812</pubmed></ref>。[[Gタンパク質]]によるカルシウムチャネルの機能調節は、シンタキシン1と[[Gβ|G<sub>β</sub>]]と[[Gγ|G<sub>γ</sub>]]からなるヘテロ二量体との直接結合により促進される<ref><pubmed>10692440</pubmed></ref>。


 その他にもシンタキシン1は、[[アミシン]]、[[α-ホドリン]]、[[α-SNAP]]、[[CAPS]]、[[CaMKII]]、[[CCCrel-1]]、[[CSP]] ([[cysteine-string protein]]) 、[[D53]]、 [[DAP]]([[death-associated protein]]) キナーゼ、[[DCC]] ([[deleted in colorectal cancer]])、[[グラニュフィリン]]、[[HSP70]]、[[IP3受容体|IP<sub>3</sub>受容体]]、[[Mチャネル]]、[[RACK1]] ([[the receptor for activated C kinases]])、 [[PRIP]] ([[phospholipase C-related but catalytically inactive protein]])、[[プレセニリン-1]]、[[スタリング]]、[[シンコリン]]、[[シンタブリン]]、[[シンタフィリン]]、[[タキシリン]]、[[トモシン]]、[[VAP-A]]、ある種の[[Kチャネル]]、[[オトフェリン]]、各種伝達物質トランスポーター、クラス[[C-Vps複合体]]、シナプトブレビン、[[ダイナミン]]、[[チューブリン]]、あるいは[[ミオシンVa]]と結合する。
 その他にもシンタキシン1は、[[アミシン]]、[[α-ホドリン]]、[[α-SNAP]]、[[CAPS]]、[[CaMKII]]、[[CCCrel-1]]、[[CSP]] ([[cysteine-string protein]]) 、[[D53]]、 [[DAP]]([[death-associated protein]]) キナーゼ、[[DCC]] ([[deleted in colorectal cancer]])、[[グラニュフィリン]]、[[HSP70]]、[[IP3受容体|IP<sub>3</sub>受容体]]、[[Mチャネル]]、[[RACK1]] ([[the receptor for activated C kinases]])、 [[PRIP]] ([[phospholipase C-related but catalytically inactive protein]])、[[プレセニリン-1]]、[[スタリング]]、[[シンコリン]]、[[シンタブリン]]、[[シンタフィリン]]、[[タキシリン]]、[[トモシン]]、[[VAP-A]]、ある種の[[Kチャネル]]、[[オトフェリン]]、[[モノアミン]]トランスポーター、[[グリシン]]トランスポーター、クラス[[C-Vps複合体]]、シナプトブレビン、[[ダイナミン]]、[[チューブリン]]、あるいは[[ミオシンVa]]と結合する。


== 機能 ==
== 機能 ==
 神経系において細胞体に発現しているシンタキシンは、他の細胞においてと同様、小胞体膜同士の融合、小胞体からゴルジ体への膜輸送、エンドソームからゴルジ体への膜輸送など一般的な細胞内膜輸送に関与していると思われる<ref name=ref7><pubmed>11737951</pubmed></ref>。一方、神経系に特異的に発現しているアイソフォームを含めいくつかのシンタキシンは、神経突起に局在しニューロンに特異的な機能を担っている。
 神経系において細胞体に発現しているシンタキシンは、他の細胞においてと同様、小胞体膜同士の融合、小胞体からゴルジ体への膜輸送、エンドソームからゴルジ体への膜輸送などの細胞内膜輸送に関与していると思われる<ref name=ref7><pubmed>11737951</pubmed></ref>。一方、神経系に特異的に発現しているアイソフォームを含めいくつかのシンタキシンは、神経突起に局在しニューロンに特異的な機能を担っている。


