「水道周囲灰白質」の版間の差分

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PAGは、内側視索前野(medial preoptic area: MPOA)や視床下部からの投射を受け、オス、メスの性行動の発現に重要な役割を果たす。
PAGは、内側視索前野(medial preoptic area: MPOA)や視床下部からの投射を受け、オス、メスの性行動の発現に重要な役割を果たす。
オスでは、MPOAからPAGへの経路が陰茎勃起に関与している(15337249)。マウンティングに始まる一連の性行動の発現には、MPOAから腹側被蓋、黒質、中脳網様核などへの経路が関与すると考えられている。1946721 
オスでは、MPOAからPAGへの経路が陰茎勃起に関与している<ref><pubmed>15337249</pubmed></ref>。マウンティングに始まる一連の性行動の発現には、MPOAから腹側被蓋、黒質、中脳網様核などへの経路が関与すると考えられている<ref><pubmed>1946721</pubmed></ref>。メスでは視床下部腹内側核(VMH)から背側PAGへの経路がロードシス(腰を突き上げてオスを迎え入れる姿勢)の促進系として働く<ref><pubmed>469715</pubmed></ref>。外側中隔から腹側PAGには、ロードシスの抑制系が働<ref><pubmed>11170006</pubmed></ref>。PAGからは、延髄巨大細胞核(nucleus gigantocellularis: nGi)や傍巨大細胞核(nucleus paragigantocellularis: nPGi) への経路がロードシスの促進系として働く<ref><pubmed>10087093</pubmed></ref>。背側PAGには末梢からの感覚情報も入力し、ここでMPOA/VMHからの促進性入力と感覚入力との統合が行われる。


メスでは視床下部腹内側核(VMH)から背側PAGへの経路がロードシス(腰を突き上げてオスを迎え入れる姿勢)の促進系として働く469715。外側中隔(LS)から腹側PAGには、ロードシスの抑制系が働く(11170006)
PAGからnPGiへの投射ニューロンの多くは、ステロイドホルモン゙(エストロゲン、アンドロゲン)のレセプターを発現しており、この系の活性化は、ステロイドホルモンに強く依存する<ref><pubmed>11536188</pubmed></ref>


PAGでは、さまざまなペプタイドが、ロードシスの修飾に関与している。LHRH<ref><pubmed>6339979 </pubmed></ref>、プロラクチン<ref><pubmed>6828874</pubmed></ref>、サブスタンスP<ref><pubmed>2441308</pubmed></ref>は促進的に、CRF,βエンドルフィンは、抑制的に作用する<ref><pubmed>6209590</pubmed></ref><ref><pubmed>2860950</pubmed></ref>。


PAGからは、延髄巨大細胞核(nucleus gigantocellularis: nGi)や傍巨大細胞核(nucleus paragigantocellularis: nPGi) への経路がロードシスの促進系として働く10087093。
===排尿===
 
背側PAGには末梢からの感覚情報も入力し、ここでMPOA/VMHからの促進性入力と感覚入力との統合が行われる。
 


PAGからnPGiへの投射ニューロンの多くは、ステロイドホルモン゙(エストロゲン、アンドロゲン)のレセプターを発現しており、この系の活性化は、ステロイドホルモンに強く依存する。18393295。11536188


