心身症

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守口 善也
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 脳病態統合イメージングセンター
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年6月4日 原稿完成日:2013年6月xx日
担当編集委員:加藤 忠史(独立行政法人理化学研究所)

英:psychosomatic disorders、独:Psychosomatische Unordnungen、仏:désordres du psychotomatic

 心身症とは、「身体症状・身体疾患において、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的・機能的障害が認められる病態」である。身体症状・疾患などの身体面だけではなく、その背景にある心理社会的な側面や、脳(こころ)と身体の相互作用(心身相関)をベースにして、心-身を統合的に考察する全人的医学である心身医学を基礎とする。ストレス情動に関する理論、アレキシサイミアアレキソミアなどの心理・性格的要因などが病態仮説のなかで取り上げられてきた。そのような様々な要因によって引き起こされる心理社会的ストレスは、自律神経系、神経内分泌系(特に視床下部-下垂体-副腎系[HPA axis])、免疫系などを介して身体症状に結びつくと同時に、身体状態もまた認知や情動などのこころ(脳)の状態に影響を与え、その相互作用(心身相関)によって、bio-psycho-socialの各レベルで心身症の病態が成立すると考えられている。

心身症とは

表1.心身症の病態を考えることのできる疾患
心身症
器質的疾患 機能的疾患 神経症性・一過性心身反応
呼吸器系 気管支喘息(cough variant asthmaを含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD) 過換気症候群、咽頭痙攣 神経症咳
循環器系 本態性高血圧症、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞) 本態性低血圧症(特発性)、起立性低血圧症、一部の不整脈、レイノー病 神経循環無力症
消化器系 胃・十二指腸潰瘍、急性胃粘膜病変(AGML)、慢性胃炎、潰瘍性大腸炎、慢性肝炎、慢性膵炎 過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、胆道ジスキネジー、神経性腹部緊満症、びまん性食道痙攣、食道アカラシア 反すう、呑気症(空気嚥下症)、ガス貯留症候群、心因性嘔吐
内分泌・代謝系 神経性食欲不振症、甲状腺機能亢進症・低下症、糖尿病 (神経性)過食症、Pseudo-Bartter症候群、愛情遮断性低身長症、腎性糖尿 心因性多飲症
神経・筋肉系 痙症斜頸、パーキンソン症候群 筋収縮性頭痛、偏頭痛、書痙、眼瞼披露、味覚脱失、自律神経失調症、舌の異常運動、振戦、チック、舞踏病様運動、ジストニア、線維筋痛症 その他の慢性疼痛、自律神経失調症、めまい、冷え性、しびれ感、異常知覚、運動麻痺、失立失歩、失声、失神、痙攣
小児科領域
皮膚科領域
外科領域
整形外科領域
産婦人科領域
耳鼻咽頭科領域
歯科・口腔外科領域

 心身症(psychosomatic disorder)とは、「身体症状・身体疾患において、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的・機能的障害が認められる病態」である[1]。心身症は独立した疾患単位ではなく、病態名であり、特定の疾患、特定の診療科にしばられるものではない。この心身症の枠組みに入る疾患としては、表1

表1.心身症の病態を考えることのできる疾患

[2]にあげられるようなものがあり、病名を記載するに当たっては、例えば高血圧(心身症),十二指腸潰瘍(心身症),気管支喘息(心身症)と記載される。多軸評定を用いていたDSM-IV-TRにおいては、心身症は第1軸にpsychological factors affecting medical condition (身体疾患に影響を与えている心理的要因)を、第3軸には身体疾患や身体症状を記載することになっており、身体疾患に影響を与える心理的要因について詳細に述べられていた(表2)

表2.心身症に相当する DSM-IV-TR の記載

。2013年に発表されたDSM-5では、多軸診断は廃止されたが、引き続き心身症はpsychological factors affecting other medical conditionsと位置づけられている。ICD-10では、F5 (”behavioural syndromes associated with physiological disturbances and physical factors 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群)”の中に、摂食障害(F50)、性機能不全(F52)、他に分類される障害あるいは疾患に関連した心理的および行動的要因(F54)などであり、F54の例として、喘息皮膚炎湿疹胃潰瘍粘液性大腸炎潰瘍性大腸炎じんましんなどがあげられているが、もちろんこの操作的定義にしばられるものではない。