===神経伝達物質の放出===
===神経伝達物質の放出===
 シナプス前膜に存在するシンタキシン1は、[[エンドサイトーシス]]を含め<ref><pubmed>23643538</pubmed></ref>シナプス小胞の循環のいくつかの過程に直接または間接的に関わる。その中でもカルシウム依存性の小胞開口放出過程における役割について最も研究が進んでおり、シンタキシン1はシナプス前膜と小胞膜との間でSNAP-25およびシナプトブレビンとSNARE複合体を形成し、両方の膜を限りなく近づけて融合させ神経伝達物質を開口放出させると考えられている<ref><pubmed>10219238</pubmed></ref>。マウスの[[内耳有毛細胞]]からの伝達物質放出には関与しないという例外はあるが<ref><pubmed>21378973</pubmed></ref>、実験材料として使われる多くの神経標本および開口放出のモデル細胞における伝達物質放出にはシンタキシン1が必須である<ref name=ref7818508><pubmed>7818508</pubmed></ref><ref><pubmed>7609887</pubmed></ref><ref><pubmed>9692742</pubmed></ref><ref><pubmed>7612024</pubmed></ref><ref name=ref9342384><pubmed>9342384</pubmed></ref>。金魚の網膜のリボンシナプスにおけるシナプス小胞の開口放出には、シンタキシン3の選択的スプライシングバリアント3Bが関与する<ref><pubmed>20060037</pubmed></ref>。
 シナプス前膜に存在するシンタキシン1は、[[エンドサイトーシス]]を含め<ref><pubmed>23643538</pubmed></ref>シナプス小胞の循環のいくつかの過程に直接または間接的に関わる。その中でもカルシウム依存性の小胞開口放出過程における役割について最も研究が進んでおり、シンタキシン1はシナプス前膜と小胞膜との間でSNAP-25およびシナプトブレビンとSNARE複合体を形成し、両方の膜を限りなく近づけて融合させ神経伝達物質を開口放出させると考えられている<ref><pubmed>10219238</pubmed></ref>。マウスの[[内耳有毛細胞]]からの伝達物質放出には関与しないという例外はあるが<ref><pubmed>21378973</pubmed></ref>、実験材料として使われる多くの神経標本および開口放出のモデル細胞における伝達物質放出にはシンタキシン1が必須である<ref name=ref7818508><pubmed>7818508</pubmed></ref><ref><pubmed>7609887</pubmed></ref><ref><pubmed>9692742</pubmed></ref><ref><pubmed>7612024</pubmed></ref><ref name=ref9342384><pubmed>9342384</pubmed></ref>。金魚の網膜のリボンシナプスにおけるシナプス小胞の開口放出には、シンタキシン3の選択的スプライシングバリアント3Bが関与する<ref name=ref48 />。


 シンタキシン1は、開口放出に先立ちシナプス小胞や[[有芯小胞]]を放出部位へドッキングさせる。実際、カエルの[[神経筋接合部]]<ref name=ref14622203><pubmed>14622203</pubmed></ref>ならびに[[副腎髄質]][[クロマフィン細胞]]<ref name=ref17205130><pubmed>17205130</pubmed></ref>においてシンタキシンを切断あるいは破壊すると小胞のドッキングが阻害される。一方、ニューロン間のシナプスではシンタキシンの機能を阻害してもドッキングに影響はない<ref name=ref14622203><pubmed>14622203</pubmed></ref><ref name=ref17205130><pubmed>17205130</pubmed></ref><ref name=ref9342384><pubmed>9342384</pubmed></ref>。
 シンタキシン1は、開口放出に先立ちシナプス小胞や[[有芯小胞]]を放出部位へドッキングさせる。実際、カエルの[[神経筋接合部]]<ref name=ref14622203><pubmed>14622203</pubmed></ref>ならびに[[副腎髄質]][[クロマフィン細胞]]<ref name=ref17205130><pubmed>17205130</pubmed></ref>においてシンタキシンを切断あるいは破壊すると小胞のドッキングが阻害される。一方、ニューロン間のシナプスではシンタキシンの機能を阻害してもドッキングに影響はない<ref name=ref14622203><pubmed>14622203</pubmed></ref><ref name=ref17205130><pubmed>17205130</pubmed></ref><ref name=ref9342384><pubmed>9342384</pubmed></ref>。


