「妄想」の版間の差分

317 バイト除去 、 2014年6月7日 (土)
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#内容が不可能である
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 と極めて類似している。すなわちDSMの'''A1.'''はJaspersの言う'''1.'''に、'''A3.'''は'''2.'''に、'''A4.'''は部分的に'''3.'''に対応していて、'''A2.'''のみが新たに加えられた指標である。しかし、Jaspersがこの妄想の外的メルクマールを示した後に、発生的了解が不能な真正妄想と、それが可能な妄想様観念の区別を強調しているのに対し、DSMではそうした区別は行なわれていない。(編集コメント:箇条書きの番号の対応が合っているかご確認ください ⇒複雑で申し訳ありませんが、DSM-5の1,2,3をA, B, C, などと表記することは可能でしょうか? ⇒改変いただきありがとうございます。下記がともに「B」となっていたため、「B」は、と「C」は、に訂正させていただきました。)
 と極めて類似している。すなわちDSMの'''A1.'''はJaspersの言う'''1.'''に、'''A3.'''は'''2.'''に、'''A4.'''は部分的に'''3.'''に対応していて、'''A2.'''のみが新たに加えられた指標である。しかし、Jaspersがこの妄想の外的メルクマールを示した後に、発生的了解が不能な真正妄想と、それが可能な妄想様観念の区別を強調しているのに対し、DSMではそうした区別は行なわれていない。


 DSM-5の'''B.'''は妄想と誤判断との区別であり、'''C.'''は妄想と優格観念との区別である。DSM-III、III-R<ref name=ref2>'''American Psychiatric Association'''<BR>Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. 3rd Ed, Revised. <BR>''Washington DC, APA'', 1987</ref>では「妄想は優格観念からも区別することができる」と説明され、妄想の「あるかないか」という性質が強調された。だが[[DSM-IV]]<ref name=ref3>'''American Psychiatric Association'''<BR>Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. 4th Ed, Text Revision, <BR>''Washington DC, APA'', 2000.</ref>では一転して、優格観念との区別は困難であるとされ、その根拠として、2.と3.の間に「妄想的確信は連続体上に生じる」という文言が追加された。DSM-5では、こうした考え方がさらに推し進められ、「妄想は優格観念から推論される」という表現に至っている。
 DSM-5の'''B.'''は妄想と誤判断との区別であり、'''C.'''は妄想と優格観念との区別である。DSM-III、III-R<ref name=ref2>'''American Psychiatric Association'''<BR>Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. 3rd Ed, Revised. <BR>''Washington DC, APA'', 1987</ref>では「妄想は優格観念からも区別することができる」と説明され、妄想の「あるかないか」という性質が強調された。だが[[DSM-IV]]<ref name=ref3>'''American Psychiatric Association'''<BR>Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. 4th Ed, Text Revision, <BR>''Washington DC, APA'', 2000.</ref>では一転して、優格観念との区別は困難であるとされ、その根拠として「妄想的確信は連続体上に生じる」という文言が追加された。DSM-5では、こうした考え方がさらに推し進められ、「妄想は優格観念から推論される」という表現に至っている。


 まとめると、DSM-5ではJaspersによる妄想の外的メルクマールが採用され、妄想は正常な観念や信念とは質的に異なるという視点に立っている一方、妄想性の思考と非妄想性の思考の相違は確信の強度にあり、両者の間に明確な区別がないことも示唆しており、妄想の定義に矛盾が生じている。
 まとめると、DSM-5ではJaspersによる妄想の外的メルクマールが採用され、妄想は正常な観念や信念とは質的に異なるという視点に立っている一方、妄想性の思考と非妄想性の思考の相違は確信の強度にあり、両者の間に明確な区別がないことも示唆しており、妄想の定義に矛盾が生じている。
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 着想が突然に生じて直ちに確信される。その内容は自己に関するもの(心気、血統、召命など)、他者に関するもの(被害、嫉妬など)、物に関するもの(発明など)など様々である。着想はきっかけなく生じることもあれば、何かを見た際などにそれが刺激となって生じることもある。後者の例として、警官を見かけた時、その警官に対する自己関係付けが生じることなく、自分は指名手配されていると着想する。こうした知覚結合性の妄想着想は、知覚に異常な意味付けがされないことから、妄想知覚と区別される。すなわち妄想着想は一分節からなる。妄想着想は非精神病性の着想(「ひらめき」)や優格観念からの区別が困難なことがあり、診断上の重要性は妄想知覚に劣る。
 着想が突然に生じて直ちに確信される。その内容は自己に関するもの(心気、血統、召命など)、他者に関するもの(被害、嫉妬など)、物に関するもの(発明など)など様々である。着想はきっかけなく生じることもあれば、何かを見た際などにそれが刺激となって生じることもある。後者の例として、警官を見かけた時、その警官に対する自己関係付けが生じることなく、自分は指名手配されていると着想する。こうした知覚結合性の妄想着想は、知覚に異常な意味付けがされないことから、妄想知覚と区別される。すなわち妄想着想は一分節からなる。妄想着想は非精神病性の着想(「ひらめき」)や優格観念からの区別が困難なことがあり、診断上の重要性は妄想知覚に劣る。
 なお、統合失調症の前駆期にみられる自生思考は、内容が不特定・多岐にわたり妄想的確信を伴わないことから点において、妄想着想と区別される。
 なお、統合失調症の前駆期にみられる自生思考は、内容が不特定・多岐にわたり妄想的確信を伴わないことから点において、妄想着想と区別される。


