「反応時間」の版間の差分

3,477 バイト追加 、 2012年3月15日 (木)
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
12行目: 12行目:
いずれの処理段階も反応時間に影響を与え得る。
いずれの処理段階も反応時間に影響を与え得る。
反応時間の平均的な長さだけでなく、個人内のばらつき(SDなど)が分析されることもある。
反応時間の平均的な長さだけでなく、個人内のばらつき(SDなど)が分析されることもある。


==いろいろな反応時間==
==いろいろな反応時間==
32行目: 31行目:


====単純反応時間(simple reaction time, SRT)<ref>古い文献では簡単反応時間と訳されることがある。</ref>====
====単純反応時間(simple reaction time, SRT)<ref>古い文献では簡単反応時間と訳されることがある。</ref>====
既知の1種の刺激が提示され、それに対して決められた1種類の反応をする(単純検出課題)ときの反応時間。
既知の1種の刺激が提示され、それに対して決められた1種類の反応をする(単純検出課題)ときの反応時間。
例えば、音が聞こえたらできるだけ速くボタンを押す。
例えば、音が聞こえたらできるだけ速くボタンを押す。
37行目: 37行目:


====選択反応時間(choice reaction time, CRT)====
====選択反応時間(choice reaction time, CRT)====
既知の複数の刺激のいずれかが提示され、刺激に応じて決められた複数の反応のいずれかを行う
既知の複数の刺激のいずれかが提示され、刺激に応じて決められた複数の反応のいずれかを行う
(n肢強制選択課題;n-alternative forced choice task, nAFC task)ときの反応時間。
(n肢強制選択課題;n-alternative forced choice task, nAFC task)ときの反応時間。
42行目: 43行目:


====Go/No-Go反応時間、弁別反応時間(discriminative reaction time)====
====Go/No-Go反応時間、弁別反応時間(discriminative reaction time)====
既知の複数の刺激のいずれかが提示され、そのうち特定の刺激の場合のみ、決められた1種類の反応をするときの反応時間。
既知の複数の刺激のいずれかが提示され、そのうち特定の刺激の場合のみ、決められた1種類の反応をするときの反応時間。
例えば、赤光か緑光が提示され、赤ならばボタンを押し、緑ならば何もしない。
例えば、赤光か緑光が提示され、赤ならばボタンを押し、緑ならば何もしない。
つまり、反応するかしないか(Go/No-Go)を判断する。
つまり、反応するかしないか(Go/No-Go)を判断する。


==初期の研究:心的時間測定(mind chronometry)==
==初期の研究:心的時間測定(mind chronometry)==
120行目: 121行目:
<ref name=RatcliffSmith2004><pubmed>15065913</pubmed></ref>
<ref name=RatcliffSmith2004><pubmed>15065913</pubmed></ref>


==反応時間の性質==
==反応時間の性質==


===分布の非対称性===
===分布の非対称性===
反応時間の分布は、種々の時間長データと同様、正の歪度を示す非対称形になる(図####)。
反応の速さには限界がある一方、非常に遅い反応も一定数生じるためである。
歪度の大きさは実験内容に大きく依存し、指数分布様の極めて非対称な場合から正規分布様のほぼ対称な場合まで様々である。
統計的分析に際しては、この非対称性に留意する必要がある。
反応時間分布にあてはめるモデルとしては、ワイブル分布や対数正規分布も用いるが、ex-Gaussian分布を用いることが多い
<ref name=Ratcliff1993><pubmed>8272468</pubmed></ref>
<ref>
'''Van Zandt T'''<br>
Analysis of response time distributions.<br>
In Pashler H,  Wixted J (eds.) Steven's handbook of experimental psychology (3rd ed.) Volume 4, Methodology in Experimental Psychology.<br>
''New York: John Wiley & Sons'': 2002, pp. 461-516.
</ref>
<ref>
'''Heathcote A, Popiel, S J, Mewhort, D J K'''<br>
Analysis of response time distributions: An example using the Stroop task.<br>
<br>
''Psychol Bull'': 1993, 109;340-347
</ref>
<ref>
''' Lacouture Y, Cousineau D'''<br>
How to use MATLAB to fit the ex-Gaussian and other probability functions to a distribution of response times.<br>
''Tutorials in Quantitative Methods for Psychology'': 2008, 4;35-45
</ref>


===速さと正確さのトレード・オフ===
===速さと正確さのトレード・オフ===
速く反応しようとするほど反応の正確さは低下する。
逆に、正確に反応しようとするほど反応は遅くなる。
この交換関係を速さと正確さのトレード・オフ(speed-accuracy tradeoff, SAT)という。
このため、反応時間を分析する際は、正答率・誤答率など反応の正確さの指標もあわせて考慮する必要がある。
また、速さと正確さのトレード・オフが適切に統制された実験を計画することが重要である。
例えば2つの条件を比較するとき、反応時間は条件1の方が短いが、誤答率は条件2の方が低かったとすると、解釈が難しい。
この問題を避けるため、トレード・オフを制御して反応時間と正答率・誤答率のどちらかに目標を絞り込むことが多い。
トレード・オフを制御する方法はいくつかある<ref name=Wickelgren1977><pubmed>15066395</pubmed></ref>。
典型的には、教示と、課題難易度の調整を用いる。
正答率・誤答率を指標にしたい場合は、課題難易度をある程度難しくした上で、速さより正確さを優先するよう教示する。
逆に反応時間を指標にしたい場合は、時間をかければ誤答がほぼなくなるような難易度にし、できるだけ速くかつ正確に反応するよう教示する。
難易度は予備実験の結果を見て決定するが、全被験者一律にすることもあれば、被験者毎に決定することもある。
反応に時間制限を設けたり、決められた時(例えば音で知らされる)に必ず反応させることで反応時間を一定に制御する方法もある
<ref name=SchoutenBekker1967><pubmed>6062205</pubmed></ref>


===Hick-Hymanの法則===
===Hick-Hymanの法則===
133行目: 176行目:


===反応時間と神経活動===
===反応時間と神経活動===
==反応時間に影響する要因==
単純反応時間や選択反応時間に影響する要因として知られているものを列挙する。
実験によっては、これらの要因を適切に統制しなければならない。
===刺激強度===




<references/>
<references/>
89

回編集