「妄想」の版間の差分

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<font size="+1">福島 貴子、針間 博彦</font><br>
<font size="+1">福島 貴子、針間 博彦</font><br>
''東京都立松沢病院精神科''<br>
''東京都立松沢病院精神科''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年12月10日 原稿完成日:2013年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年12月10日 原稿完成日:2014年6月10日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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delusion percept(ion)
delusion percept(ion)


 合理的にも感情的にも了解可能な動機なしに、真の知覚に異常な意味が付与されるものである。たとえば、患者は自宅の前に自動車が止まっているのを見ると、「自分を狙っている組織があり、見張られている」と確信する。付与される意味はほとんどが被害的自己関係付けであるが、あらゆる了解可能な意味の背後に、無人称的な他者(たとえば上の例では「組織」)が出現することが特徴である。妄想の形式の中では、この妄想知覚のみが[[wj:クルト・シュナイダー|Schneider]]の一級統合失調症状(表1)(以下、一級症状と記す)である。一級症状は統合失調症に特徴的な症状であるが、統合失調症に必ず認められる徴候ではなく、また他の多くの統合失調症状と同様に、[[器質性精神障害|器質性]]・[[器質性精神障害|中毒性]]の病態でも出現しうる。
 合理的にも感情的にも了解可能な動機なしに、真の知覚に異常な意味が付与されるものである。たとえば、患者は自宅の前に自動車が止まっているのを見ると、「自分を狙っている組織があり、見張られている」と確信する。付与される意味はほとんどが被害的自己関係付けであるが、あらゆる了解可能な意味の背後に、無人称的な他者(たとえば上の例では「組織」)が出現することが特徴である。妄想の形式の中では、この妄想知覚のみが[[wj:クルト・シュナイダー|Schneider]]の1級統合失調症状(表1)(以下、1級症状と記す)である。1級症状は統合失調症に特徴的な症状であるが、統合失調症に必ず認められる徴候ではなく、また他の多くの統合失調症状と同様に、[[器質性精神障害|器質性]]・[[器質性精神障害|中毒性]]の病態でも出現しうる。


 妄想知覚の体験構造は二分節性と呼ばれる。すなわち、患者から知覚された対象に関する了解可能な意味解釈までからなるに至る第1分節(上の例では「家の前に自動車が止まっている」)と、了解可能なあらゆる意味解釈の背後で始まる、合理的にも[[情動]]的にも了解不能な意味付けである第2分節(上の例では「自分を狙っている組織がある」)からなる。
 妄想知覚の体験構造は二分節性と呼ばれる。すなわち、患者から知覚された対象に関する了解可能な意味解釈までからなるに至る第1分節(上の例では「家の前に自動車が止まっている」)と、了解可能なあらゆる意味解釈の背後で始まる、合理的にも[[情動]]的にも了解不能な意味付けである第2分節(上の例では「自分を狙っている組織がある」)からなる。
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:自己の思考内容が媒介手段によらずに他者に感知されるという体験であり、「自分の頭の中が皆に知られている」などと訴えられる。媒介手段によらないとは、幻声(たとえば考想化声)、妄想知覚(たとえば他者の言動にそうした意味が付与される)、関係妄想(たとえば「テレビで自分のことが放送されている」)など他の症状に基づくものではないことである。なお、考想察知 thoughts being readは広く「人に考えを読まれている」という体験をさす用語であり、考想伝播のほか上記の媒介手段によるものも含まれる。
:自己の思考内容が媒介手段によらずに他者に感知されるという体験であり、「自分の頭の中が皆に知られている」などと訴えられる。媒介手段によらないとは、幻声(たとえば考想化声)、妄想知覚(たとえば他者の言動にそうした意味が付与される)、関係妄想(たとえば「テレビで自分のことが放送されている」)など他の症状に基づくものではないことである。なお、考想察知 thoughts being readは広く「人に考えを読まれている」という体験をさす用語であり、考想伝播のほか上記の媒介手段によるものも含まれる。
:;[[考想転移]] (thought transference)
:;[[考想転移]] (thought transference)
:他者の思考内容が媒介手段によらずに自己に感知されるものであり、「人が考えていることが分かる」などと訴えられる。考想伝播と逆方向の体験である。本症状についてシュナイダーは直接には言及していないが、彼が「その他の考想被影響体験」も1級症状に含めていることから、考想被影響体験の一種である考想転移には一級症状と同様の診断的意義があると考えられる。
:他者の思考内容が媒介手段によらずに自己に感知されるものであり、「人が考えていることが分かる」などと訴えられる。考想伝播と逆方向の体験である。本症状についてシュナイダーは直接には言及していないが、彼が「その他の考想被影響体験」も1級症状に含めていることから、考想被影響体験の一種である考想転移には1級症状と同様の診断的意義があると考えられる。


===身体的被影響体験===
===身体的被影響体験===

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