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英語名:neurosphere
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<font size="+1">[http://researchmap.jp/TS315 島崎 琢也]</font><br>
''慶應義塾大学 医学部''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年3月23日 原稿完成日:2012年11月14日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/okanolab 岡野 栄之](慶應義塾大学 医学部)<br>           
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<br> 神経幹/前駆細胞の浮遊増殖培養によって形成される球状の細胞凝集塊。細胞播種時の細胞濃度によって単一細 胞由来コロニーと複数細胞の凝集塊由来コロニーの二種類が存在し得る。ニューロスフェアを構成する細胞は主に未分化な神経幹/前駆細胞ではあるが、分化し た神経細胞やグリア細胞も含んでいる。 <br><br>  
英語名:neurosphere 独:Neurosphären 仏:neurosphère
 
[[Image:Sphere fig.jpg|thumb|300px|<b>図 マウスES細胞由来のニューロスフェア</b><BR>上段:浮遊増殖培養中のニューロスフェア. 下段:接着培養により分化誘導を行ったニューロスフェアの免疫染色像(ピンク:神経細胞、青:アストロサイト、緑:オリゴデンドロサイト)]]
 
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 [[神経幹細胞]]あるいは神経系前駆細胞(以下神経幹/前駆細胞)の浮遊増殖培養によって形成される球状の細胞凝集塊。細胞播種時の細胞濃度によって単一細 胞由来ニューロスフェアと複数細胞の凝集塊由来ニューロスフェアの二種類が存在し得る。ニューロスフェアを構成する細胞は主に未分化な神経幹/前駆細胞ではあるが、[[細胞分化|分化]]した[[神経細胞]]や[[グリア細胞]]も含んでいる。
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== 培養法とその歴史  ==
== 培養法とその歴史  ==


1992年、カナダのWeissとReynoldsは、成体マウスの線条体から取り出した細胞にEGFを添加すると、分裂増殖しながら神経細胞やグリア細胞を生み出す細胞塊を分離することができることを発表し<ref><a=ref>< pubmed>1553558</pubmed></ref>&lt;/ref&gt;、その後この細胞塊をニューロスフェアと名付けた。また、この線条体由来ニューロスフェアは、後に脳室下帯に存在する神経幹/前駆細胞に由来することが示された<ref><pubmed>7946346</pubmed></ref>。Weissらは当初、神経細胞死の抑制にEGFなどの成長因子を利用できないかどうかを、成体マウス線条体組織細胞を用いて検討していたが、その際に細胞増殖が起きていることに気付きこの発見に至った。その後、基本的にはこの培養法を踏襲した方法による、ヒトを含めた多くの哺乳動物の胎児から成体にいたるまで全ての中枢神経の領域や、神経誘導後のESおよびiPS細胞からの神経幹/前駆細胞の選択的増殖が報告されており、神経幹/前駆細胞の増殖培養法としては最も普及している方法である。具体的には、プロゲステロン、インシュリン、トランスフェリンやセレニウムなどの神経細胞培養用添加物を加えた無血清培地に、神経幹/前駆細胞の増殖因子であるFGFやEGFを添加し浮遊培養を行うだけという簡便な方法である。神経幹/前駆細胞の神経細胞やグリア細胞への分化は、ニューロスフェアそのものかあるいはそれらを分散したものを、増殖因子非存在下で接着培養することによって誘導する<ref><a=ref2 /></ref>。  
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 その後、基本的にはこの培養法を踏襲した方法による、ヒト胎児を含めた多くの哺乳動物の胎仔から成体にいたるまでの中枢神経の様々な領域や、[[神経誘導]]後の[[胚性幹細胞]](ES細胞)および[[iPS細胞]]からの神経幹/前駆細胞の選択的増殖が報告されており、神経幹/前駆細胞の増殖培養法としては最も普及している方法である。具体的には、[[wikipedia:ja:プロゲステロン|プロゲステロン]]、[[wikipedia:ja:インスリン|インスリン]]、[[wikipedia:ja:トランスフェリン|トランスフェリン]]や[[wikipedia:ja:亜セレン酸ナトリウム|亜セレン酸ナトリウム]]などの神経細胞培養用添加物を加えた無血清培地に、神経幹/前駆細胞の増殖因子である[[wikipedia:Basic fibroblast growth factor|FGF2]]やEGFを添加し浮遊培養を行うだけという簡便な方法である。神経幹/前駆細胞の神経細胞やグリア細胞への分化は、ニューロスフェアそのものかあるいはそれらを分散したものを、増殖因子非存在下で接着培養することによって誘導する<ref name="ref2" /><ref><pubmed>    18536641</pubmed></ref>。


