「前向性健忘」の版間の差分

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 記憶の心理過程は、記銘、保持、[[想起]]に分けられるが、記銘から想起までの時間によって、神経学領域では、1分程度以内までの記憶を[[即時記憶]]immediate memory、数分から数日程度までの間の記憶を[[近時記憶]]recent memory、数日間以上前の記憶を[[遠隔記憶]]remote memoryと分類してきた。心理学における[[短期記憶]]は即時記憶に、[[長期記憶]]は近時記憶と遠隔記憶をあわせたものにほぼ相当する。また、記憶の下位分類としては、[[陳述記憶]]declarative memoryと[[手続き記憶]]procedural memoryに大別され、陳述記憶はさらに[[エピソード記憶]]episodic memoryと[[意味記憶]]semantic memoryに分類される<ref name=ref1><pubmed>3925849</pubmed></ref>。
 記憶の心理過程は、記銘、保持、[[想起]]に分けられるが、記銘から想起までの時間によって、神経学領域では、1分程度以内までの記憶を[[即時記憶]]immediate memory、数分から数日程度までの間の記憶を[[近時記憶]]recent memory、数日間以上前の記憶を[[遠隔記憶]]remote memoryと分類してきた。心理学における[[短期記憶]]は即時記憶に、[[長期記憶]]は近時記憶と遠隔記憶をあわせたものにほぼ相当する。また、記憶の下位分類としては、[[陳述記憶]]declarative memoryと[[手続き記憶]]procedural memoryに大別され、陳述記憶はさらに[[エピソード記憶]]episodic memoryと[[意味記憶]]semantic memoryに分類される<ref name=ref1><pubmed>3925849</pubmed></ref>。


 健忘は一般に日々の出来事の記憶障害、即ちエピソード記憶障害に対して用いられ、即時記憶が保たれ、近時・遠隔記憶障害がみられる<ref name=ref2>'''山鳥重'''<br>記憶の神経心理学<br>''医学書院'' 2002、pp 145-150.</ref>。[[健忘症候群]]は、作話や記憶錯誤、失見当識を伴うことがあるが、他の認知機能は比較的保たれている<ref name=ref3>http://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%81%A5%E5%BF%98%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4 '''佐藤正之、冨本秀和'''<br>健忘症候群.脳科学辞典</ref>。
 健忘は一般に日々の出来事の記憶障害、即ちエピソード記憶障害に対して用いられ、即時記憶が保たれ、近時・遠隔記憶障害がみられる<ref name=ref2>'''山鳥重'''<br>記憶の神経心理学<br>''医学書院'' 2002、pp 145-150.</ref>。[[健忘症候群]]は、作話や記憶錯誤、失見当識を伴うことがあるが、他の認知機能は比較的保たれている<ref name=ref3>[http://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%81%A5%E5%BF%98%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4 '''佐藤正之、冨本秀和'''<br>健忘症候群<br>脳科学辞典]</ref>。


 記憶に関する神経機構の障害が発現した時点が明らかな場合、障害時点以降の情報の記憶障害を前向性健忘、障害以前の情報の記憶障害を[[逆行性健忘]]と呼ぶ。前向性健忘は近時記憶の記銘力障害であり、逆行性健忘は、遠隔記憶の想起障害であるが、障害時に近い出来事ほど[[忘却]]されやすく、遠いものほど保たれるという時間的勾配が認められる。健忘症候群では通常、前向性健忘と逆行性健忘の両者がみられる。
 記憶に関する神経機構の障害が発現した時点が明らかな場合、障害時点以降の情報の記憶障害を前向性健忘、障害以前の情報の記憶障害を[[逆行性健忘]]と呼ぶ。前向性健忘は近時記憶の記銘力障害であり、逆行性健忘は、遠隔記憶の想起障害であるが、障害時に近い出来事ほど[[忘却]]されやすく、遠いものほど保たれるという時間的勾配が認められる。健忘症候群では通常、前向性健忘と逆行性健忘の両者がみられる。