「先天性大脳白質形成不全症」の版間の差分

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===治療===
===治療===
 [[リハビリテーション]]や適切な装具の使用、呼吸や栄養の管理、筋弛緩剤や抗痙攣薬などの対症療法が現在の医療的ケアの中心になっている。これらの対症療法の進歩により、Pelizaeus-Merzbacher病患者の予後は著明に改善している。全般的に先天性大脳白質形成不全症患者では、[[知的障害]]に運動障害を伴うことから、脳性麻痺児と同様の療育を受けることが実際的である。[[てんかん]]様発作は25%程度の患者に認めるが、Pelizaeus-Merzbacher病患者では実際に[[脳波]]異常を伴うことは少ない。治療は一般的な小児のてんかんの治療法に基づく。全身性のジストニアに関しては[[筋弛緩薬]]や[[抗痙縮剤]]、局所性のジストニアでは[[ボツリヌス毒素]]を用いる。股関節の[[痙性脱臼]]は、[[w:大腿骨|大腿骨]]が内転・内旋・屈位になりやすいためにおこる。外転位保持夜間装具が必要となる場合がある。高度例では整形外科的な[[w:腸腰筋|腸腰筋]]延長・切離術をおこなう。呼吸障害に関しては、[[w:喉頭|喉頭]][[w:咽頭|咽頭]]機能不全のために、[[w:誤嚥性肺炎|誤嚥性肺炎]]を起こしやすい。また経口摂取が難しい症例では、経[[w:胃管|胃管]]あるいは[[w:胃瘻|胃瘻]]からの栄養補給が行われる。筋緊張亢進のために、胃食道逆流を伴う症例では、[[w:噴門形成術|噴門形成術]]を併用する。
 [[リハビリテーション]]や適切な装具の使用、呼吸や栄養の管理、筋弛緩剤や抗痙攣薬などの対症療法が現在の医療的ケアの中心になっている。これらの対症療法の進歩により、Pelizaeus-Merzbacher病患者の予後は著明に改善している。全般的に先天性大脳白質形成不全症患者では、[[知的障害]]に運動障害を伴うことから、脳性麻痺児と同様の療育を受けることが実際的である。[[てんかん]]様発作は25%程度の患者に認めるが、Pelizaeus-Merzbacher病患者では実際に[[脳波]]異常を伴うことは少ない。治療は一般的な小児のてんかんの治療法に基づく。全身性のジストニアに関しては[[筋弛緩薬]]や[[抗痙縮剤]]、局所性のジストニアでは[[ボツリヌス毒素]]を用いる。股関節の[[痙性脱臼]]は、[[w:大腿骨|大腿骨]]が内転・内旋・屈位になりやすいためにおこる。外転位保持夜間装具が必要となる場合がある。高度例では整形外科的な[[wj:腸腰筋|腸腰筋]]延長・切離術をおこなう。呼吸障害に関しては、[[wj:喉頭|喉頭]][[wj:咽頭|咽頭]]機能不全のために、[[wj:誤嚥性肺炎|誤嚥性肺炎]]を起こしやすい。また経口摂取が難しい症例では、経[[wj:胃管|胃管]]あるいは[[wj:胃瘻|胃瘻]]からの栄養補給が行われる。筋緊張亢進のために、胃食道逆流を伴う症例では、[[wj:噴門形成術|噴門形成術]]を併用する。


 現在までに疾患に対する根治的な治療法はないが、基礎研究および治験レベルでは、疾患の分子細胞病態を標的とした治療法の試みが行われている。点変異に対しては、[[マウス]]モデルや[[培養細胞]]を用いた研究で、[[クルクミン]]や[[クロロキン]]などが部分的に有効と報告された<ref><pubmed> 22436581 </pubmed></ref><ref><pubmed> 24521562 </pubmed></ref>。また、重複に対しては、高コレステール食がミエリン化を促進することが報告された<ref><pubmed> 22706386 </pubmed></ref>。幹細胞移植による再生医療は、先天性大脳白質形成不全症に対する有望な治療法として期待されている。モデルマウスを用いた報告はこれまでにもなされていたが、最近、米国において患者に対する[[神経幹細胞]]の移植治療が試験的に行われ、その安全性と部分的な治療効果が報告された<ref><pubmed> 23052294 </pubmed></ref>。
 現在までに疾患に対する根治的な治療法はないが、基礎研究および治験レベルでは、疾患の分子細胞病態を標的とした治療法の試みが行われている。点変異に対しては、[[マウス]]モデルや[[培養細胞]]を用いた研究で、[[クルクミン]]や[[クロロキン]]などが部分的に有効と報告された<ref><pubmed> 22436581 </pubmed></ref><ref><pubmed> 24521562 </pubmed></ref>。また、重複に対しては、高コレステール食がミエリン化を促進することが報告された<ref><pubmed> 22706386 </pubmed></ref>。幹細胞移植による再生医療は、先天性大脳白質形成不全症に対する有望な治療法として期待されている。モデルマウスを用いた報告はこれまでにもなされていたが、最近、米国において患者に対する[[神経幹細胞]]の移植治療が試験的に行われ、その安全性と部分的な治療効果が報告された<ref><pubmed> 23052294 </pubmed></ref>。