 刺激に応じた小胞の開口放出はカルシウム依存性だが、シンタキシン1を含むSNAREにはカルシウムイオン結合能はない。しかし、シンタキシン自身は、カルシウムチャネルへの結合を介して小胞を放出部位へドッキングさせる<ref><pubmed>18060067</pubmed></ref>。一方で、カルシウムチャネルの機能を抑制することから<ref><pubmed>8524397</pubmed></ref><ref><pubmed>10548106</pubmed></ref>、伝達物質放出のカルシウムイオンによる制御において相反する二種類の働きを併せ持つ<ref><pubmed>17215385</pubmed></ref>。
 刺激に応じた小胞の開口放出はカルシウム依存性だが、シンタキシン1を含むSNAREにはカルシウム[[イオン]]結合能はない。しかし、シンタキシン自身は、カルシウムチャネルへの結合を介して小胞を放出部位へドッキングさせる<ref><pubmed>18060067</pubmed></ref>。一方で、カルシウムチャネルの機能を抑制することから<ref><pubmed>8524397</pubmed></ref><ref><pubmed>10548106</pubmed></ref>、伝達物質放出のカルシウムイオンによる制御において相反する二種類の働きを併せ持つ<ref><pubmed>17215385</pubmed></ref>。


 それ以外にも、開口放出時に形成されると考えられているフュージョンポアへの関与<ref><pubmed>15016962</pubmed></ref> 、[[学習]]と[[記憶]]に関与する可能性<ref><pubmed>8921297 </pubmed></ref><ref><pubmed>9200718</pubmed></ref><ref><pubmed>9749751</pubmed></ref><ref><pubmed>20563839</pubmed></ref>が示唆されている。
 それ以外にも、開口放出時に形成されると考えられているフュージョンポアへの関与<ref><pubmed>15016962</pubmed></ref> 、[[学習]]と[[記憶]]に関与する可能性<ref><pubmed>8921297 </pubmed></ref><ref><pubmed>9200718</pubmed></ref><ref><pubmed>9749751</pubmed></ref><ref><pubmed>20563839</pubmed></ref>が示唆されている。


===AMPA型グルタミン酸受容体の輸送===
===AMPA型グルタミン酸受容体の輸送===
 シナプスの長期増強が生じる際、AMPA型[[グルタミン酸受容体]]がそれらを含むリサイクリング[[エンドソーム]]の開口放出によりシナプス後膜へ組み込まれる。いくつかのシンタキシンはこのシナプス後部におけるAMPA受容体の輸送に関与し、シナプスの伝達効率を調節している。
 シナプスの長期増強が生じる際、[[AMPA型グルタミン酸受容体]]がそれらを含むリサイクリング[[エンドソーム]]の開口放出によりシナプス後膜へ組み込まれる。いくつかのシンタキシンはこのシナプス後部におけるAMPA受容体の輸送に関与し、シナプスの伝達効率を調節している。


 シンタキシン3および4は、海馬ニューロンにおいて長期増強など神経活動の亢進時に、AMPA受容体のスパインへの組込みに関与し、シナプス可塑性に重要な役割を果たしている<ref><pubmed>20434989</pubmed></ref><ref><pubmed>20959521</pubmed></ref><ref name=ref124><pubmed>23395379</pubmed></ref>。シンタキシン4については議論が分かれており<ref name=ref124><pubmed>23395379</pubmed></ref>、長期増強誘導時ではなくレチノイン酸によるシナプス可塑性においてAMPA受容体の組み込みに関与するという説もある<ref><pubmed>25843403 </pubmed></ref>。
 シンタキシン3および4は、海馬ニューロンにおいて[[長期増強]]など神経活動の亢進時に、AMPA受容体のスパインへの組込みに関与し、シナプス可塑性に重要な役割を果たしている<ref name=ref45 /><ref><pubmed>20959521</pubmed></ref><ref name=ref124><pubmed>23395379</pubmed></ref>。シンタキシン4については議論が分かれており<ref name=ref124><pubmed>23395379</pubmed></ref>、長期増強誘導時ではなく[[レチノイン酸]]によるシナプス可塑性においてAMPA受容体の組み込みに関与するという説もある<ref><pubmed>25843403 </pubmed></ref>。