 心身症について、日本心身医学会による定義(1991年)では、冒頭の定義に加え、「神経症うつ病など他の精神障害にともなう身体症状は除外する。」という文章があるが、実際の臨床では神経症うつ不安障害人格障害などの精神障害が、身体症状の背景にある例は極めて多く、これを除くのは一般臨床では非現実的で、批判も多い。この「他の精神障害に伴う身体症状を除外」したものは極めて狭義の心身症であり、現実的な心身症は、冒頭の定義にあるように、心理社会的な問題を背景にして出現する身体症状として広くとらえられている。特定のカテゴリ化した診断名をそこに当てはめるのは誤りである。

 心身症の病態は多様で、例えば心理社会的ストレスは、身体症状を引き起こし増悪させる一因となる一方で、身体症状そのものも社会的不適合などの心理社会的ストレスを引き起こし、心理社会的ストレスと身体症状は相互に影響し合って、悪循環を形成することが多い。治療コンプライアンスにおける問題も、心身症の枠組みでとらえられる。例えば、治療に対する失望やあきらめ、医療に対する不信、知識の不足、性格傾向などから、適切な服薬や治療を拒むことによって身体症状を悪化させているのもその一例である。精神腫瘍学(psycho-onchology)という領域も存在し、がんが精神・心理的影響を与えることはもちろん、心の問題ががんの発症や罹患後に与える影響も研究されている。

心身医学について

 心身症に関連した概念として、心身医学(psychosomatic medicine)がある。心身医学は、身体症状・疾患などの身体面だけではなく、その背景にある心理社会的な側面や、脳(こころ)と身体の相互作用(心身相関)をベースにして、心-身を統合的に考察する全人的医学で、デカルト流の精神・身体を明確に区別した二元論的アプローチとは相反するものである。医療としての実践においては、本邦では心療内科、精神科、一般内科をはじめとする幅広い診療科において取り入れられている。世界的にはドイツで誕生し、その後アメリカでは精神科を中心に発展した。

 この心身医学の背景には、Freudによる精神分析理論・力動的精神医学などの、複雑で微妙な人間の心理・行動をひもとく学問、Cannon緊急反応ホメオスターシスの概念、Selyeのストレス学説、Pavlovの条件反射学、Skinnerオペラント条件付けといった、脳・精神生理学、学習理論、精神神経内分泌、精神神経免疫などの、こころと身体に関する幅広い学問の統合がある。その上で、この心身医学の勃興の最終的な動機となったのは、現代の医学の専門化・細分化である。専門的に細分化された身体医学は、今日の医学の発展と患者への恩恵をもたらした反面で、身体偏重・臓器中心などの考え方に偏り、「病気をみて人を診ない」という医学・医療のありかたへの反省をもたらした。そのことから、心身両面からの全人的・統合的医療の必要性が唱えられるようになった。さらに、現代のストレス社会において、人々が受ける心理社会的ストレスは日々増大しており、それに伴ったストレス関連疾患や心身症が国民的な問題になってきた、という背景もある。

機序

 心身症の病態は、特定の疾患に存在するものではなく、その在り方も多様であるため、統一的なモデルは構築しにくい。bio-psycho-social(生物学的・心理的・社会的)といった、異なるレベルでの病態モデル構築が可能である。ここでは、いくつかのトピックスに従って心身症の病態モデルを概説する。

ストレス

 ストレス研究の歴史で最も大きな意味を持つのは、Selyeのストレス学説[3] [4]である。Selyeは、ストレスによって起こる生体の非特異的な生体防御反応としての「一般適応症候群」を提唱し、ストレス後のステージとして、段階的に警告反応期(ショック相、反ショック相)、抵抗期、症憊期と進行し、副腎皮質の肥大、胸腺萎縮、胃・十二指腸潰瘍の3つの症状が起こるとした。ここで重要なのは、物理的・科学的・生物学的ストレッサーと同様に、心理的ストレッサーも同じような反応が起きるということを提唱したことである。

 心理社会的ストレスの研究として有名なものとして、Holmes and Raheによるライフイベントによるストレスモデルがある。彼らはストレスを「日常生活上の様々な変化(ライフイベント)に再適応するために必要な努力」と定義して、その努力によってエネルギーが費やされ蓄積し、個人の対応能力を超えた際に疾患が生じると考え、表のような尺度を作成した(表3)

表3.社会的再適応評価尺度

[5][6]。対してLazarus [7]は、「日常生活の些事により、常に長期間繰り返され、かつ意識されないうちに経験されるストレス」の重要性を強調した(表4)。