PAGでは、さまざまなペプタアイドが、性行動の修飾に関与している。LHRH、プロラクチン、サブスタンスPは、促進的に(6339979,  6828874 , 2441308)、CRF,βエンドルフィンは、抑制的に作用する(6209590, 2860950)。
 PAGは、性行動の発現に中心的な役割を果たす内側視索前野(medial preoptic area: MPOA)から投射を受け、PAGから延髄巨大細胞核(nucleus gigantocellularis: nGi)への投射がオス、メスの性行動の発現に重要な役割を果たす。 MPOAからPAG、PAGからnGiへの投射ニューロンの多くは、ステロイドホルモン゙(エストロゲン、アンドロゲン)゙含有ニューロンであり、この系の活性化は、ステロイドホルモンに強く存する<ref><pubmed>15337249</pubmed></ref>。dPAGには末梢からの感覚情報も入力し、ここでMPOAからの促進性入力と感覚入力との統合が行われている。
 オスでは、MPOAからPAGを介する経路が、陰茎勃起に関与している<ref><pubmed>18393295</pubmed></ref>。オスの性行動の発現には、MPOAから腹側被蓋、黒質、中脳網様核などへの経路が関与すると考えられている<ref><pubmed>1946721</pubmed></ref>。
 メスでは視床下部腹内側核(VMH)からのdPAGへの投射が性行動(ロードシス)の促進系として働いている<ref><pubmed>469715</pubmed></ref>。一方、外側中隔(LS)から腹側PAGへの経路は、lordosisの抑制系として作用する<ref><pubmed>11170006</pubmed></ref>。dPAGから延髄巨大細胞核(nucleus gigantocellularis: nGi)への投射がlordosisの実行系として働く<ref><pubmed>11170006</pubmed></ref>。 PAGでは、さまざまな物質が、性行動の修飾に関与している。LHRH<ref><pubmed>6339979 </pubmed></ref>、プロラクチン<ref><pubmed>6828874</pubmed></ref>、サブスタンスP<ref><pubmed>6339979 </pubmed></ref>は促進的に、CRF,βエンドルフィンは、抑制的に作用する<ref><pubmed>6209590</pubmed></ref>。
===排尿===
PAG尾側の腹外側部(vlPAG)は、腰仙髄を介して膀胱からの感覚性入力を受け、橋の排尿中枢(バーリントン核)に直接投射する(7499530)。vlPAGへの電気刺激や興奮性アミノ酸(グルタミン酸、ホモシステイン酸)の投与によって排尿反応が起こり(11113354, 12352469)、GABA agonist (ムシモル)によって排尿が抑制されることから(21486804)、vlPAGが排尿の促進系として働く。
一方、吻側PAGの背外側部(dlPAG)はGABA作動性ニューロンを介して、排尿中枢に抑制系として作用するく(18385467)。
 GABA作動性ニューロンによる抑制は、D1受容体を介したドーパミンニューロン作動性入力によって調節されている(18554296)。


 前頭葉や扁桃体からPAGへの入力は、排尿抑制系として作用する20025036。このシステムは、緊急時に排尿を抑制することにより、適切な行動をよりスムースに発現させる役割を持つ。
 前頭葉や扁桃体からPAGへの入力は、排尿抑制系として作用する20025036。このシステムは、緊急時に排尿を抑制することにより、適切な行動をよりスムースに発現させる役割を持つ。


 PAG尾側の腹外側部(vlPAG)は、腰仙髄を介して膀胱からの感覚性入力を受け、橋の排尿中枢(バーリントン核)に直接投射する<ref><pubmed>7499530</pubmed></ref>。vlPAGへの電気刺激や興奮性アミノ酸(グルタミン酸、ホモシステイン酸)の投与によって排尿反応が起こり<ref><pubmed>11113354</pubmed></ref>、GABA agonist (ムシモル)によって排尿が抑制されることから<ref><pubmed>21486804</pubmed></ref>、vlPAGが排尿の促進野と考えられる。
 PAG尾側の腹外側部(vlPAG)は、腰仙髄を介して膀胱からの感覚性入力を受け、橋の排尿中枢(バーリントン核)に直接投射する<ref><pubmed>7499530</pubmed></ref>。vlPAGへの電気刺激や興奮性アミノ酸(グルタミン酸、ホモシステイン酸)の投与によって排尿反応が起こり<ref><pubmed>11113354</pubmed></ref>、GABA agonist (ムシモル)によって排尿が抑制されることから<ref><pubmed>21486804</pubmed></ref>、vlPAGが排尿の促進野と考えられる。


 PAG吻側の背外側部(dlPAG)への電気刺激によって排尿が抑制され、この効果は、排尿中枢へのビキュキュリン投与によって阻害されることから、PAG吻側の背外側部(dlPAG)からのGABA作動性ニューロンが排尿抑制系として働くと考えられる<ref><pubmed>18385467</pubmed></ref>。GABA作動性ニューロンによる抑制は、D1受容体を介したドーパミンニューロン作動性入力によって調節されている<ref><pubmed>18554296</pubmed></ref>。
一方、PAG吻側の背外側部(dlPAG)は、GABA作動性ニューロンを介して、排尿中枢に抑制系として作用する。<ref><pubmed>18385467</pubmed></ref>。


 前頭葉や扁桃体からPAGへの入力は、緊急時の適応行動の際に排尿抑制系として作用する<ref><pubmed>20025036</pubmed></ref>。
前頭葉や扁桃体からPAGへの入力は、排尿抑制系として作用する。このシステムは、行動発現時に排尿を抑制することにより、必要な行動をよりスムースに発現させる役割を持つ<ref><pubmed>20025036</pubmed></ref>。