 シンタキシン13は、AMPA受容体の細胞内輸送に関与するGRIP-associated protein 1 (GRASP-1)と協働して、エンドサイトーシスにより取込まれた初期エンドソームからリサイクリングエンドソームへの輸送に関与する可能性が示されている<ref><pubmed>20098723</pubmed></ref>。
 シンタキシン13は、AMPA受容体の細胞内輸送に関与する[[GRIP-associated protein 1]] ([[GRASP-1]])と協働して、エンドサイトーシスにより取込まれた初期エンドソームから[[リサイクリングエンドソーム]]への輸送に関与する可能性が示されている<ref name=ref46 />。


===神経突起の伸長===
===神経突起の伸長===
 シンタキシン1<ref><pubmed>8698815</pubmed></ref><ref><pubmed>10900079</pubmed></ref><ref><pubmed>21593320</pubmed></ref>、3<ref><pubmed>16598260</pubmed></ref>、13<ref><pubmed>10886332</pubmed></ref>、および16<ref><pubmed>20589833</pubmed></ref>は[[神経突起]]の伸長に関与する。
 シンタキシン1<ref><pubmed>8698815</pubmed></ref><ref><pubmed>10900079</pubmed></ref><ref><pubmed>21593320</pubmed></ref>、3<ref name=ref44 />、13<ref><pubmed>10886332</pubmed></ref>、および16<ref><pubmed>20589833</pubmed></ref>は[[神経突起]]の伸長に関与する。


== 疾患との関わり ==
== 疾患との関わり ==
 [[ボツリヌス中毒]]の主な症状である[[弛緩性麻痺]]は、運動神経終末からの[[アセチルコリン]]の放出阻害による。これは、中毒の原因である[[ボツリヌス菌]]が産生する[[毒素]]のもつ[[タンパク質分解酵素]]活性によるSNAREの切断に起因する。7種類存在する[[ボツリヌス毒素]]の中、[[C型毒素]]はシンタキシ1をカルボキシ末端付近の1箇所、[[リシン]]残基と[[アラニン]]残基(1Aでは253番目と254番目、1Bでは252番目と253番目)の間で切断する<ref><pubmed>7901002</pubmed></ref><ref><pubmed>7737992</pubmed></ref>。
 [[ボツリヌス中毒]]の主な症状である[[弛緩性麻痺]]は、運動[[神経終末]]からの[[アセチルコリン]]の放出阻害による。これは、中毒の原因である[[ボツリヌス菌]]が産生する神経[[毒素]]のもつ[[タンパク質分解酵素]]活性によるSNAREの切断に起因する。7種類存在する[[ボツリヌス毒素]]の中、[[C型毒素]]はシンタキシ1をカルボキシ末端付近の1箇所、[[リジン]]残基と[[アラニン]]残基(1Aでは253番目と254番目、1Bでは252番目と253番目)の間で切断する<ref><pubmed>7901002</pubmed></ref><ref><pubmed>7737992</pubmed></ref>。