表4.Daily Hassles (日常いらだちごと)

重大なライフイベントであれ日常のいらだちの蓄積であれ、彼らが提言したことは、人間であれば誰もが遭遇する可能性のある出来事が、ストレス反応を引き起こし、心身症につながる可能性があるということである。また、突発的な急性のストレス反応でも、それが繰り返され蓄積し慢性化することにより、その身体症状が遷延化することにつながる。もちろん、大きなストレス反応であれば、一回の急性のストレス反応が重大な心身の問題を引き起こすことになる。  また、外からみると同じにみえるストレスでも、個人によってストレスとして感じやすい傾向は違う。この個体差を説明するために、疾病発症のモデルとして語られるものとして、ストレス脆弱性モデルがある(図1)

図1.ストレス脆弱性モデル

。これは、何らかの脳機能不全として語られる内因に、ストレス(外因)が加わり、疾病を発症するとするものである。この文脈で語られる脆弱性(内因)としては、遺伝的素因を含むが、後天的に獲得されたものも個体の脆弱性となり得る。

情動

 心理社会的ストレスの中で、最も重要であると考えられるのが情動ストレスである。ヒトのみでなくネズミの実験でも、この心理・情動ストレスを用いることができ、例えば恐怖条件付けコミュニケーションボックス(隣のマウスが電撃ストレスを受けているのを観察する)などの手法は心理的なストレスの代表的なものである。こうした実験的な心理・情動ストレスでは、扁桃体視床下部などを中心とした情動ネットワークが関わっている。

心身症の背景となる心理・性格的要因

アレキシサイミア

alexithymia

 心身症に特徴的な傾向として、身体症状を呈しやすい傾向がある代わりに、自己の情動・感情を同定し言語化することができず、感情表現がフラットで共感性に欠け、自己の内面に焦点が向かず外界の事物事象へ注意が向きがちで、他人との生き生きとした社会的なつながりに欠けるということが指摘されている。これをアレキシサイミア(失感情[8])という。臨床的にはアスペルガーなどの自閉症スペクトラムとの類似性があることから、自己の感情の認識の問題のみならず、社会性の問題も指摘されている[9][10][11][12]。「もの言わぬは、腹ふくるる業なり」との名言があるが、アレキシサイミアが心身症に特徴的な心理・性格的要因であることに対する一つの仮説は、感情同定・表現(自己の情動・感情状態への「気づき」)がストレスの解消作用や、ストレスの身体化を防ぐ作用を持っているのではないかということである[13]

アレキソミア

alexisomia

 心身症に特徴的な傾向として、上記のアレキシサイミアは自己の感情の同定・表出やカテゴリ化などの障害であるが、より低次の情動・あるいは身体状態への気づきの障害をアレキソミア(失体感[14])という。外的な刺激の知覚以外に、生体は、内臓自律神経系液性因子などの身体内部状態に関する情報を脳で知覚しており(内受容感覚Interoception)、この内受容感覚への気づき(Interoceptive awareness)は自己の情動状態および感情(や意識)の生成の基礎を構築しているとされる[15]。この内受容感覚の気づきに関しては、脳科学的には前島皮質の役割がクローズアップされている[16][17]。この内受容感覚の障害・アレキソミアは、ありのままの情動・感情体験を阻害し、アレキシサイミアにつながると同時に、心身症の背景因子の一つとして考えられている[18]。また、もう一つの機序は、身体内部状態への気づきが悪いことで、たとえば身体状態の変化を危険信号として捉えられず、適切な対処(例:休息をとったり医療機関を受診したり)を行わないことで疾病の発症・増悪を招くといったプロセスも考えられる。

タイプA性格行動パターン

 複数の大規模コホート研究により、虚血性心疾患に関係する心理行動的要因として、タイプA行動様式が独立した危険因子であることが明らかになった[19][20]。タイプAの特徴は、

  1. 攻撃的
  2. 野心的
  3. 競争心をあおる
  4. いつも時間に追い立てられている

 といったものである。遺伝性の要因はなく、仕事面での出世や昇給などの報酬により後天的に強化された行動様式であると考えられている。こうしたタイプA行動は、交感神経機能の亢進、副交感神経機能の低下が積み重なり、脂質代謝異常、心拍数・血圧上昇、心筋酸素消費量の増加、血液凝固能上昇、血管れん縮などのリスクが高まり、虚血性心疾患の発症につながると考えられる。なお、「タイプB」とは、タイプAの対極として設定されたもので、感情を素直に表現でき、リラックスしてうまく付き合える性格である。

