「ゾーン構造」の版間の差分

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===  小脳におけるゾーン構造   ===
===  小脳におけるゾーン構造   ===


 哺乳類の[[小脳]]において、小脳皮質出力ニューロンである[[プルキンエ細胞]]は[[オリーブ核]]より興奮性入力(登上線維入力)を受け、[[小脳核]]へ軸索投射する。小脳皮質は正中線に沿って内側部が虫部、外側部が半球、虫部と半球に挟まれた領域は中間部と呼ばれ、前後軸に伸びる3つの帯状の領域に区分される。[[小脳核]]は内側より室頂核(内側核)、中位核、歯状核(外側核)と区分されるが、小脳皮質虫部から室頂核へ、中間部は中位核へ、半球部は外側核へ選択的に軸索投射することが明らかになり、小脳は前後軸に広がる3つのゾーンに機能分化することが示唆された(Jansen and Brodal 1940)。
 哺乳類の[[小脳]]において、小脳皮質出力ニューロンである[[プルキンエ細胞]]は[[オリーブ核]]より興奮性入力(登上線維入力)を受け、[[小脳核]]へ軸索投射する。小脳皮質は肉眼的には横走する小脳溝によって区分される小脳回が顕著であるが、機能的にはむしろ縦走する区分が重要である。小脳皮質は正中線に沿って内側部が虫部、外側部が半球、虫部と半球に挟まれた領域は中間部と呼ばれ、縦走する3つの帯状の領域に区分される。[[小脳核]]は内側より室頂核(内側核)、中位核、歯状核(外側核)と区分されるが、小脳皮質虫部から室頂核へ、中間部は中位核へ、半球部は外側核へ選択的に軸索投射することから、小脳は縦走する3つのゾーンに機能分化すると考えられていた。


 1960年代以降、小脳皮質―小脳核の亜領域特異的な投射様式に加え、小脳皮質へ登上線維を送り出すオリーブ核と、投射先である小脳皮質の各亜領域との対応関係が詳細に検討され、更に細かなゾーン構造が見出されてきている。小脳皮質の微小電気刺激によるオリーブ核での逆行性応答のマッピング、そして各種トレーサーによる軸索投射の可視化により、左右の小脳皮質はそれぞれ前後軸に沿って長く伸びる、A, AX, X, B, A2, C1, CX, C2, C3, D1, D0, D2の12のゾーン(longitudinal zones)が小脳皮質にあると考えられている(Apps and Hawkes 2009)(図3)。これらのゾーン構造のうち、BゾーンやC3ゾーンでは「マイクロゾーン」と呼ばれる100~300μm幅と、通常のゾーン構造の幅(~1mm)より更に細かなゾーン構造が見いだされていて()、小脳における最少機能単位であると予想されている。しかしながら、マイクロゾーンが全てのlongitudinal zoneに存在するかはまだ不明であり、これからの研究が俟たれる。
 1960年代に入り、オリーブ核~小脳皮質~小脳核間の投射様式がより詳細に検討され、それぞれの亜領域間のトポグラフィカルな投射パターンからより細かなゾーン構造の存在が明らかになってきた。研究者によりゾーンの名称や区分に若干の差異があるものの、7つ(A,B,C1,C2,C3,D1,D2)の縦走するゾーン(longitudinal zones)による区分が長く支持されてきた。近年では更に細かな12ゾーン(A, AX, X, B, A2, C1, CX, C2, C3, D1, D0, D2)構造が支持されている(Apps and Hawkes 2009)(図3)。
 これらのゾーン構造のうち、Bゾーンなどでは「マイクロゾーン」と呼ばれる100~300μm幅と、通常のゾーン構造の幅(~1mm)より更に細かなゾーン構造が見いだされている(Anderson et al 1978)。マイクロゾーンが全てのlongitudinal zoneに存在するかはまだ不明であるが、小脳皮質は基本的に均一な細胞構築構造を持っているため、マイクロゾーンが小脳における最少機能単位であると予想されている。


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