「前頭側頭型認知症」の版間の差分

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 FTLDには病理学的にさまざまな疾患が含まれるが、それらは凝集し不溶化したタンパク質が神経細胞やグリアに封入体を形成して異常蓄積するという共通の特色を有する。蓄積タンパク質にはタウタンパク質、TDP-43 (transactive response DNA binding protein of 43 kD)、FUS(fused in sarcoma)ほかがある。それらに対応して、FTLDはタウ陽性封入体を有するもの(FTLD-Tau)、TDP封入体を有するもの(FTLD-TDP)、FUS封入体を有するもの(FTLD-FUS)、[[ユビキチン]]陽性だがTDP-43とFUSは陰性の封入体を有するもの(FTLD-UPS)に分類される(表2)。  
 FTLDには病理学的にさまざまな疾患が含まれるが、それらは凝集し不溶化したタンパク質が神経細胞やグリアに封入体を形成して異常蓄積するという共通の特色を有する。蓄積タンパク質にはタウタンパク質、TDP-43 (transactive response DNA binding protein of 43 kD)、FUS(fused in sarcoma)ほかがある。それらに対応して、FTLDはタウ陽性封入体を有するもの(FTLD-Tau)、TDP封入体を有するもの(FTLD-TDP)、FUS封入体を有するもの(FTLD-FUS)、[[ユビキチン]]陽性だがTDP-43とFUSは陰性の封入体を有するもの(FTLD-UPS)に分類される(表2)。  


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表2.分子病理学的な分類  
表2.分子病理学的な分類'''


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|(1)タウ陽性封入体を有するもの(FTLD-Tau)<br> 1. 弧発性:Pick病(Pick球を有するもの)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、嗜銀顆粒性認知症(AGD)<br> 2. 遺伝性:17染色体に連鎖する前頭側頭型認知症およびパーキンソニズム(FTDP-17)
| (1)タウ陽性封入体を有するもの(FTLD-Tau)<br> 1. 弧発性:Pick病(Pick球を有するもの)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、嗜銀顆粒性認知症(AGD)<br> 2. 遺伝性:17染色体に連鎖する前頭側頭型認知症およびパーキンソニズム(FTDP-17)
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|(2)ユビキチン陽性、TDP-43陽性封入体を有するもの(FTLD-TDP)<br> 1. 弧発性:<br>  a.運動ニューロン疾患(MND)を伴うもの(FTD-MND)(=認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症 ALS with dementia)<br>  b.MNDを伴わないもの<br> 2. 遺伝性:progranulin、TDP-43、valosin含有タンパク質(VCP)、C9orf72遺伝子変異
| (2)ユビキチン陽性、TDP-43陽性封入体を有するもの(FTLD-TDP)<br> 1. 弧発性:<br>  a.運動ニューロン疾患(MND)を伴うもの(FTD-MND)(=認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症 ALS with dementia)<br>  b.MNDを伴わないもの<br> 2. 遺伝性:progranulin、TDP-43、valosin含有タンパク質(VCP)、C9orf72遺伝子変異
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|(3)ユビキチン陽性、TDP-43陰性、FUS陽性封入体を有するもの(FTLD-FUS):神経細胞性中間径フィラメント封入体病、好塩基性封入体病、非典型的FTLD、FUS遺伝子変異
| (3)ユビキチン陽性、TDP-43陰性、FUS陽性封入体を有するもの(FTLD-FUS):神経細胞性中間径フィラメント封入体病、好塩基性封入体病、非典型的FTLD、FUS遺伝子変異
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|(4)ユビキチン陽性、TDP-43及びFUS陰性封入体を有するもの(FTLD-UPS):荷電多発空砲体タンパク質2B(CHMP2B)遺伝子変異
| (4)ユビキチン陽性、TDP-43及びFUS陰性封入体を有するもの(FTLD-UPS):荷電多発空砲体タンパク質2B(CHMP2B)遺伝子変異
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 FTLDの臨床病型とFTLDの分子病理に基づいた病型との対応という点では、臨床病型は病変の解剖学的局在(脳萎縮の中心)に対応しており分子病理学的な分類とはクリアカットには対応しない。FTDはすべての分子病理タイプ(FTLD-Tau/FTLD-TDP/FTLD-FUS/FTLD-UPS)に起こりうる臨床病型である。FTDが運動ニューロン疾患を合併している場合は、病理は通常FTLD-TDPであり、一方、FTDが高度のパーキンソニズムを合併している場合はFTLD-Tauの場合が多い。  
 FTLDの臨床病型とFTLDの分子病理に基づいた病型との対応という点では、臨床病型は病変の解剖学的局在(脳萎縮の中心)に対応しており分子病理学的な分類とはクリアカットには対応しない。FTDはすべての分子病理タイプ(FTLD-Tau/FTLD-TDP/FTLD-FUS/FTLD-UPS)に起こりうる臨床病型である。FTDが運動ニューロン疾患を合併している場合は、病理は通常FTLD-TDPであり、一方、FTDが高度のパーキンソニズムを合併している場合はFTLD-Tauの場合が多い。  
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=== FTLD-UPS  ===
=== FTLD-UPS  ===


(特記すべきことがございましたら御願い致します。)
(特記すべきことがございましたら御願い致します。)  


== 治療、経過・予後  ==
== 治療、経過・予後  ==
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 50〜60歳台を中心に発症し、男女差はなく、孤発性、遺伝性の両者の場合がある。有病率では45-64歳の人口10万対15他の報告がある<ref name="ref3" />。  
 50〜60歳台を中心に発症し、男女差はなく、孤発性、遺伝性の両者の場合がある。有病率では45-64歳の人口10万対15他の報告がある<ref name="ref3" />。  


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==


*[[Pick病]]  
*[[Pick病]]