 中枢ならびに末梢神経系疾患との関連性も示唆されている。[[統合失調症]]<ref><pubmed>15219469</pubmed></ref><ref><pubmed>19748077</pubmed></ref><ref><pubmed>21669024</pubmed></ref>、[[高機能自閉症]]<ref><pubmed>18593506</pubmed></ref>、[[脳虚血]]後<ref><pubmed>19344701</pubmed></ref>においてシンタキシン1の発現量が増加していることが報告されている。[[末梢神経障害]]による[[異痛症]]にシンタキシン1の発現低下が関与している可能性も言われている<ref><pubmed>21129445</pubmed></ref>。
 中枢ならびに末梢神経系疾患との関連性も示唆されている。[[統合失調症]]<ref><pubmed>15219469</pubmed></ref><ref><pubmed>19748077</pubmed></ref><ref><pubmed>21669024</pubmed></ref>、[[高機能自閉症]]<ref><pubmed>18593506</pubmed></ref>、[[脳虚血]]後<ref><pubmed>19344701</pubmed></ref>においてシンタキシン1の発現量が増加していることが報告されている。[[末梢神経障害]]による[[異痛症]]にシンタキシン1の発現低下が関与している可能性も言われている<ref><pubmed>21129445</pubmed></ref>。
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== 遺伝子操作動物 ==
== 遺伝子操作動物 ==
 シンタキシン1Aの[[ノックアウトマウス]]は生育可能だが、[[恐怖条件づけ]]記憶の阻害に加え、[[セロトニン]]作動性神経系の異常と考えられる行動異常と[[視床下部-下垂体-副腎系]]の機能不全を呈す<ref><pubmed>16723534</pubmed></ref><ref><pubmed>20576034</pubmed></ref><ref><pubmed>21910766</pubmed></ref>。
 シンタキシン1Aの[[ノックアウトマウス]]は生育可能だが、[[恐怖条件づけ]]記憶の阻害に加え、[[セロトニン]]作動性神経系の異常と考えられる行動異常と[[視床下部-下垂体-副腎系]]の機能不全を呈す<ref><pubmed>16723534</pubmed></ref><ref><pubmed>20576034</pubmed></ref><ref><pubmed>21910766</pubmed></ref>。
これに対し、シンタキシン1Bのノックアウトマウスは生後2週間までしか生存できず、グルタミン酸あるいはGABAの放出においてシナプス小胞の正常な開口放出と[[即時放出可能プール]]の形成が阻害されている<ref><pubmed>24587181</pubmed></ref>。恒常的に開構造をとる変異シンタキシン1B遺伝子を強制発現させた[[ノックインマウス]]は生育可能だが、2-3ヶ月齢で全身[[痙攣]]を呈し死にいたる<ref><pubmed>18703708</pubmed></ref>。[[ショウジョウバエ]]では、遺伝子破壊体<ref><pubmed>7834751</pubmed></ref><ref><pubmed>7546745</pubmed></ref><ref><pubmed>10433270</pubmed></ref><ref><pubmed>11095753</pubmed></ref>、[[温度感受性変異体]]<ref><pubmed>9728921</pubmed></ref>、SNAREモチーフ中に変異を導入した変異体<ref><pubmed>11717347</pubmed></ref>が作製されており、いずれもシナプス伝達が著しく阻害されている。
 
 これに対し、シンタキシン1Bのノックアウトマウスは生後2週間までしか生存できず、[[グルタミン酸]]あるいは[[GABA]]の放出においてシナプス小胞の正常な開口放出と[[即時放出可能プール]]の形成が阻害されている<ref><pubmed>24587181</pubmed></ref>。恒常的に開構造をとる変異シンタキシン1B遺伝子を強制発現させた[[ノックインマウス]]は生育可能だが、2-3ヶ月齢で全身[[痙攣]]を呈し死にいたる<ref><pubmed>18703708</pubmed></ref>。[[ショウジョウバエ]]では、遺伝子破壊体<ref><pubmed>7834751</pubmed></ref><ref><pubmed>7546745</pubmed></ref><ref><pubmed>10433270</pubmed></ref><ref><pubmed>11095753</pubmed></ref>、[[温度感受性変異体]]<ref><pubmed>9728921</pubmed></ref>、SNAREモチーフ中に変異を導入した変異体<ref><pubmed>11717347</pubmed></ref>が作製されており、いずれもシナプス伝達が著しく阻害されている。


== 関連項目 ==
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