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 DSM-IIIの作成に中心的役割を果たしたSpitzer, R, L.<ref name=ref12><PUBMED>8494062</PUBMED></ref>によれば、奇異な妄想という概念は、[[wj:エミール・クレペリン|Kraepelin]]が[[早発性痴呆]](統合失調症)における妄想を「無意味性」という概念で規定し、またJaspersがそれを「了解不能」とみなしたことに由来するという。DSM-III以降、考想伝播、考想吹入、考想奪取、および感情・衝動・行動の領域における他者によるさせられ体験・被影響体験(被支配妄想delusion of controlと呼ばれる)など多くの自我障害は、すべて奇異な妄想に含まれる。
 DSM-IIIの作成に中心的役割を果たしたSpitzer, R, L.<ref name=ref12><PUBMED>8494062</PUBMED></ref>によれば、奇異な妄想という概念は、[[wj:エミール・クレペリン|Kraepelin]]が[[早発性痴呆]](統合失調症)における妄想を「無意味性」という概念で規定し、またJaspersがそれを「了解不能」とみなしたことに由来するという。DSM-III以降、考想伝播、考想吹入、考想奪取、および感情・衝動・行動の領域における他者によるさせられ体験・被影響体験(被支配妄想delusion of controlと呼ばれる)など多くの自我障害は、すべて奇異な妄想に含まれる。


 ICD-10では「奇異な妄想」という語は用いられていないが、統合失調症の全般基準(1)(d)「文化的に不適切でまったくありえない持続的妄想」は、DSMによる奇異な妄想の定義に一致する。ただし、考想伝播、考想吹入、考想奪取など考想被影響体験は(1)(a)に、また被支配妄想、被影響妄想は(1)(b)に含められており、DSMとは異なり、自我障害を「奇異な妄想」として一括りにはしていない。
 DSM-IIIからDSM-IV-TRまで、奇異な妄想は、統合失調症の特徴的症状Aのうち1つあれば十分なものに含まれていた。だがDSM-5では、これらの症状が他の症状に比べて診断特異性が高いことは確認されていないという理由を挙げ、「1つあれば統合失調症と診断してよい」という扱いが廃止されている。これによって、「奇異な妄想」(およびSchneiderの1級症状)は、DSMの診断基準から姿を消した。


 DSM-IIIからDSM-IV-TRまで、奇異な妄想は、統合失調症の特徴的症状Aのうち1つあれば十分なものに含まれていた。だがDSM-5では、これらの症状が他の症状に比べて診断特異性が高いことは確認されていないという理由を挙げ、「1つあれば統合失調症と診断してよい」という扱いが廃止されている。これによって、「奇異な妄想」(およびSchneiderの1級症状)は、DSMの診断基準から姿を消した。
 ICD-10では「奇異な妄想」という語は用いられていないが、統合失調症の全般基準(1)(d)「文化的に不適切でまったくありえない持続的妄想」は、DSMによる奇異な妄想の定義に一致する。ただし、考想伝播、考想吹入、考想奪取など考想被影響体験は(1)(a)に、またこれ以外の被影響体験(被支配妄想、被影響妄想など)は(1)(b)に含められており、DSMとは異なり、自我障害を「奇異な妄想」として一括りにせず、1項目以上あれば統合失調症と診断し得るものしている。


==関連項目==
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