「前向性健忘」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
13行目: 13行目:
 記憶に関する神経機構の障害が発現した時点が明らかな場合、障害時点以降の情報の記憶障害を前向性健忘、障害以前の情報の記憶障害を[[逆行性健忘]]と呼ぶ。前向性健忘は近時記憶の記銘力障害であり、逆行性健忘は、遠隔記憶の想起障害であるが、障害時に近い出来事ほど[[忘却]]されやすく、遠いものほど保たれるという時間的勾配が認められる。健忘症候群では通常、前向性健忘と逆行性健忘の両者がみられる。
 記憶に関する神経機構の障害が発現した時点が明らかな場合、障害時点以降の情報の記憶障害を前向性健忘、障害以前の情報の記憶障害を[[逆行性健忘]]と呼ぶ。前向性健忘は近時記憶の記銘力障害であり、逆行性健忘は、遠隔記憶の想起障害であるが、障害時に近い出来事ほど[[忘却]]されやすく、遠いものほど保たれるという時間的勾配が認められる。健忘症候群では通常、前向性健忘と逆行性健忘の両者がみられる。


 ヒトのエピソード記憶障害の責任病巣は、①[[海馬]]を含む内側[[側頭葉]]、②[[間脳]]、③[[前脳基底部]]の3か所とされており、これらは2つの[[大脳辺縁系]]回路([[内側辺縁系回路]]-[[Papez回路]]-と[[腹外側辺縁系回路]]-[[Yakovlev回路]]-)を構成している。これらの部位では、限局した病巣でも強い前向性健忘をきたす。また、[[前脳]]基底部の障害による健忘では、前向性・逆行性健忘の他に作話やその他の行動異常を伴うことが多い<ref name=re4><pubmed>3977657</pubmed></ref>。内側辺縁系回路は、エピソード記憶の記銘と固定化に作用し、腹外側辺縁系回路は[[情動]]性記憶に関与していると考えられており、最近では[[前頭前野]]が記銘戦略の選択などに関わっているという知見が増加してきた<ref name=ref5>'''森悦郎'''<br>記憶の神経機構と認知症<br>第25回老年期認知症研究会、2012、 pp 19-21.</ref>。
 ヒトのエピソード記憶障害の責任病巣は、①[[海馬]]を含む内側[[側頭葉]]、②[[間脳]]、③[[前脳基底部]]の3か所とされており、これらは2つの[[大脳辺縁系]]回路([[内側辺縁系回路]]-[[Papez回路]]-と[[腹外側辺縁系回路]]-[[Yakovlev回路]]-)を構成している(編集コメント:具体的にどのような疾患がこれらの部位の障害を引き起こすかなどに関して言及してはいかがでしょうか?出血、神経変性疾患など。またHMの例などはどうでしょうか。)。これらの部位では、限局した病巣でも強い前向性健忘をきたす。また、[[前脳]]基底部の障害による健忘では、前向性・逆行性健忘の他に作話やその他の行動異常を伴うことが多い<ref name=re4><pubmed>3977657</pubmed></ref>。内側辺縁系回路は、エピソード記憶の記銘と固定化に作用し、腹外側辺縁系回路は[[情動]]性記憶に関与していると考えられており、最近では[[前頭前野]]が記銘戦略の選択などに関わっているという知見が増加してきた<ref name=ref5>'''森悦郎'''<br>記憶の神経機構と認知症<br>第25回老年期認知症研究会、2012、 pp 19-21.</ref>。


==関連項目==
==関連項目==