「ロドプシン」の版間の差分

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 ロドプシンが[[wikipedia:JA:可視光|可視光]](最大吸収波長500nm)を受容できるのは、このシッフ塩基の[[wikipedia:JA:窒素|窒素]]原子が[[wikipedia:JA:プロトン|プロトン]]化しているからである。レチナールやレチナールシッフ塩基は吸収極大波長が[[wikipedia:JA:紫外部|紫外部]]にあり、紫外光しか吸収することができない。一方、レチナールシッフ塩基がプロトン化すると、分子内の[[wikipedia:JA:二重結合|二重結合]]系が非局在化され、その結果、吸収極大波長が可視部に移動する。  
 ロドプシンが[[wikipedia:JA:可視光|可視光]](最大吸収波長500nm)を受容できるのは、このシッフ塩基の[[wikipedia:JA:窒素|窒素]]原子が[[wikipedia:JA:プロトン|プロトン]]化しているからである。レチナールやレチナールシッフ塩基は吸収極大波長が[[wikipedia:JA:紫外部|紫外部]]にあり、紫外光しか吸収することができない。一方、レチナールシッフ塩基がプロトン化すると、分子内の[[wikipedia:JA:二重結合|二重結合]]系が非局在化され、その結果、吸収極大波長が可視部に移動する。  


 レチナールはオプシンの内部に埋め込まれており、また、そのプロトン化シッフ塩基は疎水的な環境に位置している。そのためそのままでは非常に不安定である。オプシン内にはこの[[wikipedia:JA:正電荷|正電荷]]を安定化する対イオン(counterion)が存在する。ロドプシンではE113が対イオンとして働き<ref><pubmed> 2573063 </pubmed></ref>、H7のシッフ塩基プロトンの正電荷とH3の[[グルタミン酸]]の負電荷の間に塩橋(salt bridge)が形成される<ref><pubmed> 1356370 </pubmed></ref>。また対イオンはシッフ塩基の[[wikipedia:JA:pKa|pKa]]を上げシッフ塩基の[[wikipedia:JA:加水分解|加水分解]]を防いでいる。対イオンは単独で働いているのではなく、構造水を含む[[wikipedia:JA:水素結合|水素結合]]ネットワークを形成して働いていると考えられている。  
 レチナールはオプシンの内部に埋め込まれており、また、そのプロトン化シッフ塩基は疎水的な環境に位置している。そのためそのままでは非常に不安定である。オプシン内にはこの[[wikipedia:JA:正電荷|正電荷]]を安定化する対イオン(counterion)が存在する。ロドプシンではグルタミン酸113が対イオンとして働き<ref><pubmed> 2573063 </pubmed></ref>、ヘリックス7のシッフ塩基プロトンの正電荷とH3の[[グルタミン酸]]の負電荷の間に塩橋(salt bridge)が形成される<ref><pubmed> 1356370 </pubmed></ref>。また対イオンはシッフ塩基の[[wikipedia:JA:pKa|pKa]]を上げシッフ塩基の[[wikipedia:JA:加水分解|加水分解]]を防いでいる。対イオンは単独で働いているのではなく、構造水を含む[[wikipedia:JA:水素結合|水素結合]]ネットワークを形成して働いていると考えられている。  


[[Image:Central Ionic Lock.png|thumb|right|300px|'''図3:シッフ塩基・対イオン・塩橋'''<br />ヘッリックス7の296番目のリシン残基の正電荷とヘリックス3の対イオンの負電荷は塩橋を形成し、リガンド非結合状態の受容体で不活性状態を安定化する。11-cis-retinalが結合した状態でもシッフ塩基プロトンと対イオンの間で塩橋が生じ不活性状態を安定化する。]]  
[[Image:Central Ionic Lock.png|thumb|right|300px|'''図3:シッフ塩基・対イオン・塩橋'''<br />ヘッリックス7の296番目のリシン残基の正電荷とヘリックス3の対イオンの負電荷は塩橋を形成し、リガンド非結合状態の受容体で不活性状態を安定化する。11-シス-レチナールが結合した状態でもシッフ塩基プロトンと対イオンの間で塩橋が生じ不活性状態を安定化する。]]


== 構造モチーフ ==
== 構造モチーフ ==