タイプC性格行動パターン

 Temoshok [21][22]は、メラノーマ悪性黒色腫)患者を150人以上面接し、彼らの4分の3に共通の性格的特徴を抽出した。それによると、怒り(や他のネガティブな感情、不安、恐れ、悲しみなど)の感情に気づかず表出しない、仕事や人づきあい、家族関係において、忍耐強く、控えめで、協力的で譲歩を厭わない。権威に対し従順で、他人の要求を満たそうと気をつかいすぎ、自分の要求は十分に満たそうとせず、極端に自己犠牲的になることが多い。いわゆる「いい人」タイプである。素直な感情を心の奥で抑圧しているために、ストレスがたまり、それが免疫防衛機能に影響し、ガンへのリスクを高めると考えられている。ただし、このメラノーマやがんに真に「特異的な」性格傾向かどうかは不明である。

脳と身体をつなぐルート

 心理社会的ストレスが脳を主座として形成されるとすると、そのストレス状態が何らかの形で身体状態に反映されることになるが、その経路としては、主に自律神経系ホルモン系、さらに免疫系などがあると考えられている。一般的には、急性ストレスでは交感神経系及び一部の免疫機能が賦活するが、慢性ストレスではHPA axisが優性となり、さらに液性細胞性免疫が抑制されると考えられている。

自律神経系

 自律神経・副腎髄質を介して、交感神経系の亢進が起こると、様々な急性ストレス反応が起こる。例えば心筋虚血、心拍変動性低下、膵臓β細胞でのインスリン分泌の低下、膵臓α細胞でのグルカゴン分泌の上昇の結果|としての血糖上昇などが起こるが、こうした変化が慢性化すると、高血圧糖尿病を含めた全身性の生活習慣病や、虚血性心疾患、心室性不整脈などに結びつく可能性もある。当然自律神経の影響をうける疾患はこれだけではなく、身体の中で、自律神経系のコントロールを受けていない部位を探す方が難しいくらいであるので、頭痛、気管支喘息消化性潰瘍など、自律神経系は、身体疾患の発症・増悪に広くかつ深く関与している(図2参照)。

図2.自律神経系

視床下部-下垂体-副腎系(HPA axis)

 ストレスは、視床下部下垂体、副腎皮質を介して、コルチゾール上昇をもたらすが、これによりインスリン抵抗性が高まり糖尿病の発症に寄与する。さらに、脂質代謝にも関わっており、肥満内臓脂肪蓄積・高血圧もこれに関連している。免疫系にも影響を与え、例えばNK細胞にはコルチゾール受容体があり、受容すると細胞死に至るため、細胞性免疫の低下につながる。さらに、血小板凝集能を亢進させ、血栓を形成させ易くする恐れがある(図3)。

図3.脳・自律神経・HPA axisと身体疾病

免疫系

 胸腺・骨髄脾臓リンパ節などの免疫系組織は、自律神経系の支配を受けている。また、リンパ球などの免疫担当細胞の膜表面には様々なホルモンや神経伝達物質に対するレセプターが発現しており、ストレス負荷時にはこれらのレセプターや伝達物質を介して免疫系も影響される(図3参照)。急性ストレス時にはNK活性の亢進、リンパ球CD4/CD8比の低下、唾液IgAの上昇などが認められ、慢性ストレスではNK活性低下・細胞数減少、ConA/PHAリンパ球幼若化試験によって測られるT細胞増殖能低下、唾液中IgA低下などが認められる。

身体から脳へ

 こころと体がつながっているというのは、現在のニューロサイエンスの中では大きな注目を集めている。特に、上記に述べてきたように、従来、こころ(脳)が身体をコントロールしている部分が大きいことは広く認知されていたわけだが、逆に身体状態もまたこころを形作るということが、最近の脳機能イメージングなどを主体としたニューロサイエンスなどでトピックスになっているからである。

