「核内受容体」の版間の差分

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(ページの作成:「英語名:nuclear receptor: NR   核内受容体は、ステロイドや甲状腺ホルモン、レチノイド、ビタミンDなどの受容体であり、主に...」)
 
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== 構造 ==
== 構造 ==


(図1)[2,3]
[[image:核内受容体1.png|thumb|300px|'''図1. 核内受容体の基本構造'''<ref name=ref2><pubmed>16892386</pubmed></ref> <ref name=ref3><pubmed>18023286</pubmed></ref>]]
 
[[image:核内受容体2.png|thumb|300px|'''図2. 核内受容体の2量体化とDNA結合配列の3つのパターン'''<ref name=ref3><pubmed>18023286</pubmed></ref> <br>ホモダイマー化したGRなどホルモン受容体は、パリンドローム(回文配列)状に並んだ2つのホルモン応答エレメント(HRE)に結合する。ヘテロダイマー化したRXRと他の核内受容体(XR)は、同方向に並んだ(ダイレクトリピート)2つのHREに結合する。<br>ERRなどオーファン受容体は、モノマーのまま1つのHRE(ハーフサイト)に結合する。]]


 N末端にAF-1領域 (かつてA/Bドメインと呼ばれた)があり、リガンド非依存的に転写活性化作用をもつ。AF-1は、核内受容体間で多様性に富む領域である。中央部にDNA結合領域 (DBD) (C) があり、2つのジンクフィンガーモチーフ(70アミノ酸)から成る。DBDは、受容体間のホモロジーが高い。C末端側にリガンド結合領域 (LBD) (E)(250アミノ酸)をもつ。LBDのC末端 (F領域) にあるαヘリックスをAF-2ヘリックスといい、受容体の活性調節に関係がある。構造の特殊なNRとして、A/B領域を欠くもの(HNF4g)、A/B, C領域を欠くもの(SHP)がある。D領域はヒンジ領域で、DBDとLBDの連結部位である。
 N末端にAF-1領域 (かつてA/Bドメインと呼ばれた)があり、リガンド非依存的に転写活性化作用をもつ。AF-1は、核内受容体間で多様性に富む領域である。中央部にDNA結合領域 (DBD) (C) があり、2つのジンクフィンガーモチーフ(70アミノ酸)から成る。DBDは、受容体間のホモロジーが高い。C末端側にリガンド結合領域 (LBD) (E)(250アミノ酸)をもつ。LBDのC末端 (F領域) にあるαヘリックスをAF-2ヘリックスといい、受容体の活性調節に関係がある。構造の特殊なNRとして、A/B領域を欠くもの(HNF4g)、A/B, C領域を欠くもの(SHP)がある。D領域はヒンジ領域で、DBDとLBDの連結部位である。
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== 作用機序 ==
== 作用機序 ==
[[image:核内受容体3.png|thumb|300px|'''図3. 核内受容体活性化の2つのメカニズム'''<ref name=ref3><pubmed>18023286</pubmed></ref><br>上図:リガンド結合による活性化。リガンドのないとき(左図)、核内受容体はHDAC(ヒストンデアセチラーゼ)やSMRT/NCORなどとリプレッサー複合体を形成しており、転写抑制状態にある。リガンドが結合すると(右図)、コリプレッサーが解離し、HAT(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)やクロマチン再編成複合体から成るコアクチベーターを取り込んで、転写活性化状態になる。<br>
下図:リガンド結合によらない活性化。ERRなどリガンドなしに活性化される核内受容体もある。コアクチベーター(PGC-1など)が結合することで、さらに大きなコアクチベーター複合体を呼び込んで転写活性化状態になる。]]


 核内受容体のリガンドは、輸送蛋白質に結合して血中や体液中を運搬され、標的細胞の中へは単独で入り、細胞質に存在する核内受容体に結合する。例えば、グルココルチコイド受容体 (GR) は、細胞質でシャペロン蛋白質であるhsp90やp23と結合しており、リガンドが結合するとシャペロンから離れて核内に移行し、標的遺伝子の「グルココルチコイド応答エレメント(glucocorticoid response element: GRE)」と呼ばれるDNA配列に結合する[1](後述)。リガンドおよびDNAと結合したNRは、コアクチベーター蛋白質などと結合して、クロマチンの構造を変えて転写を調節する大きな複合体としてはたらく。また、細胞核内でリガンドと結合していないNRはコリプレッサー蛋白質と結合しており、標的遺伝子の転写を抑制している(図3)。NRは、細胞質蛋白質であるSMAD3やJNKとも相互作用する。AF-1領域にはリン酸化部位があり、リン酸化による活性調節を受ける。
 核内受容体のリガンドは、輸送蛋白質に結合して血中や体液中を運搬され、標的細胞の中へは単独で入り、細胞質に存在する核内受容体に結合する。例えば、グルココルチコイド受容体 (GR) は、細胞質でシャペロン蛋白質であるhsp90やp23と結合しており、リガンドが結合するとシャペロンから離れて核内に移行し、標的遺伝子の「グルココルチコイド応答エレメント(glucocorticoid response element: GRE)」と呼ばれるDNA配列に結合する[1](後述)。リガンドおよびDNAと結合したNRは、コアクチベーター蛋白質などと結合して、クロマチンの構造を変えて転写を調節する大きな複合体としてはたらく。また、細胞核内でリガンドと結合していないNRはコリプレッサー蛋白質と結合しており、標的遺伝子の転写を抑制している(図3)。NRは、細胞質蛋白質であるSMAD3やJNKとも相互作用する。AF-1領域にはリン酸化部位があり、リン酸化による活性調節を受ける。
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
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1. Alberts B, Johnson A, Lewis J, Raff M. Molecular Biology of the Cell, 5th Edition, pp889-891, Garland Science, New York, 2008.
1. Alberts B, Johnson A, Lewis J, Raff M. Molecular Biology of the Cell, 5th Edition, pp889-891, Garland Science, New York, 2008.