「摂食障害」の版間の差分

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=== '''成因・発症機序'''  ===
=== '''成因・発症機序'''  ===


現在では生物学的、心理的、社会的要因の複雑な相互作用によるものと考えられている。このうち生物学的要因として、遺伝素因、脳内神経伝達物質、特にセロトニンの機能異常、その他脳の構造的異常が推定されている。 図1に発症機序を示した。すなわちストレス、やせ願望、思春期の自立葛藤などの社会的、心理的要因により摂食量が低下すると、摂食障害に対する身体的素因を有する人の中枢性摂食調節機構に異常を生じ、適切な摂食行動が障害される。 さらに痩せや栄養障害により生理的、精神的変化(身体的合併症や脳の機能的、形態的変化)を生じ、これがさらに摂食行動の中枢性調節機構に悪影響を及ぼし、「食べない→食べられない→食べたら止まらない」といった摂食行動異常の悪循環に陥り、摂食障害の複雑かつ特異的な病態が形成されるものと考えられる。  
現在では生物学的、心理的、社会的要因の複雑な相互作用によるものと考えられている。このうち生物学的要因として、遺伝素因、脳内神経伝達物質、特にセロトニンの機能異常、その他脳の構造的異常が推定されている。 図1に発症機序を示した。すなわちストレス、やせ願望、思春期の自立葛藤などの社会的、心理的要因により摂食量が低下すると、摂食障害に対する身体的素因を有する人の中枢性摂食調節機構に異常を生じ、適切な摂食行動が障害される。 さらに痩せや栄養障害により生理的、精神的変化(身体的合併症や脳の機能的、形態的変化)を生じ、これがさらに摂食行動の中枢性調節機構に悪影響を及ぼし、「食べない→食べられない→食べたら止まらない」といった摂食行動異常の悪循環に陥り、摂食障害の複雑かつ特異的な病態が形成されるものと考えられる。 [[ファイル:pict1.png]]


=== '''診断'''  ===
=== '''診断'''  ===


ANの診断について、表5にDSM-ⅣとICD-10の診断基準を示した。それぞれの診断基準ですべて満たす場合にANと診断され、一部の項目を満たさない場合には、DSM-Ⅳで特定不能の摂食障害、ICD-10で非定型ANと診断される。DSM-Ⅳの診断基準では、さらに過食や排出行動の有無により、摂食制限型と過食/排出型に分けられている。  
ANの診断について、表5にDSM-ⅣとICD-10の診断基準を示した。それぞれの診断基準ですべて満たす場合にANと診断され、一部の項目を満たさない場合には、DSM-Ⅳで特定不能の摂食障害、ICD-10で非定型ANと診断される。DSM-Ⅳの診断基準では、さらに過食や排出行動の有無により、摂食制限型と過食/排出型に分けられている。  
{| class="wikitable"
|+ 表5
! DSM-IVの診断基準
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#年齢と身長による正常体重の最低限を維持することの拒否 (例えば, 標準体重の85%以下になるような体重減少,成長期の場合,期待される体重増加が得られず,標準体重の85%以下になる)
#標準体重以下であっても体重増加や太ることへの強い恐怖
#体重や体型についての認識の障害.自己評価が体重や体型に過度に影響を受けている
#初潮後の女性では無月経.少なくとも3か月以上の無月経(エストロゲンなどホルモン投与後のみ月経がみられる場合も無月経とする)
〔分類〕
:''制限型'': 規則的な過食や排出行動(自己誘発性晦吐下剤や利尿薬,涜腸剤の誤用)を認めない
:''過食/排出型'': 規則的な過食や排出行動(自己誘発性埴吐,下剤や利尿薬,涜 腸剤の誤用)を認める
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! ICD-10の診断基準
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#体重減少が標準体重の85%以下かQuételet's body mass index(体重(kg)/身長(m)<sup>2</sup>)が17.5以下.前思春期の患者では,この期間に期待される体重増加が得られない
#体重減少は自己誘発性で,太りやすい食物を避けること,自己誘発性嘔吐,下剤の使用,過度の運動,食欲抑制剤あるいは利尿薬を使用する
#肥満への恐怖 身体像のゆがみが強い支配観念として存在し,自ら低い体重の限度を設定している
#視床下部一下垂体一性腺系の広範な内分泌障害,女性では無月経(例外として,避妊薬などホルモン補充療法を受けていて,性器出血が持続している場合),男性では性的関心や能力の低下,その他成長ホルモンの高値,甲状腺ホルモン代謝の変化,インスリン分泌の異常などがみられることがある
#前思春期に発症した場合,思春期発現の遅延や停止(成長の停止: 少女では乳房が発達せず,原発性無月経,少年では性器は子どものままである.回復に伴い思春期は正常化するが,初潮は遅延する)
|}


鑑別診断として、痩せをきたす身体疾患や精神疾患が鑑別の対象となる。身体疾患の鑑別に際して末梢血、血清蛋白、電解質、肝・腎機能、脂質、消化器系、循環器系の検査や頭部CTスキャンなどがある。これらの諸検査は、症状や徴候、緊急度に応じて適宜選択して行うもので、闇雲に行うものではない。 痩せをきたす内分泌疾患との鑑別については、 必ずしも内分泌学的検査によらなくても症状や徴候によって鑑別できる。痩せをきたす精神疾患との鑑別において、ANほど痩せる疾患は、統合失調症の拒食状態ぐらいで、容易に鑑別できる。  
鑑別診断として、痩せをきたす身体疾患や精神疾患が鑑別の対象となる。身体疾患の鑑別に際して末梢血、血清蛋白、電解質、肝・腎機能、脂質、消化器系、循環器系の検査や頭部CTスキャンなどがある。これらの諸検査は、症状や徴候、緊急度に応じて適宜選択して行うもので、闇雲に行うものではない。 痩せをきたす内分泌疾患との鑑別については、 必ずしも内分泌学的検査によらなくても症状や徴候によって鑑別できる。痩せをきたす精神疾患との鑑別において、ANほど痩せる疾患は、統合失調症の拒食状態ぐらいで、容易に鑑別できる。  
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