「ストループ効果」の版間の差分

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== 心理学研究におけるストループ効果 ==
== 心理学研究におけるストループ効果 ==
 複数の情報間の関係性によって,認知処理が遅延したり,間違いが起こる現象は認知的葛藤(Cognitive Conflict)と呼ばれ,認知処理の性質の検討のため,重要な位置を占めてきた。これまで,認知的葛藤を生じさせる課題は数多く提案されてきたが(e.g. Simon task, Garner task, Flanker task),この色つき文字を使用したストループ課題は,その代表として位置づけられる。そして、ストループ効果は、注意研究の文脈においても主役として登場し、gold standard of attentional measureとして位置づけられてきた(MacLeod, 1992)<ref>MacLeod, C. M. (1992). The Stroop task: The “gold standard” of attentional measures. Journal of Experimental Psychology: General, 121(1), 12-14.</ref>。色つき文字に対する色命名時に見られる反応の遅延や葛藤現象をストループ効果(Stroop effect)<ref>'''J. Ridley Stroop'''<br>Studies of interference in serial verbal reactions<br>''Journal of Experimental Psychology'': 1935, 18, 643-662[http://pubman.mpdl.mpg.de/pubman/item/escidoc:2389918/component/escidoc:2389917/Stroop_1935_Studies.pdf  <PDF>]</ref>と呼び,色名呼称課題をストループ課題と呼ぶ。また、色つき文字の文字呼称課題を逆ストループ課題と呼び,文字呼称時に不一致な色が反応を阻害する現象を逆ストループ効果と呼ぶ。一般に,ストループ効果に比べて逆ストループ効果は,小さいことが知られている。
 複数の情報間の関係性によって,認知処理が遅延したり,間違いが起こる現象は認知的葛藤(Cognitive Conflict)と呼ばれ,認知処理の性質の検討のため,重要な位置を占めてきた。これまで,認知的葛藤を生じさせる課題は数多く提案されてきたが(e.g. Simon task, Garner task, Flanker task),この色つき文字を使用したストループ課題は,その代表として位置づけられる。そして、ストループ効果は、注意研究の文脈においても主役として登場し、gold standard of attentional measureとして位置づけられてきた(MacLeod, 1992)<ref>'''MacLeod, C. M. ''' <br>The Stroop task: The “gold standard” of attentional measures. <br>''Journal of Experimental Psychology: General'': 1992, 121(1), 12-14.</ref>。色つき文字に対する色命名時に見られる反応の遅延や葛藤現象をストループ効果(Stroop effect)<ref>'''J. Ridley Stroop'''<br>Studies of interference in serial verbal reactions<br>''Journal of Experimental Psychology'': 1935, 18, 643-662[http://pubman.mpdl.mpg.de/pubman/item/escidoc:2389918/component/escidoc:2389917/Stroop_1935_Studies.pdf  <PDF>]</ref>と呼び,色名呼称課題をストループ課題と呼ぶ。また、色つき文字の文字呼称課題を逆ストループ課題と呼び,文字呼称時に不一致な色が反応を阻害する現象を逆ストループ効果と呼ぶ。一般に,ストループ効果に比べて逆ストループ効果は,小さいことが知られている。


 ストループ効果には,新たな研究パラダイムの登場とともに再び脚光を浴びるといった側面がある,例えば、行動主義、認知主義、脳機能研究の勃興時には、初期の段階でストループ効果を用いた研究が試みられてきており、古くて新しい現象である。ストループ効果研究に残された様々な課題をMacLeod(1991)<ref><pubmed>2034749</pubmed></ref>はレヴューを行い、18個の課題としてまとめている。例えば、ストループ効果と逆ストループ効果といった現象をあげ、それらを統一的に説明可能な理論の必要性を挙げている。心理学に端を発するStroop効果研究の裾野は広く、Stroop効果の(メカニズム)の研究、とStroop効果を用いた研究に大別することができる。今日では、後者の研究が中心になっており、注意、[[中央実行系]]、[[認知制御]]、コンフリクト・モニタリング、task switching、[[言語]]処理といった領域で用いられてきた。特に、Cohen, J.D.、Bush,G.らの脳機能画像研究以降、ストループ効果は、注意や認知的コントロールなどの指標として今日では受け入れられる。
 ストループ効果には,新たな研究パラダイムの登場とともに再び脚光を浴びるといった側面がある,例えば、行動主義、認知主義、脳機能研究の勃興時には、初期の段階でストループ効果を用いた研究が試みられてきており、古くて新しい現象である。ストループ効果研究に残された様々な課題をMacLeod(1991)<ref><pubmed>2034749</pubmed></ref>はレヴューを行い、18個の課題としてまとめている。例えば、ストループ効果と逆ストループ効果といった現象をあげ、それらを統一的に説明可能な理論の必要性を挙げている。心理学に端を発するStroop効果研究の裾野は広く、Stroop効果の(メカニズム)の研究、とStroop効果を用いた研究に大別することができる。今日では、後者の研究が中心になっており、注意、[[中央実行系]]、[[認知制御]]、コンフリクト・モニタリング、task switching、[[言語]]処理といった領域で用いられてきた。特に、Cohen, J.D.、Bush,G.らの脳機能画像研究以降、ストループ効果は、注意や認知的コントロールなどの指標として今日では受け入れられる。
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