「発達障害」の版間の差分

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Developmental disordersという概念は、1987年にアメリカ精神医学会の診断基準であるDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM)の改定第3版(DSM-Ⅲ-R) <ref name=ref1> ''' American Psychiatric Association.''' <br> Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 3rd edition, revised.<br> '' American Psychiatric Association. (Washington, DC)'' :1987 </ref>  に初めて記述され、精神遅滞([[知的障害]])・特異的発達障害(LD・言語と会話の障害・運動能力障害)・PDDなどを包含するものと定義され、人格障害とともに第Ⅱ軸に記載された。これは、それまでの精神病カテゴリーや脳損傷に起因するとされてきた発達障害・症候群を、新たな医学的な疾病概念(障害概念)と位置付けたことで大きな転換点となった。1994年の第4版(DSM‐Ⅳ<ref name=ref2> ''' American Psychiatric Association. ''' <br> Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition.<br> '' American Psychiatric Association. (Washington, DC)'' :1994 </ref> )以後はDevelopmental disordersという表記が消えて、精神遅滞([[知的障害]])を第Ⅱ軸に残したまま、PDDやAD/HDなどは個別の疾患(障害)として第Ⅰ軸に移動し、その他の一般的な精神障害とともに記載されるようになった。これは、生涯変わらぬ障害としてではなく、治療対象として位置づけられるようになったことを示唆している。
Developmental disordersという概念は、1987年にアメリカ精神医学会の診断基準であるDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM)の改定第3版(DSM-Ⅲ-R) <ref name=ref1> ''' American Psychiatric Association.''' <br> Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 3rd edition, revised.<br> '' American Psychiatric Association. (Washington, DC)'' :1987 </ref>  に初めて記述され、精神遅滞([[知的障害]])・特異的発達障害(LD・言語と会話の障害・運動能力障害)・PDDなどを包含するものと定義され、人格障害とともに第Ⅱ軸に記載された。これは、それまでの精神病カテゴリーや脳損傷に起因するとされてきた発達障害・症候群を、新たな医学的な疾病概念(障害概念)と位置付けたことで大きな転換点となった。1994年の第4版(DSM‐Ⅳ<ref name=ref2> ''' American Psychiatric Association. ''' <br> Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition.<br> '' American Psychiatric Association. (Washington, DC)'' :1994 </ref> )以後はDevelopmental disordersという表記が消えて、精神遅滞([[知的障害]])を第Ⅱ軸に残したまま、PDDやAD/HDなどは個別の疾患(障害)として第Ⅰ軸に移動し、その他の一般的な精神障害とともに記載されるようになった。これは、生涯変わらぬ障害としてではなく、治療対象として位置づけられるようになったことを示唆している。


一方、世界保健機構による国際疾病分類であるInternational Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems (ICD)第10版(ICD-10) <ref name=ref3> ''' World Health Organisation. ''' <br> ICD 10: International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems. <br> '' World Health Organisation. (Geneva)'' :1992 </ref> では、F80-F89 心理的発達の障害として、特異的発達障害(会話および言語、[[学習能力]]、運動機能)ならびにPDDが表記されている。ICD-10では、それまで通りAD/HDは、心理的発達の障害ではなく、F90-F98 小児<児童>期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害の中で、多動性障害として表記され、DSMとは異なる位置づけをしている。ただし、一般には、AD/HDは、乳幼児期より顕在化し、年齢とともに軽快するものの、一部の成人にいたっても機能障害は残存する経過や、PDDなど他の発達障害との遺伝的関連を認め、男児に多いことなどから、発達障害に含められることが多い。
一方、世界保健機構による国際疾病分類であるInternational Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems (ICD)第10版(ICD-10) <ref name=ref3> ''' World Health Organization. ''' <br> ICD 10: International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems. <br> '' World Health Organization. (Geneva)'' :1992 </ref> では、F80-F89 心理的発達の障害として、特異的発達障害(会話および言語、[[学習能力]]、運動機能)ならびにPDDが表記されている。ICD-10では、それまで通りAD/HDは、心理的発達の障害ではなく、F90-F98 小児<児童>期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害の中で、多動性障害として表記され、DSMとは異なる位置づけをしている。ただし、一般には、AD/HDは、乳幼児期より兆候が現われ就学後に顕在化し、成長とともに軽快するものの、成人後も機能障害が残存すること、PDDなど他の発達障害との遺伝的関連を認めること、男児に多いこと、などから、発達障害に含められることが多い。


我が国の発達障害者支援法では、発達障害は、「自閉症、[[アスペルガー症候群]]その他のPDD、LD、AD/HDその他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されている。政令で定めるものには、言語の障害、協調運動の障害、その他厚生労働省令で定める障害が含まれ、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10におけるF80-F89及びF90-F98に含まれる全ての障害が、方でカバーされることになる。(平成24年8月22日現在)
我が国の発達障害者支援法では、発達障害は、「自閉症、[[アスペルガー症候群]]その他のPDD、LD、AD/HDその他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されている。政令で定めるものには、言語の障害、協調運動の障害、その他厚生労働省令で定める障害が含まれ、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10におけるF80-F89及びF90-F98に含まれる全ての障害が、方でカバーされることになる。(平成24年8月22日現在)
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==病因==
==病因==


発達障害は中枢神経系の機能障害とされているが、同様の障害あるいは類似した症状が家族内に認められることも多く、遺伝様式は不明だが、多くの症例で遺伝的要因が病因と考えられている<ref name=ref4> ''' Rutter M, Bishop D, Pine D, Scott S, Stevenson J, Taylor E, Thapar A (eds)''' <br> Rutter’s Child and Adolescent Psychiarty, 5th Edition <br> '' Wiley-Blackwell (NJ)'' :2008 </ref> 。また、ほとんどの発達障害で有病率に性差があることも知られており、性が症状発現に影響する可能性も考えられている。環境要因は有病率の増加から関心が高いところではあるが、発症にではなく、症状の発現に影響を与えると一般的には考えられている。
発達障害は中枢神経系の機能障害とされているが、同様の障害あるいは類似した症状が家族内に認められることも多く、遺伝様式は不明だが、多くの症例で遺伝的要因が病因と考えられている<ref name=ref4> ''' Rutter M, Bishop D, Pine D, Scott S, Stevenson J, Taylor E, Thapar A (eds)''' <br> Rutter’s Child and Adolescent Psychiarty, 5th Edition <br> '' Wiley-Blackwell (NJ)'' :2008 </ref> 。また、ほとんどの発達障害で有病率に性差があることも知られており、性が症状発現や発達的変化に影響する可能性も考えられている。環境要因は有病率の増加から関心が高いところではあるが、遺伝要因との複雑な相互作用が症状発現に影響を与えると考えられている。




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