「外国語学習」の版間の差分

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=== 相互的同調機能と対面コミュニケーション ===
=== 相互的同調機能と対面コミュニケーション ===
 言語獲得理論において,コミュニケーションにおける相互理解の達成は、無意識的・自動的な同調に依拠するという「'''相互的同調機能'''」(interactive alignment) (Garrod & Pickering, 2004)なる考えが現れてきた<ref>'''Garrod, S., & Pickering, M. J.'''<br>Why is conversation so easy?<br>''Trends in Cognitive Science, 8, 8-11'': 2004</ref>。上述の統語的プライミング現象もそのひとつであるが,こうした研究の潮流は,第二言語運用能力の向上には,リアルタイムでの言語処理能力を高める必要があり,コミュニケーション場面における相互作用がその促進に重要な役割を果たすことを示唆している。しかし,コミュニケーション場面における相互作用による言語処理能力向上のための条件とその神経基盤についての研究はまだ緒についたばかりである。その展開には,外国語学習を社会的相互作用の枠組で捉えること,つまり,2個体間相互作用としての「'''間主観性'''」(inter-subjectivity)と対応付け,他者への働きかけとしての言語産出と,他者からの働きかけの受容としての言語理解を介したシステム間相互作用として捉えることが必要かつ有望であると考えられる<ref>'''定藤規弘・横川博一'''<br>社会脳-英語教育研究への新たなる挑戦(英語教育への脳科学的アプローチ 第5回)<br>''英語教育, 64(12), 68, 69, 大修館書店'': 2016</ref>。
 言語獲得理論において,コミュニケーションにおける相互理解の達成は、無意識的・自動的な同調に依拠するという「'''相互的同調機能'''」(interactive alignment) (Garrod & Pickering, 2004)なる考えが現れてきた<ref>'''Garrod, S., & Pickering, M. J.'''<br>Why is conversation so easy?<br>''Trends in Cognitive Science, 8, 8-11'': 2004</ref>。上述の統語的プライミング現象もそのひとつであるが,こうした研究の潮流は,第二言語運用能力の向上には,リアルタイムでの言語処理能力を高める必要があり,コミュニケーション場面における相互作用がその促進に重要な役割を果たすことを示唆している。しかし,コミュニケーション場面における相互作用による言語処理能力向上のための条件とその神経基盤についての研究はまだ緒についたばかりである。その展開には,外国語学習を社会的相互作用の枠組で捉えること,つまり,2個体間相互作用としての「'''間主観性'''」(inter-subjectivity)と対応付け,他者への働きかけとしての言語産出と,他者からの働きかけの受容としての言語理解を介したシステム間相互作用として捉えることが必要かつ有望であると考えられる<ref>'''定藤規弘・横川博一'''<br>社会脳-英語教育研究への新たなる挑戦(英語教育への脳科学的アプローチ 第5回)<br>''英語教育, 64(12), 68-69, 大修館書店'': 2016</ref>。


== 関連項目 ==
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