== 参考文献  ==
== 参考文献  ==


<references />
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2014年6月13日 (金) 13:44時点における最新版

島崎 琢也
慶應義塾大学 医学部
DOI:10.14931/bsd.822 原稿受付日:2012年3月23日 原稿完成日:2012年11月14日
担当編集委員:岡野 栄之(慶應義塾大学 医学部)

英語名:neurosphere 独:Neurosphären 仏:neurosphère

図 マウスES細胞由来のニューロスフェア
上段:浮遊増殖培養中のニューロスフェア. 下段:接着培養により分化誘導を行ったニューロスフェアの免疫染色像(ピンク:神経細胞、青:アストロサイト、緑:オリゴデンドロサイト)

 神経幹細胞あるいは神経系前駆細胞(以下神経幹/前駆細胞)の浮遊増殖培養によって形成される球状の細胞凝集塊。細胞播種時の細胞濃度によって単一細 胞由来ニューロスフェアと複数細胞の凝集塊由来ニューロスフェアの二種類が存在し得る。ニューロスフェアを構成する細胞は主に未分化な神経幹/前駆細胞ではあるが、分化した神経細胞グリア細胞も含んでいる。

培養法とその歴史

 1992年、カナダのWeissとReynoldsは、成体マウスの線条体から取り出した細胞にEGFを添加すると、分裂増殖しながら神経細胞やグリア細胞を生み出す細胞塊を分離することができることを発表し[1]、その後、この細胞塊をニューロスフェアと名付けた。また、この線条体由来ニューロスフェアは、後に脳室下帯に存在する神経幹/前駆細胞に由来することが示された[2]。Weissらは当初、神経細胞死の抑制にEGFなどの成長因子を利用できないかどうかを、成体マウス線条体組織細胞を用いて検討していたが、その際に細胞増殖が起きていることに気付きこの発見に至った。

 その後、基本的にはこの培養法を踏襲した方法による、ヒト胎児を含めた多くの哺乳動物の胎仔から成体にいたるまでの中枢神経の様々な領域や、神経誘導後の胚性幹細胞(ES細胞)およびiPS細胞からの神経幹/前駆細胞の選択的増殖が報告されており、神経幹/前駆細胞の増殖培養法としては最も普及している方法である。具体的には、プロゲステロンインスリントランスフェリン亜セレン酸ナトリウムなどの神経細胞培養用添加物を加えた無血清培地に、神経幹/前駆細胞の増殖因子であるFGF2やEGFを添加し浮遊培養を行うだけという簡便な方法である。神経幹/前駆細胞の神経細胞やグリア細胞への分化は、ニューロスフェアそのものかあるいはそれらを分散したものを、増殖因子非存在下で接着培養することによって誘導する[1][3]

参考文献

  1. 1.0 1.1 Reynolds, B.A., & Weiss, S. (1992).
    Generation of neurons and astrocytes from isolated cells of the adult mammalian central nervous system. Science (New York, N.Y.), 255(5052), 1707-10. [PubMed:1553558] [WorldCat] [DOI]
  2. Morshead, C.M., Reynolds, B.A., Craig, C.G., McBurney, M.W., Staines, W.A., Morassutti, D., ..., & van der Kooy, D. (1994).
    Neural stem cells in the adult mammalian forebrain: a relatively quiescent subpopulation of subependymal cells. Neuron, 13(5), 1071-82. [PubMed:7946346] [WorldCat] [DOI]
  3. Chojnacki, A., & Weiss, S. (2008).
    Production of neurons, astrocytes and oligodendrocytes from mammalian CNS stem cells. Nature protocols, 3(6), 935-40. [PubMed:18536641] [WorldCat] [DOI]