===睡眠・覚醒===
===睡眠・覚醒===


 PAG尾側の腹外側部から、さらにその腹外側の網様体に位置する外背側被蓋核(laterodorsal tegmental nucleus; LDT)と、その外側に分布する脚橋被蓋核(pedunculopontine tegmental nucleus; PPT)のアセチルコリン作動性ニューロンの一群は、レム睡眠中に高い発火活動を維持し、レム睡眠の発現と維持に関与する。別の一群のアセチルコリン作動性ニューロンは、覚醒とレム睡眠時に活動が上昇し、覚醒とレム睡眠の調節に関与する。LDT腹側部(subLDT)のグルタミン酸作動性ニューロンも、アセチルコリン作動性ニューロンとの間に相互促進性の関係あり、レム睡眠の調節に関与している。背側縫線核のセロトニン作動性ニューロンは、青斑核のノルアドレナリン作動性ニューロンとともに、覚醒時に持続的発火を維持し、覚醒の維持、レム睡眠の抑制に関与する。PAG腹外側部のGABA作動性ニューロンもLDT/subLDTのレム睡眠調節領域に投射して、レム睡眠の抑制に作用している。アセチルコリン作動性ニューロン、モノアミン作動性ニューロンは、覚醒時には、視床下部の覚醒系ニューロン(ヒスタミン作動性ニューロン、オレキシン作動性ニューロン)からの興奮性入力を受け、徐波睡眠時には、視索前野のGABA作動性ニューロンからの抑制を受けているPAG尾側の腹外側部から、さらにその腹外側の網様体に位置する外背側被蓋核(laterodorsal tegmental nucleus; LDT)と、その外側に分布する脚橋被蓋核(pedunculopontine tegmental nucleus; PPT)のアセチルコリン作動性ニューロンの一群は、レム睡眠中に高い発火活動を維持し、レム睡眠の発現と維持に関与する。別の一群のアセチルコリン作動性ニューロンは、覚醒とレム睡眠時に活動が上昇し、覚醒とレム睡眠の調節に関与する。LDT腹側部(subLDT)のグルタミン酸作動性ニューロンも、アセチルコリン作動性ニューロンとの間に相互促進性の関係あり、レム睡眠の調節に関与している。背側縫線核のセロトニン作動性ニューロンは、青斑核のノルアドレナリン作動性ニューロンとともに、覚醒時に持続的発火を維持し、覚醒の維持、レム睡眠の抑制に関与する。PAG腹外側部のGABA作動性ニューロンもLDT/subLDTのレム睡眠調節領域に投射して、レム睡眠の抑制に作用している。アセチルコリン作動性ニューロン、モノアミン作動性ニューロンは、覚醒時には、視床下部の覚醒系ニューロン(ヒスタミン作動性ニューロン、オレキシン作動性ニューロン)からの興奮性入力を受け、徐波睡眠時には、視索前野のGABA作動性ニューロンからの抑制を受けている<ref><pubmed>16251950</pubmed></ref><ref><pubmed>17689057</pubmed></ref><ref><pubmed>22647467</pubmed></ref>。
 PAG尾側の腹外側部から、さらにその腹外側の網様体に位置する外背側被蓋核(laterodorsal tegmental nucleus; LDT)と、その外側に分布する脚橋被蓋核(pedunculopontine tegmental nucleus; PPT)のアセチルコリン作動性ニューロンの一群は、レム睡眠中に高い発火活動を維持し、レム睡眠の発現と維持に関与する。別の一群のアセチルコリン作動性ニューロンは、覚醒とレム睡眠時に活動が上昇し、覚醒とレム睡眠の調節に関与する。LDT腹側部(subLDT)のグルタミン酸作動性ニューロンも、レム睡眠の調節に関与している。背側縫線核のセロトニン作動性ニューロンは、青斑核のノルアドレナリン作動性ニューロンとともに、覚醒時に持続的発火を維持し、覚醒の維持、レム睡眠の抑制に関与する。アセチルコリン作動性ニューロン、モノアミン作動性ニューロンは、覚醒時には、視床下部の覚醒系ニューロン(ヒスタミン作動性ニューロン、オレキシン作動性ニューロン)からの興奮性入力を受け、徐波睡眠時には、視索前野の徐波睡眠促進系(GABA作動性ニューロン)からの抑制を受けている<ref><pubmed>16251950</pubmed></ref><ref><pubmed>17689057</pubmed></ref><ref><pubmed>22647467</pubmed></ref>。


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
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