「病識」の版間の差分

1 バイト追加 、 2012年1月14日 (土)
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 以上のように器質疾患でも観察されることから、病識欠如の成因として認知機能障害を想定することが近年行われるようになっている。
 以上のように器質疾患でも観察されることから、病識欠如の成因として認知機能障害を想定することが近年行われるようになっている。
病識欠如という現象をセルフモニターの障害として想定する考え方がある。自分の状態を意識する(メタ表象)ためには、ある行動を行うときに一定の目標を自覚しつつ、途中経過を評価し修正することができる(現実の一次表象の照合作業)ことが前提とされ、作動記憶の中央実行系の機能であると考えられている12)。そして中央実行系が障害されると、自発性の減少、保続、場当たり的な行動の増加がおこることが知られ、両側の背外側前頭前野の関与が大きいと考えられている。Amadorら1)は、障害認識は modality-specificなものであるので、ある特定の高次連合野の障害というよりは、言語、知覚、記憶などの機能の各単位と、作動記憶のような中心的な意識野との連合が不十分ではないかと推論している。
病識欠如という現象をセルフモニターの障害として想定する考え方がある。自分の状態を意識する(メタ表象)ためには、ある行動を行うときに一定の目標を自覚しつつ、途中経過を評価し修正することができる(現実の一次表象の照合作業)ことが前提とされ、作動記憶の中央実行系の機能であると考えられている12)。そして中央実行系が障害されると、自発性の減少、保続、場当たり的な行動の増加がおこることが知られ、両側の背外側前頭前野の関与が大きいと考えられている。Amadorら1)は、障害認識は modality-specificなものであるので、ある特定の高次連合野の障害というよりは、言語、知覚、記憶などの機能の各単位と、作動記憶のような中心的な意識野との連合が不十分ではないかと推論している。
一方、前頭前野内側部が自己の感情状態、思考、自己の性格特性など自分自身の主観的状態を含む内的表象と密接に関連していることから26)、この部位の関与も推定できる。なお Parelladaらref><pubmed>20884756</pubmed></ref>は初回エピソード精神病患者(統合失調症圏53例、それ以外57例)を踏査し、前頭葉および頭頂葉の灰白質の減少が2年後の精神病症状についての病識と有意に相関することを報告している。
一方、前頭前野内側部が自己の感情状態、思考、自己の性格特性など自分自身の主観的状態を含む内的表象と密接に関連していることから26)、この部位の関与も推定できる。なお Parelladaら<ref><pubmed>20884756</pubmed></ref>は初回エピソード精神病患者(統合失調症圏53例、それ以外57例)を踏査し、前頭葉および頭頂葉の灰白質の減少が2年後の精神病症状についての病識と有意に相関することを報告している。
これまでの実証的研究では、Youngら28)は、31例の統合失調症患者を対象に、前頭葉機能を反映すると考えられるWisconsin Card Sorting Test (WCST), verbal fluency test, trail   making testを実施し、現在の症状に対する認識と誤った帰属(SUMDによる評価)とが、 WCSTの成績低下と相関していたことを報告しているなど、前頭葉機能と病識との関連を報告したものが多くみられる。
これまでの実証的研究では、Youngら28)は、31例の統合失調症患者を対象に、前頭葉機能を反映すると考えられるWisconsin Card Sorting Test (WCST), verbal fluency test, trail   making testを実施し、現在の症状に対する認識と誤った帰属(SUMDによる評価)とが、 WCSTの成績低下と相関していたことを報告しているなど、前頭葉機能と病識との関連を報告したものが多くみられる。
Queeら<ref><pubmed>21097989</pubmed></ref>は270例の非感情病圏の精神病患者を調査し、神経認知機能よりも社会的認知機能のほうが病識との関連性が高いことを報告し、情動認識や相手の心を推測する機能が関連している可能性について述べているなど、社会的認知の脳科学の発展に伴い、それとの関連で病識欠如の成因を想定しようとする考え方が見られるようになっている。
Queeら<ref><pubmed>21097989</pubmed></ref>は270例の非感情病圏の精神病患者を調査し、神経認知機能よりも社会的認知機能のほうが病識との関連性が高いことを報告し、情動認識や相手の心を推測する機能が関連している可能性について述べているなど、社会的認知の脳科学の発展に伴い、それとの関連で病識欠如の成因を想定しようとする考え方が見られるようになっている。