 Damasioらは、特にWilliams Jamesらの考え方をベースにして、意思決定や意識、主観的な感情体験などは、身体の状態を基礎として形成される、という一連の考えを提唱している[23]。特に「ソマティック・マーカー仮説」と呼ばれる考え方(意志決定は「合理的、理性的」になされると考えられがちであるが、実際は、無意識のうちに起こる身体的な反応がそのオプションを絞り込み、合理的思考が働くのはそのあとである、という考え)は多くの支持を呼んだ。また、DamasioやCraigは、皮質が、身体表象から主観的な感情体験を生み出すもとであると考えている。Craigは、「内受容感覚」への気づき(Interoceptive awareness)が情動・意識を生み出すもとであり、それには前島皮質が関与しているというエビデンスを詳細にレビューし、従来不明な部分が多かった島皮質の機能を明るみにしたものとして注目されている[16] [17]

 100年以上前から続く、James-Lange、 Schachter-Singerなどの情動理論からは、やはり心身が不可分で密接につながっているという認識から、情動や意識の問題を扱っていたのだが、現在になってその考えが見直されてきている。今後は、身体→脳、脳→身体という双方向のダイナミズムが脳科学の研究の対象になっていき、心身症の病態解明にすすむことが予想される。

診断

 身体症状・身体疾患に対しては、まず各診療科・専門科別の機能的・器質的変化の評価がある。さらに、精神科的な心の問題・さらに広い心理社会的問題などの評価があり、全体として心身症としての治療の対象になるのかどうかが決められる。多くの身体疾患は、隠れた心理社会的背景が多かれ少なかれ存在する。そうするとすべての身体疾患は心身症ということになるが、現実的には心理社会的な側面も含んだ統合的なアプローチが臨床の中で効果的だと判断して、初めて「心身症」と診断することが多い。

 評価の際に最も重要なのが「心身相関」の把握である。この把握にマジックはなく、問題となっている身体症状がどのような心理社会的背景を持っているのかを、病歴・現象、検査所見と、生活史・行動観察、周囲からの情報の収集などを、時間をかけて、徹底した傾聴を基本として問診・診察を行う必要がある。

 注意すべき点は、精神科や心療内科“以外”の標榜科に受診する多くの身体疾患の患者においては、心身症としての性格を持っていても、自分の症状に関する「心身相関」の認識は薄いことのほうが多いということである。その場合、直線的に「あなたの身体症状は、心理社会的問題を背景としている」という構えのアプローチをいきなりとるのでは、患者の信頼を失うことになり、患者の気持ちに配慮した時間をかけた対応が望まれる。一方、「心療内科」「精神科」に受診する患者の多くは、第一には「こころ」の問題を主訴として受診し、身体の症状はそこに不随する問題として扱われることが多い。そういった意味では、心療内科や精神科を受診する患者は、アレキシサイミアなどの特徴を持ったコアな心身症というよりは、神経症的であることが比較的多い。

治療

 心身症の治療法のベースは、身体症状に関しては、各臓器別・診療科別の治療法をまずベースに置く。さらに、精神科における一般的な治療法(薬物療法、カウンセリング、一般精神療法、行動療法認知行動療法精神分析療法家族療法ブリーフセラピー芸術療法作業療法、リクリエーションなど)を併合し、こころの問題・心理社会的側面に対応する。

 ここで重要な点は、常に心身の相互作用(心身相関)を頭に入れながらのアプローチが必要であるということであり、身体・こころの問題に別個に対応するのみでなく、その両者が効果的に統合される必要がある。この心身への統合的なアプローチが、心身症に対する特徴的な治療法といえる。

 ひとつのキーワードは、「心身相関への気づき」であり、コアな心身症、またはアレキシサイミア・アレキソミアの場合は、このつながりがわからずに、心身両面の治療に関する意義が見いだせず、治療が進まないことが多い。このこころと身体のつながりへの気づきを促し、治療の土台に載せるまでが重要なステップであるが、非常に時間と根気のいるプロセスであることが多い。一方で、神経症の要素が強い場合には、(多くは機能的な)身体症状と心理的側面のつながりへの意識が逆に強すぎて(こだわり)、身体症状に過剰に敏感になり、かえって身体症状を増幅している様なケースが多い(精神交互作用あるいは心身交互作用: 森田による神経症のとらえ方を参照[24])。そのような場合には、治療の方向としては、身体症状に対する強すぎる固着や焦点化を和らげ、機能的身体症状そのものが問題の根本であるとするような悪循環の枠組みから抜け出すように導くことが重要となる。

 心身を統一的に扱い治療することを目指した、心身医学に独特の治療法が存在する。自律訓練法、バイオフィードバック、ヨガ・気功、絶食・内観療法などである。

関連項目

参考文献

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